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#5 本気で社会を変えるにはーなぜ多様性は大事なのか?

ある組織がより高度なことに挑戦しようとするならば、要素が画一的なものよりも、多様であることが有利です。昨今はビジネスの視点から、個性や多様性が特に注目されるようになりました。

昔から日本では「出る杭は打立てる」と言われるように、個性的なものに否定的な社会です。自分たちと価値観の違うものを警戒し、自己主張を抑えて人に無理やり合わせようとする、そして暗黙のルールに従わない異分子を排除しようとする力学が働きがちです。就活生が見るマニュアルには、髪型から服装・色合い・立ち振る舞いから面談での質疑の方法まで事細かに指定されています。少し人と違う行動をしようものなら、なぜそうしたのかを追求されたり、面接官から場に合わせられないやつだと目を付けられるかもしれません。

ところが最近になって、そういう風潮はよろしくないと言われ始め、ダイバーシティ(多様性)・マネジメントが脚光を浴びました。自身とは違う価値観を能動的に受け入れ、それぞれの特技を伸ばしながら組織に活かし、業績を伸ばしていきましょうという考えです。

かつてのモノが不足していた時代であれば、やるべきことはいかに「安く」・「早く」・「良い」ものを作れるかという競争で、企業がすべきことは明確でした。言われたことに対していちいち疑問を抱く社員よりも、場の空気を読んで周りに合わせられる、上からの命令をしっかりと聞くことができる社員で構成されていることが、競争上優位だったのかもしれません。

一方でモノの不足が解消された今、「何をすべきか」が不鮮明になり、「解くべき課題が枯渇する」という問題が起こり始めました。技術の発展で効率化が進んだ結果、必要なものは一通り満たされるようになり、かつて三種の神器と呼ばれたテレビ・洗濯機・冷蔵庫は、今やどこの家庭にも存在します。今まで必要とされた仕事は、はるかに少ない人数でこなすことができるようになり、何を仕事にしたら良いかが分からなくなっているのです。

考え方も経験も似たり寄ったりの集団であれば、共通点が多く、コミュニケーションが取りやすいという長所があります。一方で共通点が多すぎるがゆえに、アイデアや発想が広がらず、異なる視点を掛け合わせて生まれる画期的な発明が出にくいという特徴があります。そもそも同一の集団に属していれば、自ら考えなくても、周りの人の行動に合わせて動けばいいのです(群れの心理)。それで大きく間違えることはありませんし、考える手間が省けるという意味ではとても効率的で"楽な"生き方です。けれど技術の発展とともに、分かりやすい課題はどんどん減っていきました。大量生産・大量消費で豊かになれた時代は終わりを告げ、向こう見ずの開発の代価として、今や様々な環境問題や経済問題が重くのしかかっています。もはや、親や先輩と同じことをしていても成功を望めません。グローバルに物事がつながっている今、多様な価値観を乗り越えて、様々な人と協力しあえる高度なスキル(コミュニケーション技術)が求められるようになってきています。

もはや似たもの同士が閉じこもっていて解決できるものなどなく、多様な視点から物事を考えなければいけない時代になっています。

(#6へ続きます)


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