てやんDEI!vol.1 「じゃない方の女活」で、”べき”にてやんDEI!/山田彩子さん(サッポロビール株式会社・北海道Mimosaプロジェクト)
DEI(ダイバーシティ・エクイティ・インクルージョン)推進は、「てやんでい!」の連続。誰もが自分らしく力を発揮できる北海道を目指し、日々奮闘するエゾっこたちにスポットを当てる連載企画「てやんDEI!」by ゼンカツ(DHJ全員活躍推進プロジェクト)。
記念すべき第1回ゲストは、北海道Mimosaプロジェクト(以下、Mimosa)代表 山田彩子さん。自身が「じゃない方の女活」とも表現するMimosaの取り組みとは一体どのようなものなのか?ここに至るまでの山田さんの思いとともにお伝えします。
「じゃない方の女活」北海道Mimosaプロジェクトが考えるDEIとは?
―Mimosaがどのような活動をされているか、教えていただけますか?
山田さん:異業種の企業が集まったセミナーや交流会を開くのが主ですが、やりたいのは「つながって、開いて、拓く。」こと。長年同じ会社の中で同じ仕事をやってると、練度は上がるけれど「自分はこのくらいでいいや」と思って可能性を閉じちゃいがちなんですね。
だから、まずは外と「つながって」、「こんなキャリアもあるんだ」「こんな元気な同世代もいるんだ」みたいな「気づき」を外の色々な人に出会うことで増やしていって、「結婚も子育ても出世も!のスーパーウーマンを目指すのはしんどいけど、こんな感じなら私にもでもできるかも」という感じで、少しずつでもモチベーションが上がる機会にしていきたいんです。
そのためにはまず「つながる」。つながるためには自分たちもオープンの意味で「開いて」、一人一人の人生を切り拓くという「拓く」。ここが私自身Mimosaの肝だなと思っています。
―なるほど。それがMimosaのコンセプトでもある「等身大の女性活躍」にもつながると思うのですが、もう少し詳しくお聞かせ頂けますか?
山田さん:よく外部の方へ説明するときに「等身大の女性活躍」でハテ?となる方には「じゃない方の女活(女性活躍)」とも言ってます。
「管理職育成&育児支援」がいわゆるメインストリームの女性活躍だとすると、「じゃない方」つまり、結婚していてもしていなくてもいいし、子どもがいてもいなくてもいい。必ずしも管理職を目指さなくてもいい。スーパーウーマンを目指す・・・方「じゃない女性活躍」。もちろんそこを目指すのも素晴らしいことだけど、みんなそれぞれ活躍の仕方があってこれまで透明な存在だった人たちにもちゃんと光を当てるような女活ですかね。
そんな女性たちが様々なロールモデルを見て自分の可能性に対する視野を広げてもらうことと、実はもう既に「もうちゃんと活躍できているよ」、ということを他社の客観的な視点で気づいて自信を持ってもらうことも大事だと思っているんです。
いわゆる自己効力感というか、たまには褒められないと、がんばれないじゃないですか。笑
―ホントそうです。笑 Mimosaの活動への反響はどうですか?
山田さん:とあるMimosaメンバーの上司の方から、「Mimosaの集まりで何をしてるかよくわからないけど、元気になって帰ってくるんですよ!」と聞いたときは、うれしかったですね。まずはそこからで良くって、そんな人の成長を応援してくれる上司が、フツーの女子の背中をもっと押してもらいたいという感じです。
はじまりは「ヘルメット」から。Mimosaの花が開くまで。
―そもそも、山田さんがこのような活動をされている背景には、どのような思いがあったのでしょう?
山田さん:それこそ私が「じゃない方」で、結婚はしているけれど子どもはいない、偉くもない。接客からスタートして営業や事務職を、数年おきに細切れで異動したもんだから専門性も特にない。
でも自分みたいなキャリアを歩んで来る後輩たちはこれからも現れるだろうし、そんな人たちに自分の経験が助けになるよう動きたいと思って、キャリアコンサルタントの資格を取りました。社内でもキャリアサポーター(=キャリア相談員)という役割に就くことができて、女性のキャリアの作り方や、セミナー・交流会のノウハウなどがわかってきて、Mimosaの取り組みにもつながっていきました。
―Mimosaプロジェクトの始まりには、どのようなきっかけがあったのでしょうか?
