失恋墓地【毎週ショートショート】
彼は優しかった。
背が高くて、細身で、彼と話すといつも首が痛くなったっけ。
でもどうしても顔を見ていたかったんだ。
彼と出会ったのは高校生のクラス替えの時だったな。
名簿順で前後同士だった彼とは、よくノートの貸し借りもして、ファーストキスも彼だった。
でも、もうこの想いもそろそろ手放さなきゃね。
そうと決めたら、早く失恋墓地に行かなくちゃ。
いつまでも辛い思い出を引きずっていたくないから。
初めて来たけど、ご丁寧にあいうえお順で石碑が並んでるのね。
ん?私の名前がない。
勇気を出してここまで来たんだから、今日どうしてもこの想いを手放したい。
そうだ、お掃除中の管理人さんに尋ねてみよう。
「おかしいですね。失恋している方のお名前は必ずこの敷地内に刻まれているはずなんですが・・・あ、でも、例外として———」
管理人さんがそう言いかけた時、見覚えのある姿がすぐ横に現れた。
何か探しているみたい。
背が高くて、細身で・・・
「まだ心が繋がっている人の場合は、刻まれていないんですよ」
今週も、たらはかに様企画の『毎週ショートショートnote』に参加させていただきました。
失恋墓地を失恋墓場と読み間違えたが最後。
「墓場」→「酒場」と形を変え、頭の中では♪北のぉ~酒場通りにはぁ~・・・がグルグル
止まりませぬ。
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