第1回 都電で、女性運転手になりたくて
大学からの帰り道、課題のことばかり考えていた私は気分転換がしたいと思い、本屋さんに立ち寄った。そこで1冊の雑誌と出会った。
その雑誌は様々な形で鉄道に関わる女性を特集していた。その中でも私が普段遊びに行くときに使っている路面電車に、女性の運転手さんがいることを知った。
電車の運転手さんといえば、まだまだ男社会のイメージ。
なぜそんな仕事に就こうと思ったのか、どこにきっかけがあったのか、どんな勉強をすればなれるのか、どんな女性なのか。
私の想像は膨らむばかりだった。
今回取材を受けていただいたのは、都電荒川線の女性運転手さんである高嶋友梨さんです。
「みんなと同じように大学を出て、就職をして…。そんな多数派の人生を歩もうと思っていた」
そう語る高嶋さんの考えが変化したのは、ふとした出会いでした。
(書き手:空佐和)
実は電車とか全く興味なかったんです
高校生の時も全然電車なんか興味なかったです。本当に通学のための電車って感じで…。
進学校だったので、とにかく勉強しかやってなかったですね。課題の予習復習がすごく多くて。私の出身が岡山県倉敷市のはずれのほうだったので、通学も遠かったんです。
部活は1年生の頃は何もやってなかったんですけど、2年生からはESSっていう英会話を楽しむサークルに入ってそれだけで(笑)、地方から東京の大学に出たくて、それを目標にしてました。
姉が先に東京に出てたので、いいなぁ楽しそうだなぁって思って。あ、でも姉がいなくても、東京が好きだったから出てたのかなぁ。
最初は、好きなドラマの舞台が東京だったから、それに憧れていたんですけど、旅行で東京に行ったとき、すごく街並みが好きだったんです!都会と下町が融合する感じが。
地元がちょっと田舎だから景色が寂しいので(笑)、人がいっぱいいて、活気があった方がいいなって思って。その時は、都電の存在なんか全く知らなかったです。まだ、大学出て一般的な企業に勤められればいいかなぁって思ってました。何かになりたいとかなかったんですよね。
だから電車とか何も考えてなくて、歴史学がすごく好きだったので、東京の大学の歴史学科に進もうと思って。東京での就職に困らない程度の、東京の大学に行くのを目標に、毎日ひたすら勉強していただけです。
東京で見つけた好きなこと
東京に出てきてからは、街並みがすごい好きだったので、よく散歩をしてました。地元にいた時は、そんな趣味はなかったんですけどね(笑)。
駅とかに置いてあるフリーペーパーあるじゃないですか?ああいうのを毎月毎月全部読んでて…。読んで、気になったところは散歩して。
下町がすごく好きです。谷根千とか。商店街があるところとか、人と人との関わり合いがあったかい雰囲気があるところがすごい好き。だから、就職は大好きな東京って決めてました。
都電との出会い
大学生の頃、大塚ってところに住んでいて、都電と出会ったんです。
「あ、すごい。とにかくすごいな」
これだけしか出てこなかったです。
都電から見える景色にやられました。この景色をずっと見ていたい。そう思いました。
調べていくうちに東京の歴史は都電なしでは語れないことがわかりました。都電はたくさんあった路面電車の生き残りみたいな感じなんです。今でも東京の主要な交通の1つで、みんなの生活を支えてる。
そういう都電の歴史もすごく私は好きで。それでさらに都電いいなって思いました。
(第二回につづきます)
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