何故、研究をして学会に投稿するかという話
『論文投稿のモチベって、どういう感じなんですか?』
無線通信の実験を手伝ってくれた、若手から飛んできた素朴な疑問です。
※この記事では、論文(査読付き原著論文)に限定せず、筆者がなんらかの研究をして、学会に投稿/発表するのは何故かについて書きます。
背景と前書き
知人が委員になっている学会の研究会で、発表してと頼まれて、
3週間くらい必死になって、無線通信の性能評価をして、原稿を書きました。
今回、やってみた研究は
・わりと締め切りまでの日程が厳しい
・受注している仕事ではないので、直接的な利益は生まない
・力を入れれば入れるほど、担当業務が遅れる
・ある程度、業務時間外にも研究を進めないと間に合わない
・ちょっとした治具みたいなものは、自費で負担することもある
といった感じで、どちらかというと、やらない方が無難な日常が送れます。
後輩の疑問への回答を考えていて、色々な理由が書き出せたので、メモがてら貼っておきます。
※以下は筆者の個人的なモチベーションなので、一般論ではありません。
電子情報通信学会などの、工学系の学会&研究での経験で書いています。
他分野だと全く当てはまらない可能性があります。
①日常業務で実績のアピールに役立つって話
所属している会社では、研究者またはエンジニアを相手に、なんらかのコンサルティングとか、データ分析とかソフトウェア開発などをやっています。
仕事をする際には、専門家として頼って貰える関係になることが、理想だと考えています。
専門性とか経験のアピールとして、学会発表の実績はわりと有効だと思っています。
・web検索とかに引っ掛かるので、先方が見つけてくれる可能性がある
・○○については、××の研究で過去にやってますよと伝えられる
・専門的っぽい雰囲気がある
※査読のない研究発表は誰でも出来るものなので、○○に取り組んでます、経験はありますってアピールくらいまでです。
ソフトウェアの受託開発のみをこなしている場合、
『過去に似た案件で、開発を担当したことがあるから詳しい』
という状態にはなるとは思うのですが、
・web検索とかに引っ掛からないので、こちらから伝える必要がある
・具体的な内容は守秘義務で伝えられない
のあたりでややアピールしにくいと思っています。
②単純に研究をする作業が楽しいって話
技術系のことで遊ぶのが好きな特殊体質なので、日常業務と違うことをたまにやるのは、わりと楽しいと感じます。
・普段、無線機の実機で実験する機会がなかなか無いので、楽しい
・プロジェクトに紐付かない、ソフトウェア開発は楽しい
・自己満足でやれるデータ分析は楽しい
・新しいもの触って、よくわからない謎を解明してみるのは楽しい
・成果を文章と図にして、まとめるのは楽しい
③学会の場が楽しいって話
以下は主に、研究を学会で発表をする場合。
・自分の研究成果については、世界で自分が一番詳しいので、とっておきの話を披露するプレゼンが出来るの楽しい
・その分野自体については、めっちゃ詳しい研究者の方々と質疑&場外乱闘で意見交換するの、めっちゃ楽しい
・議論を経て、学会で会う仲間が増えていくのが楽しい
・学会に定期的に参加して、活発に活動してると、セッションの座長を依頼されたり、専門委員に呼ばれたり、課外活動イベントが増えて楽しい
・勝手にライバル認定してる、国内/外の研究グループに偶然遭遇すると楽しい
・自分の研究内容を引用して、新たに研究をはじめたライバルとかに会うのが楽しい
④実績とか賞とかのアワードが増えてく自己満足の話
研究の発表リストとか、学会賞の受賞リストとか、その辺りが徐々に増えて積み上がってくのが、RPGのLv上げみたいな感じで、わりと楽しいです。
小さな承認欲求が満たされていきます。
①と同じですが、実績リストを作っておくと、会社などでの昇格試験とか、他者に実力を判断される場で使えて、わりと便利です。
⑤学会の開催地に旅行出来るのが楽しい
オレ、タニンカネデ、ガイコクイキタイ。
ジッセキアル、イッテクル、イイ?
まとめ
以上を整理して一言で書くと、
『ちょっとした苦労&出費』 vs 『個人的に楽しいと思える経験をしつつ、承認欲求が満たせて、たまに人生で役立つ実績リストが出来る』
の損得勘定で、後者が勝つというだけの話。
まとめてみると、しょうもないですね。
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