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第16回 産業構造審議会 製造産業分科会からDMG MORIの森社長の発言を抜粋

2024年5月22日に開催された「第16回 産業構造審議会 製造産業分科会」の議事録から、工作機械メーカーであるDMGMORIの森社長の発言を以下に抜粋

googleのNotebookLMにPDFを読み込ませて抜粋してもらいました

森委員の発言部分を以下に抜粋します。

●森委員 まずビデオで説明を受けたのは、1時間真面目に勉強できて大変よかったです。今日のお話を伺っていても、官僚の皆さんとか女性とか若手の人が相当いらいらしているなという感じはします。 自分自身、今62で今年63なのですけれども、とはいえ志を持ってずっとやっていると、40、50の頃と同じことを言っていても急に60過ぎると周りの人が聞いてくれるようになるので、ぜひ志を忘れずに、そのうち変わりますから、敵は自分より大体10歳ぐらい上というのが世間の標準だと思います。
あとベンチマークをするとき、どうしても欧米のトップ会社になってしいますが、自分自身の経験でいくと相当とろい会社も多いし、うそをつく会社も多いし、突然キャンセルする人もいるし、レベル的には少なくとも工作機械とかロボティクスの世界で余り変わらないということは申しておきたいなと思います。 一方で、うちも多少M&Aで成長してきた会社ですから今、いわゆるPBR0.5とかの会社に全部声をかけているのですけれども、押しなべてとろいです。返事が来ないからもう終わったのかなと思ったら忘れた頃に、実はあの話でと来るので、そこにいる社員さんは一番気の毒だなと。社員でいい技術者がいるから、今人が欲しいですから塊として欲しいなと思うのだけれども、経営者がぼーっとしているので、社員はそのまま平均賃金450万ぐらいで路頭に迷ってしまう。うちに来たら800万、900万になるのにかわいそうだなというのがあります。
それでいろいろあるのですけれども、まず利益率を上げるというのは値付けの話で、値付けは経営者の基本のところで、うちも最近やっと10%を超えてきたのですけれども、私の目標が10年ぐらい前から売上高イコール時価総額イコール総資産というか、BSのサイズということで、やっと今約6,000億円ぐらいになって、まだコロナ禍に仕入れた在庫が多いので、それがはけるのにあと1年ぐらいかかるのです。多分世界全体がそんな感じなのであと1年ぐらいやると、コロナのせいでいっぱい買い込んでいたやつがすっと抜けるので、来年ぐらいからですね。また2年ぐらいするとみんな在庫を買うのだけれども、2年ぐらいすると売り切れる感じが今しています。 私どもでいくと5、6%ぐらいでやっていて、それが15%になったのは、10年前までうちの平均単価は2,000万だったのでけれども、今は7,500万円になってきました。こうなると、2,000万のときだったら1万台つくろう、2万台つくろうと思っていたのですけれども、今6,000台ぐらいを丁寧につくって、丁寧に据え付けてやろうと。
それがなぜできたかというと、結局全世界に400台ぐらいのテスト加工機を置いていまして、10件ぐらいでテスト加工をするのです。年間4,000件で、実は4万件、5万件ぐらいのやつが、もう全部3D図から工具からプログラミングから全部できて、4万ぐらいになると大体昆虫採集と一緒で、もう新しいチョウはいないというように、来たら、これはこう加工してこうです、というのが出てくるようになってきました。
知財といっても特許もちゃんと真面目に、元特許庁長官の中嶋さんがうちの社外取締役ですからプレッシャーがかかっているのですけれども、それは100件ぐらいに抑えておいて、出せないデータベースを今どんどんつくっているところになります。 ただ、一番大きいのは、昨日ダイキンさんの100周年にも出たのですけれども、うちはダイキンさんの10分の1、トヨタさんの100分の1なのです。
一番重要なのは、いわゆる今のメーカーというのはつくるのは半分とか30%ぐらいで、いかにどう売って据え付けて、ずっと10年、20年サービスするかということなので、全世界に直販のサービスマンを何人持っているか、営業マンを何人持っているか、機械のプログラミングをする人を何人持っているかという戦いになってきていると思います。
幾つかトップダウンで官庁側からやっていただきたいことは、まず直ちに1億円開示ルールをやめる。社長は大体8,000万とか9,000万のところでやっていて、そういう人に限って辞めるわけにいかんので長くやるのですよね。アメリカもドイツも、全員ゼロでも何でも開示。私はドイツの監査役会の議長なのだけれども、日本でもらっているからゼロです。ゼロで開示しています。だから全部開示しないといけないですね。 これはぜひやるべきだと思うし、あと最低賃金を上げるとそれより低い人がいないし、京都などでよくあるのですけれども、伝統工芸だったら最低賃金の適用除外というのがあ るでしょう。あの辺のブラックなルールをやめさせないといけないと思うし、それから新入社員の給料をこれ以上上げると、それより安い人は社内にはいなくなるはずなので、これはぜひやられるとすぐいくと思います。
