言語AIの進化史④意味ネットワーク
前回は、1960年代頃から台頭したエキスパート・システムについて解説しました。人工無能がどちらかというと対話の表面的な流れを維持するためのルールの集合あったのに対し、エキスパート・システムは、専門的な「知識」を蓄積した上で、ルールに従って利用することにフォーカスしていました。
しかし、知識の収集し蓄積するために膨大な手作業が必要でした。
人間の専門家からの知識をインタビューなどを通して獲得し正確に記録しなくてはなりません。ところが、自然言語による表現に秘められた意味は、経験的な知識や暗黙的な文脈に依存することが多く正確に定義することが困難です。
ある言葉の意味を定義するために、それこそ多くの言葉を必要となります。例えば、国語辞書を考えてください。ある単語を説明するのに多くの文章や例題を必要としています。
同じ言葉でも文脈によって意味が異なるので、言葉によって説明された何万もの知識を矛盾なく蓄積するのは容易ではありません。自然言語をそのまま使用して「意味」を記述する方法は効率が悪すぎます。
そこでコンピュータを利用することを考えると、システムが扱いやすいように言葉の「意味」を定義することが必要になります。そうなれば、手作業が減り、効率的な知識の蓄積や探索が可能となります。
しかし、問題は「意味」をどう定義するかです。
もちろん、意味の定義の方法には、たくさんの可能な解決策があるでしょう。言語モデルの進化史を辿ると言葉が意味することの定義に対する様々なアプローチが登場します。
その一つの試みとして意味ネットワーク(Semantic Network)や知識グラフ(Knowledge Graph)と呼ばれる意味や知識を定義し構造化するための手法が登場しました。エキスパート・システムと同時期の1960年代頃のことです。
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