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量子情報システム研究室の紹介
みなさん、こんにちは。量子情報システム研究室(木村研)に所属する修士1年の柴田と好村です。ここでは、私たちはどのような研究をしているのか、また本研究を通してどのようなことが学べるのかについて紹介していきます。
研究概要:みなさん、「量子力学」をご存じでしょうか?量子力学は、原子や素粒子といった極微の世界のふるまいを記述する学問です。このような世界では、私たちの常識を超えた不思議な現象が数多く見られます。驚くべきことに、その根底にある謎は未だに完全には解明されておらず、長年にわたり多くの物理学者を悩ませてきました。しかし近年、この不思議な現象を利用して、革新的な情報技術の実現が可能であることが分かってきました。そこで私たちの研究室では、基礎理論である量子力学の追求と、その応用である「量子情報科学」を、基礎と応用を結びつけながら研究しています。ちなみに、所属は機械制御システム学科ですが、あくまで理論的な研究を行っています。
研究室で学べること:私たちの研究室では、学生が新しいことをゼロから学び、未知の課題に取り組むことで、脳を訓練し成長させることを最も重要な目的としています。量子力学や量子情報科学といった複雑で高度なテーマに取り組むことは、単に知識を吸収するだけでなく、論理的思考力や問題解決力を飛躍的に向上させる機会でもあります。特に、基礎的な理論の理解から始め、段階的に応用研究へと発展させていくプロセスを通じて、学生は自らのアイデアを形にし、学術的な成長を実感することができます。さらに、私たちの研究室では、失敗が許される環境で挑戦を重ねることができるため、社会に出てからではなかなか得られない貴重な経験を積むことができます。
研究内容の一例:
◆ベルの定理
「見ていないときに月は決まった位置に存在していると思いますか?」という問いに、多くの人は「存在している」と答えるでしょう。しかし、量子の世界(つまり我々の世界全体を含む)では、見ていないときには月が存在しない可能性もあります。これは、1964年にJ.S. Bellが提唱したベルの定理によって示唆されました。また2022年,ベルの定理の実験検証に対してノーベル物理学賞が与えられました!
もう少し具体的に説明すると、ベルの定理は、私たちの世界では「実在性」(観測に関係なく物理量が決まった値を持つ性質)と「局所性」(光速を超えて情報や物理現象が伝わることはできないという性質)が同時に成り立たないことを示しています。
私たちの研究室では、「この世界を説明するために、どの性質がどの程度成り立たなければならないのか」というテーマに取り組んでいます。
◆不確定性原理
不確定性原理は、量子力学において、複数の物理量を同時に正確に測定できないことを示す基本原理です。例えば、ある光子に対して位置を正確に測定すると、その運動量の測定結果は一定ではなく、ばらつきが生じます。ここでのばらつきは、測定器の精度やノイズによらない、量子が持つ本質的な性質として知られています。私たちの研究では、この不確定性原理に対する数学的な定式化を、より厳密なものに一般化する試みをしています。
◆同時測定不可能性
ミクロな世界ではマクロな世界を生きる私たちからすると「不思議」に感じる性質が多くあります。
そのなかの一つに、位置や運動量などの異なる2つの物理量を同時に測定することができないという「同時測定不可能性」というものがあります。高校で学んだ物理では我々は当然のように位置と運動量を同時に求めていましたが、それがミクロな世界ではできないことがあるというわけです。とっても不思議な性質ですね。この性質を定量的に評価することでミクロな世界とマクロな世界の境界を理解しようというのが私たちがやっている研究です。
◆量子暗号
量子力学の最も有名な応用の1つである量子暗号に関する研究にも取り組んでいます。量子暗号とは、光子の量子的な性質を利用して、絶対に盗聴されない鍵の共有を行う暗号プロトコルのことです。従来の暗号技術は計算量に依存しているため、計算能力の向上や量子コンピュータの出現によって破られる可能性がありますが、量子暗号は物理法則そのものに基づいているため、理論的には絶対的な安全性を保証します。私たちの研究では、新たな暗号プロトコルの提案、また既存のプロトコルの改善を行っています。
最後に:今回紹介した研究テーマ以外でも、皆さんが取り組みたいと思うテーマについて、先生や先輩と一緒に学びながら研究を進めることができます。他学科からの横断配属も可能なので、興味がある方はぜひお気軽にお越しください!