企画の極意~シーンを思い浮かべていますか?~
野地秩嘉氏(ノンフィクション作家)に学ぶ仕事を輝かせるためのヒント・・・
さて、キリンビール新商品開発グループ・チームリーダー和田氏の企画書について具体的に見ていきたい。
インタビューに際して、彼は「和田徹の企画書」と書かれた文書を用意していた。
そこには彼の企画書づくりの特徴が詳しく述べてあった。
「私の企画書はすべて新商品の開発です。
けれども、新商品といっても、モノだけを考えていてはイメージは膨らみません。
出来上がった商品を使うシーンを思い浮かべることから始めます。
そのためには、まず私自身がお客さまになってみて、商品と一緒にいる場面を想像します。
性別、年齢、職業、環境、すべての面で別人格となって、新商品を飲む人間になり切るのです」
実際に彼が書いたものを紹介しよう。
ある低アルコールの商品のコンセプト開発をしたとき、和田氏は21のシーンを想定した。
【彼女の部屋で遅めのランチ。パスタを食べながらグビグビ】といった20代の青年に扮したものもあれば、【彼と一緒にベランダにハーブ園を完成させた午後。軽い疲労感と達成感で。ミントを浮かべて】といった女性客になったものもある。
あるいは【子供の頃から念願の天体望遠鏡をやっと購入。妻と交代でオリオン座の青雲を探す】といった、文字にするのが照れくさいようなシーンまで真面目に書いてある。
自分の頭の中身をつかみ出して人前にさらすような行為ではないか。
「そうなんです。自分の心をあらわにするんですよ。恥ずかしいし、照れくさいけれど、そこを逃げてはいけない。本気でお客さまになってみるんです」
(企画書は1行/光文社新書)
和田氏は言います。
「僕は膨大な量の企画書を書きます。
ひとつの製品で100枚くらいの企画書を作ることもありますし、しかもしょっちゅう中身を書き換えます。
だから、完成した企画書というのは持っていません。
ここにある企画書はすべて自分自身に向けて書いたものです。
書くことによって頭のなかが整理されるし、響きがいいなという言葉を文字に定着させると、響きのよさを追認できる」と・・・。
これからの時代、全ビジネスパーソンにとって何かを企画するという能力はとても大切なものとなってくることでしょう。
でも私は単なる企画屋ではなく、輝画屋(きかくや)でなければならないと思っています。
輝画屋とは対象顧客の未来の輝かしい画(姿)を垣間見せることの出来る人間のことです。
そして輝画書を作成するということは、対象顧客の未来の輝かしい画(姿)をイメージさせると同時に、希望を抱かせ、心の中のワクワク感を呼び覚ます行為でもあります。
企画を考えなければならない場面は様々ですが、特にセールスパーソンがこの能力を養うことが出来ればセールスという仕事が楽しくて楽しくてしょうがなくなってくることでしょう。
何かを企画するとはまさに喜ばれる人生を歩むこと・・・。
毎日一企画・・・、日課にしていきたいものです。