山田さん:ちょうどコロナ禍真っただ中だった時に道新の働く女性を応援する「HATAJOラボ」のアワードに参加したんです。その様子を当時の役員がオンラインでウォッチしてて「素晴らしいね」と言ってくれていたみたいで。そこでグランプリを取られていた戸田建設さんにアプローチすることにしたんです。
そこで戸田建設さんが社内でもともと行っていた取り組みを2社用にアレンジしたのが「職場交換パトロール」です。「戸田建設さんとサッポロビールの共通点って、ヘルメットじゃない?」みたいなことから、建設現場と工場に注目し、お互いの現場を行き来して働く環境の改善点やいいところを指摘しあう活動をしました。
「トイレが和式しかないってどうなんですか?」とか、「女性の手が届きにくいところに大事な装置がありますよね」とか。ある意味互いの恥部を晒すようなことなんですが、社内の一人が声を上げるよりも「他社の人も言ってます」の方が会社が動いて、予算化まで行ったりするんですよね。
北海道の各地に存在する、「多様な“じゃない方”=マイノリティ」を透明化しないために。
―その2社から始まり、だんだん大きくなっていったんですね。大きくなるにつれて変化はありましたか?
山田さん:2社が4社、6社になるにつれて「マイノリティ」という言葉が指すものが変わっていきました。2社の時はそれが「女性」でしたが、逆に女性がマジョリティになる会社もあるし、LGBTQや介護を担っている人、外国籍の人、私のようにメインストリームのキャリアを歩んでいない、みたいなマイノリティ性もあるなと思ってきたので、最近はテーマが多岐に渡っていますね。
―今後のMimosaはどのようになっていくのでしょう?
山田さん:エリアも多様にできたらいいな思っています。まだまだではありますが、私たちは「北海道Mimosaプロジェクト」であって「札幌市中央区Mimosaプロジェクト」ではないので、函館、旭川、釧路など、色々なところにサテライトMimosaができるといいですね。
そのためには、今のMimosaメンバーがやりたいことをどんどんやってくれることが大事だなと。私の役割はそのための場づくりと、本当はみんなの背中をつんつん押すことくらいなんですが。まだまだ色々口出ししてしまいたくなって、ホントまだまだです。・・・そんなことの積み重ねで、北海道の「3年連続ジェンダーギャップ指数全国最下位」を脱していけたらいいなと。
あとは、男性のMimosaメンバーも、イベント参加者ももっと増やしたいですね。女性活躍のイベント=女性限定の集まりと思われることがまだまだ多いですが、女性活躍はむしろ男性がいないと始まらないと思っています。まだまだ組織の上位層は男性が多いし、男性にこそ多様なキャリアについての議論に参加してほしいのです。
いま地域はどこも人材不足・人員不足で、女性も、シニアも、多様な人に活躍してもらわないと組織が成り立たない状況ですし、そもそも企業どころか自治体存続すら危ういといわれていますよね。もう待ったなしの状態で性別、年齢うんぬん言ってられない。若い人にも選ばれる組織、選ばれる地域にならないといけない。そういった意味でも男性にもこの活動の意義をわかってもらうために私もメンバーも日々試行錯誤しています。
山田彩子さんの、てやんDEI!-”べき”に、てやんDEI!
―それでは最後に、山田さんの「てやんDEI!」をひとことでお聞かせいただけますか?
山田さん:「(こうある)べき」に「てやんDEI!」ですね。「女性は重い物持ちたくないでしょ?」に対して「そうなんです!ありがとう!」もあるかもしれないけど、「別にそれくらい大丈夫ですよ」な人もいる。
「結婚して子供を産んで育てることが幸せ」「女性はこうあるべき」と女性の幸せは「一択」だった時代を経て今は、「あれ、その後どうすんだっけ?」って感じになってきている。どの年代もどんな属性の人も、もちろん男性もみんな不文律のような「べき」が実はもうしんどくなってきている気がします。
北海道はまだいろんな「べき」が強い土地だと感じていますが、過去の「べき」は、もうそろそろみんなで「せーの」で手放して、ちょっとずつ変えていきたいですね。
―「じゃない方」のキャリアを歩んだ経験から、様々な「じゃない方」に光を当てる活動に取り組む山田さん。その姿はもはや「じゃない方の星」として、北海道の夜空をキラキラと彩っている。そんな山田さんが照らすMimosaの今後の活動も注目していきたい。
(ライター:寺岡 真由美)