CFOにしろ、CIOにしろ、CXをやっていく中で一番重要なのは日本の会計の仕組みが古過ぎる。ドイツの、いわゆる会計士協会の会長がうちの社外取締役をやってくれているのですけれども、日本はドイツが100年前につくった会計をそのまま墨守してくれて、ありがとうございますという感じです。いわゆる制度会計、管理会計はいいのだけれども、いまだに製造業で先入れ、先出し、移動平均のうんぬんをやっているので、まずは個別の、 うちの場合だったら6,000台の機械の個別の売買台帳をつくって、その機械が何時間で組み立てられて、何時間のソフトウェアをつくってやって、入りと出がどうなって、高速PDCAを回していくとかなりやっている。それと管理関係と、それから制度会計。この3つを分けて、それは今ITでいくらでもできますから、SAPにちょっとつながるものを数百万円掛ければいくらでもいけるので、そういうものですね。
あとデータのほうもでかいところはヨーロッパに任せておいて、ヨーロッパはまず物からつなげますので、インダストリー4.0の実装はほぼ終わっているのですけれども、まずパレットがユーロパレットで、サイズが全部決まっているのです。日本はまた個別の、三甲の後藤さんに頼んだらユーロパレットもすぐつくってくれますけれども、日本はまだ独特のパレットなので、パレットサイズをまず一緒にする。 それからコネクティビティのほうも、アメリカのMTConnectとか全部つながるようになってきているので、イーサネットとかです。ハードでいくものも、ソフトでいくものも、ブルートゥースの新しいバージョンとか、この辺のところの規制を揃えるのは非常に重要だと思うのです。 データのほうはやっと最近日本も含めて、海外はほとんど全部そうですけれどももう3Dになってきて、そこに属性をつけてやっていけるのでつながり始めたなと思っています
うちは今30万台の機械のお世話をしているのですけれども、そのうちの3万台が完全につながり出して、しかも工場長が40歳以下の会社になってくると、グローバルの大企業であってもつなげてみてくれという感じにやっとなってきて、そこからお互い得るところが出てきているので今からやって遅くはない。今ちょうどいいチャンスになってきていて、イーロン・マスクのスターリンクがこれから4万機ぐらいになっていったら、そこでかなりのコネクティビティが出てくるので、今うちもKDDIと組んで全ての機械にスターリンク系の携帯電話を全部入れちゃおうかという話をしていて、これも日本としてはすごくいいチャンスになるのかなと思います。
もうちょっとだけ話をさせていただいて、それでグリーンのところなのですけれども、うちはインターナルカーボンプライシングでできるだけ高くしていまして、ヨーロッパで1.7ユーロとか、日本円でいくと200円にしているのですけれども、高くすると社内で、こういう投資をしても合う。低くするとなかなか合わないねとなるので、この辺は経産省で、この業種だったらこれぐらいのインターナルカーボンプライシングにしろというのを決めたり、未公開なら未公開でガイドラインをつくっていただけたほうが結構進んでいくのかなと思います。
それから今実際我々の世界での戦いは、AI系はそこそこ20、30人使ってやっているのですけれども、それはもっと大きな会社に任せていて、実は戦いはPLCとロボットとNCのプログラマーをどれだけ揃えるかということで、こいつをできるだけたくさん揃えた者が今システム化で勝つと。もう全世界で勝つという状況になっています。
それから経済安保ですが、もう少し厳しくやっていってもいいと思うのです。今まで海外は全部代理店経由で売るということなので、お客さんが実際どこに行っているか分からなかった。経済安保を逆手に取って自分の商品はどこでどのように、誰が何をつくるために使っているのかということが分かると商品の改善・改良になりますから、良品・廉価・短納期だけではなくて、良品は基本だけど廉価・短納期でなくても待ってくれる客がいるというのが分かってくるので、経済安保を前向きに使い倒すのはぜひやっていただけると いいなと思います。
最後に航空のほうなのですけれども、自分自身、ちょっと生意気なのですが、この10年ぐらいグローバル6000で始まって、2機目やって、今3機目のグローバル6500に乗って、年間30回ぐらい海外出張へ行っている。今日もこれからロードアイランドへ行って帰ってくるのですけれども、ものすごい楽ですし、いくらでも海外出張へ行けるようになってきて、そのかわり年間30泊ぐらい飛行機でしているのですけれども全然オーケーですし、だから数千億円以上の会社、せいぜい年間十数億円ですからみんなにもう義務化したほうがいいと思いますよね(笑声)。経団連の会社は必ず買わないといけないとか、経産省も5機とか、外務省だったら10機とか、官庁でやるのがよいのでは。笑われるけれども、そういうものを受け入れる文化にならないと航空機産業はいかないし、特に小型機のMRJを最初にみんなで100機買っていたら、こんなことにはならなかったです。MRJの社長をしていた森本さんも今うちの常務で来てくれているので、そのときに言ったのですが、そういう雰囲気じゃないんだよということで、その雰囲気を変えるのはものすごく重要かな と思います。 ちなみにうちの売上げの18%が航空・宇宙で、今航空と宇宙と分けて航空が10%、ほとんどエンジンとランディングギア。これは消耗品ですからもうかるのです。それから宇宙が8%で、SpaceXが一番のお客さんで、毎週打ち上げていますからいっぱいモーターケースをアディティブでつくらないといけないです。これも行ったら皆さんびっくりするようなカジュアルな環境で、日本だったら白衣を着て病院かというところだけれども、向こうは本当にハンバーガーを食べながらジーパンで、Tシャツでという感じで物すごくカジュアルです。そういうところも、ちょっとつくり方を変えてやらないといけないのかなという感じがします。 以上です。

