【映画】プラン9・フロム・アウタースペース:レビュー
ゴシックホラーとSF、奇跡の合体が今ここに!
意味深な語り部から物語は始まり、舞台は墓場へ。急死した伴侶に悲しみくれる老人だったが、彼もまたある日ふらりと姿を消してしまう。やがて死んだはずの彼らは生き返り、人々を襲いだした。
飛行中に未確認飛行物体を目撃したパイロットのジェフ、それを黙秘する様に命じる政府。彼らは何とか隠そうとするも攻撃を仕掛けてきたため迎撃する。宇宙人の目的は、生き返る化け物の正体、その謎に迫る…といった流れだ。
低予算のセット、短期間撮影による撮影もあって洗練されてない部分やチープな所も目立つものの物語の大筋や役者の演技はとても良く個人的にはとても楽しめる一本だった。
この手の作品で社会風刺をしたりメッセージを込める物を見るが、主張ばかり大きくなって物語の趣向を損なってしまったり登場人物同士の口論シーンが冗長になってしまうパターンがあって心配だった。
ラストの主人公達と宇宙人の口論シーンはさすがに長く感じたが、全体的には程よくちりばめられメリハリがあってとても良かった。(もはや国民からの目撃情報も多く隠し仰せなくなっても実在しない物として扱っていた政府の意図は最後まで説明されなかった)
とても斬新で素晴らしいと感じたのは、多少人間より高い科学力を持っているものの宇宙人と地球人の科学力がそれほどかけ離れていないという事だった。
彼らは人類より早く文明を築き地球人を監視していたそうだが、よもやその科学力は太陽系、やがて宇宙をも脅かす脅威になると考えていた様子。それを阻止すべく交信し自分たちを受け入れるように呼び掛けていたようだが、断られ、拒絶され、人類を滅ぼすしかないという決断に至った。
潜伏先を突き止められ、何とか刑事達をやり過ごすべく中に引き入れた宇宙人のイロスは彼らに対し人間がいかに凶暴で傲慢かを語る。
彼らに対して有利に回り殺害する事を企てるも、トラブルがあって計画は破綻。ついに追い詰められた彼は決死の戦いを挑むが、返り討ちに遭い気絶してしまう。
その争いの時に船内に深刻な問題が発生し、火が噴き出る。イロスを守るべく、機密を保持すべく機体を空へ飛ばす様に操作する宇宙人のタンナ。地球人は一度機内から脱出する。
空で燃える機体。気絶したイロスに何度も何度も呼び掛けるタンナの声も、爆発と共に消えてしまった。
身に余る武力を追い求める人類対してその凶暴さと傲慢さを非難する彼らだが、手に負えなくなった人類を武力で滅ぼさんとする様子はまさに…。
本作は続編を匂わせる様なラストを迎えた。もし作られていたならどんな作品になっていただろう。とても気になる。
あまり気楽に人にお勧めはできない作品だが、「こう言う物が作りたかった」という想いや創意工夫、苦悩やメッセージなどがひしひしと伝わって来た。
知っているが、観た事はない。そういう方も多いはず。クソ映画、Z級映画という言葉で本作を語るなら、まずは本編を見てからでも遅くはない。年も暮れ、友達や家族との話題作りの1つに鑑賞してみるのはいかがだろうか。
…享年のエド・ウッドはあらゆる不幸に見舞われ、絶望の中で息絶えた様子。映画、エド・ウッドを観る限り彼自身、犯罪まがいの事をやったり様々な人とトラブルを起こしたりしているものの、作品への情熱は誰もよりも熱かったと言える。
彼自身の映画と向き合う姿勢に感銘を受けた著名人も多いらしい。もし神がいて、彼を救っていてくれていたなら…もっと長生きして、スポットライトを当てられていたなら…色々と考えてしまう。
私は彼ほどの行動力もないし、どんなリスクを背負ってでも創作をやり抜こうとする情熱も勇気もない。だから彼と自分を重ね合わせて考える事はできない。
私は最期まで誰にも知られる事なく、日の目も見ずひっそり息絶えると思う。それでも自分なりに生涯を創作に捧げるつもりでいる。彼は少ない憧れの人物だ。
彼の死後の安寧と、彼の作品が永劫語り継がれる事を祈りたい。
パイナポォ(「 ・ω・)「