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言語AIの進化史⑤オントロジー

前回は、意味ネットワークを紹介しました。意味ネットワークは概念間の関係をシンプルな図(グラフ構造)で表現するものでした。意味ネットワークを利用することで簡単な自然言語理解文章生成が実験されました。ただし、今日の言語モデルと比べるとかなり限定されたものではありました。

一方で、70年代に登場したエキスパート・システムであるMYCINは、細菌感染症の診断と治療の推奨を行うための推論の機能を持っていました。ただし、初期のエキスパート・システムは単純な推論やルールしか扱うことができなかったのも事実です。

問題は、大量の専門家の知識を矛盾なく蓄積し、推論などの処理を効率良く行うことが簡単ではなかったことです。意味ネットワークは概念間の関係をグラフ構造で表現できましたが、必要なのはさらに体系的に知識をまとめ複雑な行動選択や推論を実行できる仕組みでした。

そこで今回紹介するフレーム理論オントロジーが登場します。

1974年にマービン・ミンスキーによって提唱されたフレーム理論は、特定の状況やコンテキストに関する知識を「フレーム」と呼ばれる構造体で表現し、それを基に予測や推論を行う方法です。

また、1993年にトム・グルーバーによって提唱されたオントロジーはより体系的に知識を整理するものです。専門的な知識や複雑な関係を整理するためのルールや制約が含まれ、記述のための専用言語も存在します。そのため、より高度な知識表現と推論が可能になります。

もともと、「オントロジー」(Ontology)という言葉は、哲学で使われていました。ギリシャ語のonto-「存在」と-logy「学問」が語源です。

ただし、ここでの「オントロジー」は情報を体系化する文脈で使われており、概念体系といった意味を持ちます。

フレーム理論やオントロジーはエキスパート・システムの発展に大いに貢献しました。

なお、オントロジーを提唱したトム・グルーバーは、2007年にSiri Incの共同創業者になり、デジタル・アシスタントのソフトウェアを開発しました。後の2010年にアップルがSiri Incを買収しiOSに組み込んだのは有名な話です。


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