●森委員 航空機なのですけれども、うちのお客さんでリチャード・ブランソンさんがやっていたヴァージン・ギャラクティックが去年倒産、チャプターイレブンですね。そこそこいい技術で、もともと大分のところで古い747を使って上まで上がってから打ち上げるということで、いい技術者がいたのですけれどもみんな散らばって、同じところで再就職して全然オーケーなのです。ITARとかの関係があるのですけれども、ああいうときにうまいこと資本参加して助けて日本の技術にするとか、チャンスはあると思うのです。10%、20%で今でもリラティブリアルスペースとか、SpsceXがあれだけいっていますから3、4社ありますでしょう。ああいうところにちょっと出資するのもありかなと思うのです。 あと小型機もダッソーとか、ボンバルディアとか、ガルフストリームそのものを買ってしまうとか、エンブラエルとかですね。何か資本参加するとかしてチャンスはあると思うのですよね。

●森委員 すみません、何度も。資料で61ページとか64ページのところで素材から完成品に、ちょっといきなり行っているような感じなので、ぜひそこに私どもの担当している、どうつくるかというところも入れていただけると、工作機械、産業機械等ですね。助かるなと思いました。 あとさっきの知財の議論で非常に重要なのは、うちは国際会計基準なのですけれども、いわゆるのれんの償却です。これはずっと価値があって、のれんとか知財がバリューを生んでいたら減損しなくていいですけれども、日本の場合は決めて、必ず最後はゼロになるみたいな思想が全然違うのではないかと思います。ブランドとか、そういうものをつくっていくときにですね。と思いました。

016_gijiroku.pdf (meti.go.jp)


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