00_ぼくたちと、地元をめぐる物語
私たちには、帰る場所があります。
自宅、実家、学生時代の友人、一度だけ訪れた思い出の場所...
人によって、心の拠り所となる場所は違うけれど、それでも私たちには
ここにいたいと思える場所があるはず。
そんな場所のひとつが「地元」ではないでしょうか。
これは私たちと地元をめぐる物語です。 (文・影山 莉央)
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大学1年の夏。
入学後、自然と波長が合って話すようになった友人に、
「山梨に帰省するんだけど、一緒に来ない?」
と誘われ、3人で彼女の実家へお邪魔した。
地元がない私にとって初めての帰省。
自分には縁もゆかりもないはずの地なのに、なぜだかとても楽しかった。
ガイドブックには出ないようなひまわり畑。友人のおばあちゃんに借りた浴衣。特等席からの花火。山のてっぺんにある露天風呂。
たらふく夜ご飯を食べた後には「高校の時に友達とよく来てたんだ」という、城跡のある大きな公園で、夜景を見下ろしては、原っぱに寝っ転がっては、たくさんの話をした。
帰宅した私は、家族やほかの友人たちに、今回の帰省の話をした。
「大学の友達の帰省についていったらさ、旅行とはまた違う楽しさがあったんだよね!」
と言うと、みんなの顔に一瞬「ハテナ」が浮かぶ。帰省についていくって?
「そこで暮らしたことのある人だけが知っている場所、時間使い方を教えてもらったんだ」
そうすると、「ハテナ」が「ナルホド」に変わる。そして口を揃えて「楽しそうだね」と言う。
そう、楽しかったんです。
***
大学2年の冬。
「年末は帰省のために、自宅で2週間ほど自粛をしています」
「うちも成人式中止になっちゃった」
新成人の私が、年末年始によく耳にしたフレーズトップ2だ。
ウイルスのせいで、帰りたい場所に帰れない。時が満ちれば当たり前に行われるはずだった式典が開かれない。どうせ5年後に会えるからと、中学3年の春に伝えようとして飲み込んだ言葉を伝えることができない。
成人式なんて所詮形式上のもの。
本当の目的は、それぞれが中学生活を過ごしたあの場所に帰り、
あの時の時間をなぞることだと思ってた。
そんな想いを抱えた新成人はどれほどいたのでしょうか。
帰属本能というのは不思議なもので、人間はいくつになっても家には帰りたいらしい。終業時間なのに、帰宅途中なのに、布団のなかに潜っているのに、「帰りたい」と言った経験、あるのではないでしょうか。
私たちはどこに帰りたいんでしょうか?
そんなことを考えていたときに出会った言葉ー「超帰省」
「超帰省」とは
①友人や同僚の帰省についていくこと
②友人や同僚を帰省に連れていくこと
「お盆年末だけじゃない。一人で帰るだけじゃない。もっと色々あっていい」そんな気持ちにこたえる、帰省シェアリング。だそうです。
超帰省なら、誰でも楽しめる。
(次回の記事では、編集部が地元についてお話しします。)
ありがとうございます。 列島ききがきノートの取材エリアは北海道から沖縄まで。聞きたい、伝えたい、残したいコトバはたくさんあります。各地での取材にかかる交通費、宿泊費などに使わせて頂きます。そして、またその足跡をnoteで書いていければ。