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言語AIの進化史③エキスパートシステム

前回は、初期のチャットボットであるイライザ(ELIZA)に注目しました。

イライザによる理解は、ユーザーが入力した文字列からのパターンの認識によるものでした。また、イライザによる応答は、パターンに対応するテンプレートにユーザーからの入力を当てはめるというルールベースの手法によるものでした。

その仕組みは単純でも、上手に設定されたスクリプト(パターンとテンプレート)によって、人々を魅了する力がありました。特に、心理療法士のように振る舞う「DOCTOR」スクリプトが有名で、ユーザーの入力を質問形式で返すことで、会話を続けることができました。

しかし、対話の表面的な流れを維持するだけで、人々に知性を感じさせることができたという意味では、真の知性は会話だけでは測る事はできないことを示唆しています。イライザが人工無能と呼ばれるのは、実際には言葉の意味を理解しているわけではないからです。

これは、会話から知性を判断するチューリング・テストが、機械の知性を評価する一つの方法に過ぎず、真の知性を完全に評価するには不十分であるということを示しています。なぜなら、人々は対話の内容よりも、その表面的な自然さや流れに影響を受けやすいからです。

むしろ、人々が会話に求めているのは知性ではなく、共感や理解なのかもしれません。それが大きな割合を占めていることはおそらく確かでしょう。

だとしたら、知性はどこから来るのでしょうか。

我々が知性の要素として思い浮かべるものの一つに、「知識」があります。専門家は多くの知識を有し、そして駆使します。専門知識を蓄積して利用し、専門家(エキスパート)のように振る舞えたならより知性に近付くのではないでしょうか。

このアイデアを土台に、1960年代頃から登場し始めたシステムは、今日では「エキスパートシステム」と呼ばれるものの先駆けです。


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