夢日記71”寝る夢、覚める夢”
ここはどこだろう何て思ったのは束の間。そうだ、修学旅行へ来ていたのだ。今は全てを終えて消灯までの僅かな自由時間。これからの時間が楽しいのが学生だと思うが、私は大変疲れているのでもう寝る事にした。
「もう寝るの?」なんて聞かれたら嫌だな、なんて考えていたが周りはガヤガヤと騒いでるだけで私の睡眠を妨害する人はいなかった。大変嬉しい。
ふと、チャンネルを変えた様に景色が突然に変わる。辺りは浅く掘り返した様な柔らかい土と、工事現場にありそうなシート付きのフェンスがあった。時間は夜。まるで瞬間移動した様に私はパジャマ姿のままで、夢を見ているようには思えない。しかしいかにも寒そうな景色な割に気温は低くない。
時間帯からして人がいないのは分かるが明らかに工事中なのに重機も工事道具らしい物も何も見当たらないのは何だか気味が悪いと感じた。ホテルに帰ろうと歩き出した。辺りの風景は修学旅行で付近を見た光景に良く似ているのに…心覚えのある道はどこにもない。
やはり夢でも見ているんだろうか。しかしこの確かにこの重力に引かれた感じ、足の裏に感じる土の感触、夢にしてはあまりにリアルだ。
…いや、ひょっとして修学旅行で寝た私の方が夢だった?だとしたらおかしい。私は見知らぬ町の見知らぬ場所で立ったまま寝ていた事になる。明かりのついてる家はあるしここがどこなのか尋ねるべきか?こんな時間に?
私は持ち物でも確認しようとふと自身の手が目に入った。知らない手だ。皮膚が薄く血色も良い。手を手で触れば柔らかい。10代の体だ。おかしいな、これは私の手ではない。それならこれも夢なのか?
修学旅行も夢、工事現場で佇んでたのも夢?そうだ、私は疲れて横になってた大人で…。いや、どれが夢だ?思い出した記憶が自分の様に思えない。思えばあれも夢かもしれない。
「じゃあ私は誰なんだ」
悲しい事に今ここにいる私の事は少しも思い出せない。私は答えを求める様に月を見上げた。月は青白い顔を見せて私を見下ろしているだけだった。
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