行動の機能
『問題行動』の機能(目的)
問題行動は4つの機能に分類できます
注目
要求
逃避
刺激
『注目』とは誰かの気をひくために行動すること
『要求』とはほしいものを得るために行動すること
『逃避』とはやりたくないことから逃れるために行動すること
そして『刺激』とは感覚的な刺激の欲求にて起こる行動です。
「行動」には複数の機能が重複して起こることもあります。
例えば、『噛む』行動はほしいものを得る(要求)ために噛むこともあれば、乳歯が生えてくることで感覚(刺激)を求めて噛む、または同時に二つの機能による行動です。
問題行動に対応するには、これらの機能のどれに当てはまるのかを明確にすることで、対処方法が変わってきます。
今回はこの4つの『行動の機能』を一つづつ説明していきたいと思います。
『注目』『要求』『逃避』『刺激』
『注目』の例をみてみましょう
例1
子ども:ひとり遊びをしていて、泣き出す
母:子どもに近づき、声を掛ける
子ども:泣き止む
子どもは注目を得たことで泣き止みました。このことから、子どもは「泣く」ことで注目を得られることを学び、今後注目を得たいときは「泣く」行動が増えると考えられます。
例2
子ども:ひとり遊びをしていて、泣き出す
母:反応しない
子どもは泣いても注目を得られないことを学びます。今後、注目を得るために「泣く」行動は減ると考えられます。
例3
子ども:ひとり遊びをしている。そろそろ注目を得たくて泣き出すころ
母:「ママ、きて!」って呼んでねとか、「ママにトントンしにきてね」などふさわしい行動を教える(泣いていない時)
子ども:ママをトントンする
母:笑顔でトントンできたことを褒めながら、『注目』を満たしてあげる
子どもはトントンするとママが笑顔で接してくれることを学び、今後注目を得るためにトントンする行動が増えると考えられます。
もう一つ例をあげてみます
例4
子ども:ひとり遊びをしている。そろそろ注目を得たくて泣き出すころ
母:「〇〇ちゃん、お絵かき上手にかけてるね〜、それはママのお顔かな〜」など、定期的に声かけをする。(5分おきに泣き出す傾向にあれば、4分おきに声かけする)
子ども:泣かずに、ひとり遊びをする
こちらの例は先行刺激といい、子どもの問題行動が起こる前に、大人による計画的な行動で『問題行動』を防ぐ方法です。
ABAでは『注目』による行動だと判断したら、例3や例4の方法で対応します。
『要求』
例1
子ども:クッキーが食べたくてお母さんを叩く
母:クッキーをあげる
子ども:クッキーを食べる
子どもはほしいものが手に入りました。この経験から叩くと、もらえることを学びます。今後、ほしいときは「叩く」行動は増えることが考えられます。
例2
子ども:クッキーが食べたくてお母さんを叩く
母:クッキーをあげない
子ども:クッキーが食べられない
子どもは叩いてもほしいものが手に入らないことを学習します。今後クッキーがほしいときは「叩く」行動は減ることが考えられます。
例3
子ども:クッキーを食べたそうにしている
母:(問題行動が起きる前に)「クッキーちょうだい」の要求方法を教える
子ども:「クッキー」の絵カード(PECS)をお母さんに見せる
母:笑顔でクッキーをあげる
子ども:お母さんの笑顔とクッキーが得られる
子どもは要求方法を学び、今後ほしいものがあるときは絵カードを使ってほしいものを得る行動が増えると考えられる。
ABAでは『要求』による行動だと判断したら、例3の方法で対応します。
『要求』方法は後日、改めて発信します!
『逃避』
例1
子ども:たくさんのおもちゃを床一面に出して遊んでいる。
母:「お片づけしてね」と子どもに言う
子ども:癇癪を起こしておもちゃを投げる
母:片付ける
子どもは癇癪を起こせばお片づけはしなくてすむことを学びます。今後同じ状況になったとき、癇癪による「逃避行動」は増えることが考えられます。
例2
子ども:たくさんのおもちゃを床一面に出して遊んでいる。
母:大半のおもちゃはお母さんが片付ける。「お片づけ」と言いながら数個のおもちゃを子どもの手を取りながら一緒に片付ける(片付け方法を教える)。そして、「お片づけできた。えらいね!」と褒める
子ども:褒められる
子どもは片付けると褒められることを学ぶ。今度おもちゃを片付ける行動は増えると考えられる。
ポイント
◆「逃避」による問題行動があるときはそのタスクが難しすぎる、多すぎる、やり方がわからないことが原因であることが多いので、お子さんが『できる内容』→『できた』→『褒められる』から始めるとよいです。
◆子どもが「褒められる」チャンスを作る
◆徐々に子どもが自分で片付ける量を増やしていく
最後に『刺激』です
「感覚刺激」は自傷行為が多くみられ、1日でも早くなくしたい行動ですよね。
たとえば『刺激』による「腕を噛む」行動は自身の口と腕を使っていますね。これを代替行動として口と腕を違う行動に誘導します。噛む刺激を求めているなら、歯ごたえのある”chewy"と呼ばれるアイテムを使用するなど。他に「口」を忙しくするために歌を一緒に歌う、「腕」を忙しくするなら腕を使う運動をするなど、「噛む行動」が同時にできない行動を促します。
「刺激行動」は他の3つの行動と比べて対策が難しいと思います。お子さんを観察してみてください。「刺激行動」の直前にどんなことがあったのか知ることで別の対策が見えてくるかもしれません。