【仕事のコツ③】負け顔をマネジメントしよう
前回「負け方」の話を紹介しましたが、負けた時の顔(負け顔)や負けた時の話は相手によって使い分ける必要があります。
ここで大事になるのは相手を2つに分類すること。その2つとは【クライアント(顧客)】と【チームメイト】です。
【クライアント】の場合
【クライアント】には文字通りサービス業における顧客や法人営業の営業先はもちろん仕事を依頼する上司も含まれます。
クライアントはお金をくれる人、お金に直結する評価を下す人たちです。
クライアントには負け顔をしてはいけません。
クライアントは仕事の対価としてお金を支払い、評価するという人たちですから、クライアントに自信のない顔、自信のない言動をしてもメリットはありません。
納期に間に合いそうにないなら作業にかける人数が増やせないか、納期を延ばせないか、お金をかけるか時間をかけるかの二択を検討すべきです。
クライアントに対しては自信のあるプロに徹するべきと考えています。
話はそれますが、もちろん中にはモンスターカスタマーやパワハラな上司がクライアントになる可能性もあります。
その場合窓口を変え、別のプロに対応を依頼すべきです。
モンスターカスタマーなら上司へのエスカレーション、パワハラ上司なら社内通報制度を利用すること、そもそも社内通報制度等ハラスメントを解決する手段がなくパワハラが収まらないなら、さらに別の手段(退職含む)を検討した方がいいでしょう。
話を戻します。大多数のまともなクライアントに対してはプロとしての人間としての誠意を尽くすべきで、そのためには負け顔を封印しなければいけません。
【チームメイト】の場合
【チームメイト】には、会社の同僚や部下・社内にいるのであれば契約社員やパートタイマーといった人たちを指します。
チームメイトは、いっしょに仕事をする人たちです。
チームメイトは設定された目標や予算を達成するために一人ひとりに最高のパフォーマンスを期待しています。
チームメイトには負け顔を見せましょう。成功体験をひけらかさず、うまくいかなかったこと、反省しなければと思ったことなどいわゆる「失敗体験」を包み隠さず自己開示することです。
『勝ちに不思議の勝ちあり、負けに不思議の負けなし』
プロ野球選手からプロ・社会人チームの監督を歴任した野村克也さんは自身の座右の銘に以下のフレーズをおっしゃっていました。
「勝ちに不思議の勝ちあり、負けに不思議の負けなし」
もともとは肥前国第9代平戸藩主松浦静山の言葉と言われておりますが、野村さんはこの言葉通り、敗戦に対しては徹底的に分析をし、敗因を探ったといわれています。
仕事をしていく上で継続して成果を出すことは非常に大事です。
ある程度継続して成果を出すとマネジメントを任され、部下を持つようになります。さらにエリアマネージャーやブロックマネージャーであれば地域の店舗やスタッフのマネジメントを行います。
その時に嫌がられるのは「過去に上司がうまくいった成功体験を部下たちに模倣させようとすること」です。
勝ちに不思議の勝ちあり。
この言葉通り、勝ち=成功体験は再現性の高い要素ばかりではありません。
その時期だったから、その場所だったから、そのスタッフだったから勝てたという再現できない要素も勝ちの要因には含まれます。
これはBtoBであれBtoCであれ変わりません。成功にはいわゆる「ガチャ」の要素が多く含まれているのです。
「部下がついてこない」
「部下の気持ちがわからない」
「部下になめられている」
上司の悩みの多くは「自分の成功体験を模倣しさえすれば勝てるのだから、成功体験を紹介してまねさせよう!」という誤った思い込みを部下に押し付けるところから始まっています。
上司の成功体験はチームメイトにとっては自慢話であり過去のこと。成功体験を伝えることでチームのモチベーションは上がりません。
勝ちに不思議の勝ちありなのですから、成功体験を模倣することに気持ちの面でも実務面でも懐疑的なのです。
いい上司とは「負け顔ができる上司」です。うまくいかなかったことを自己開示することで、この人でもうまくいかなかったことがあるんだ、同じ人間なんだと報告や連絡・相談についてもしてもらいやすくなります。
負けに不思議の負けなし
負けたときにふり返り、そこから工夫した話だったら聞いてみようと思うのです。
失敗もしたことない、あるいは失敗したことをチームメイトにすら自己開示しない人間にまともな報告や連絡・相談はしにくいのです。
では失敗したことない上司はどうするのか?
失敗したことない上司と思っている時点で上司という立場の仕事すなわちマネジメントには失敗しているのです。もしかしたらそれすら気づけていないかもしれません。
正直に素直にマネジメントをすることについて自信がないと言ってしまえばいいのではないでしょうか。負け顔をマネジメントするというのはクライアントに見せる顔とチームメイトに見せる顔を分け、適切に思いっきり自己開示することです。そうすれば部下も自然と負け顔をしてくれます。
負け顔をしあえるチームは絶対に強いです。失敗を隠蔽せず、失敗から学ぶ機会を創出できるからです。
好かれる上司像に共通しているのは、人間性の良さです。
仕事に誠実で、泥臭いことも行い、部下の仕事の過程には口を出さず任せる
自己開示をしていれば、上司の指示に血が通います。
「言うこと聞こうかな」
「言われた通りやってやろうかな」
「この人のためにもう少しだけ無理してみようかな」
と思ってくれるようになるのです。
自分でやりもしないのに、ああだこうだと過程に口を出す上司は自分で面倒見がいいと勘違いしているだけです。正論を吐くものの血が通っていません。それでは結果として孤立し誰もついてこないのです。
上司の仕事は
・部下を出世させること
・勝ち戦に乗せること
と言われています。
そのためには上司の自尊心なんてどうでもいいのです。
チームを勝利に導くためには、優秀なプレーヤー(部下)を育成し、プレーヤーが最高のパフォーマンスを発揮できる環境をいかにマネージャー(上司)が作れるか。
そのためにできることを愚直に行えるタイプが優れたマネージャーとして部下に愛されるマネージャーなのです。
愚者は経験に学び、賢者は歴史に学ぶの別解釈
この言葉は、愚者は自分で失敗するまで気づかないが、賢者は他人の失敗から学ぶことができるという意味で一般的には使われています。
しかし、この言葉は全く別の解釈をすることができます。
愚者は個人の再現性のない成功体験に学び、
賢者は集合知としての失敗体験から学ぶ
チームメイトにきちんと弱みを見せ、学ぶ姿勢を見せ、ともに考える、決めるときはきめる。間違っていたら素直に頭を下げる。そしてクライアントの前ではプロを貫く
負け顔をマネジメントする。それはおそらく芸人のマインドに近いことかもしれません。魅力的な失敗は、凡庸な成功を大きく超える世界はそうそうありません。
しかし、それこそが現代に求められるマネジメントなのだと私は思っています。
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