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Obeah〜カリブに伝わる黒魔術(1972) 前編

https://www.nytimes.com/1972/09/10/archives/obeah-is-a-fact-of-life-and-afterlife-in-the-caribbean-obeah-a-fact.html

Obeah。ジャマイカ音楽のルーツを調べる際にちょくちょく出てくる言葉です。

検索してみると日本語皆無、英文記事しかありませんでした。

この際だから訳します。 

ちなみに読み方がわからなかったのでObeahについての動画をYouTubeで見つけて自分の耳で確認してみると、「オベア」又は「オビア」というような発音でした。

 ジャマイカにて、とある危篤の女性が夫に対して "子どもに辛い思いをさせないでくれ、もしそんなことがあったら化けてでてやる" という警告をした。
その後、彼は再婚して第2の家族を持つことになった。しばらく経ったある日、死んだはずの前妻が白いドレス姿で家の前に立っているのを通りがかった釣り人が目撃した。
それは息子が再婚相手に無下に扱われないようにするためである。実際に前妻の意思を汲んで生活したところ、幽霊はいなくなったそうである。
 これがObeahである。Obeahはあまり公にはならない。しかしObeahは西インド諸島の各地に根づいており、ObeahmenはObeahを生と死、両方に効果があるものと考えている。
例えば、ライバル企業に対してObeahを使えば、ライバルの事業が潰れたりするようなこともあるという。
 科学の進歩は人々を月まで連れて行ってくれるかもしれない。しかしこの魔術は人の生死を操る魔法なのだ

上の地図の赤い文字が西インド諸島と呼ばれる地域です。中米と呼ばれる場所ですね


 Obeahは数世紀前に奴隷として連れてこられたアフリカ人が作り上げた。
キリスト教の儀式とカリブ人が受け継いできた植物学の知識が織り交ぜられている。
 現在、法律上ではObeahは違法である。よってObeahmenは法の目をかい潜るために森林地帯でひっそり暮らしている。
彼らは謎の言語を操る。
 ObeahとVoodooは別物である。Obeahは宗教ではなく、礼拝や集いなどもない。
obay'foという単語は「魔法使い」を意味し、西アフリカのobiという単語は「魔術」や「呪物崇拝」という意味をもつ。
 西インド諸島の穏やかなマインドはjumbieeを祓うために身に付けるなにかによるものである。

jumbieeとはカリブに伝わる悪意を持った霊魂や幽霊のことだそうです(Wikipedia調べ)

画像検索すると竹馬に乗った道化師のような画像がたくさん出てきました

 資料によると、西インド諸島で奴隷に作物を作らせて巨万の富を得ていた商人に対して、Obeahは働きかけた。
奴隷はアフリカから船で連れてこられ、言語、文化、宗教を奪われた。そんな中で黒魔術は彼らが自らを保つためにすがりついたものだった。
もしかすると黒魔術発達した理由は農場主に復讐するためだったのかもしれない。
 農場主はアフリカのドラムを禁止した。奴隷たちがドラムで反乱を企てるためのメッセージを送り合うことを恐れたからである。
 当初、農場主はObeahのことを単なる珍しい迷信としか考えてなかったし、奴隷たちがお守りやハーブを首の周りに付けるのを禁止していなかった。
しかし農場主たちは最終的にObeahがとんでもないものだと知ることになった。
「Obeahにやられた。俺は死ぬ」こう呟いた奴隷は身体には一切症状が無いにも関わらずみるみる痩せ細っていった。
当時最新のヨーロッパの薬も彼には効かなかったという。
17世紀から18世紀の奴隷制の時代に"Shadow-Catching"と呼ばれていた儀式がある。Obeahmanの呪文に関する研究によるとその儀式には猫の耳と墓の土、乾燥させた植物、そして人間の髪が使われるそうだ。
魔術をかけられた者は自分の影を奪う敵がいると信じるようになり、最終的には死に至る。
 農場主はObeahを脅威と認識した後にObeahを禁止し、Obeahを利用する者は死刑としたがObeahを止めるのは不可能であった。
自分がObeahmanに呪われるかもしれないという恐怖心から誰もObeahmanの不利益になる証言をしたがらなかったからである。
不可解な死の連鎖は終わらなかった。
 魔女狩りは300年前に起こっていたことあり、人々はそんなことはもう起こらないと思っていたかもしれない。しかしObeahが力を持っていることは事実だった。
 Obeahは悪運から身を守ってくれる働きもある。これは単に人々がそう思っているからではなく、圧倒的な植物学の知識が裏付けている。
ハーブの専門家によると、ある植物のエキスや、樹皮のお茶、ベリーの油などは使い方によっては人に害を与えることができるという。
 しかしObeahは善のために用いられることもある。Obeahの薬はポジティブな気持ちにさせる匂いを発し、中毒性は全くない。この薬は船に積まれ、船乗りの心を癒している。
他にも作物のための薬や、上司から給料を上げてもらうための薬、弁護士が法廷での舌戦に勝利するための薬、悪魔を祓うための薬など様々な種類がある。
 Obeahのプロは適切な料金を貰い、合理的、科学的に依頼をこなす。
家にjumbieを呼び寄せたり、婚約を破談にしたりなど。これらは蜘蛛の毒や、汚染された水、黒いろうそく、墓の土などを用いる。
 一方でプロに依頼をする余裕のない人々は自分で呪いを行う。
敵の足跡を見つけて、そこの土を集める。次に、集めた土に塩を加えて壁に吊るす。
そして吊るした土にピンで突き刺せば、敵はどこにようと即座に手足が腫れ上がり、痛みが襲うのだという。
 もし作物を作っている畑を守りたいなら、まずその土地に焼いたパンノキの実をハラスの干物の中に入れたものと、じきに腐る作物を置くこと。それらは盗まれるために設置する。なぜならそれらを盗んでいった人や動物は5分と持たずに棺桶行きになる。
カカシや注意書きよりも絶大な効果があるという。

以上が前半です。私自身、黒魔術などには全然詳しくないので、その界隈でObeahがどういう位置づけなのかはわかりません。

しかしここで書いたObeahの具体的な手順はマネしないでください。怖いので。

あくまでジャマイカ音楽の理解を深めるために訳しています。

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