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Phil Woods インタビュー(1981)後編

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イ: 動物の鳴き声はサックスの構成じゃない。

P: 彼らはパレットの一部であり、それ以上のものじゃない。おれは楽器で咆哮するのが好きでそんなサウンドを作るのも好きだ。
でももしおれが夜通しそれをやっても、自分に飽きちゃうし、オーディエンスも同じだと思う。そういうスタイルは自分のモノじゃないってことがわかるんだ。そういう演奏をしょっちゅうやって楽しんでるプレイヤーはいるけど、ジリ貧だぞ。
おれは幅広いパレットをやるのが好きだ。ここからいくつかやって、あっちからいくつかやってって具合に何かを拝借してって具合にさ。わかるだろ?コントラストはこの音楽の要素だ。熟考に至らないことがあまりにも多すぎる。

自分自身の音楽を確認するキーみたいなのがあるから、違った調性を演奏するんだ。多くのリスナーはそれに気づかないかもしれないけれど、心理的なものがある。ひとつのドローンや断続的なバレージにそれはある。それはとてもプレイヤーを疲れさせるんだ。聴き心地だったり、テンポ、調整をすぐに左右するんだ。それに人々に心理的な影響を与えるよ。運が良ければ音楽に楽しさを加えたりね。これらの価値はいつもおれらと共にあると思う。それを投げ出すことはできないよ。

イ: そのエクササイズの目的はオーディエンスの感情を揺さぶることじゃなくて、コミュニケーションを図ることだよね。

P: Yeah, 彼らがバンドの演奏を聴きに来るのに5, 6ポンドを払ったら特にね、ミュージシャンはオーディエンスに迎合したがらない。ミュージシャンは自分のことをやって、客が金を払って自分たちのグループの演奏に足を運ぶことを望むんだ。3時間に金を払って楽しむ人もいる。これがみんなが味わう大きな世界なんだ。
少しヘビーな側面もあると思う。みんながそれに気が付いているかはわからないけどね。おれのカルテットはいつもアコースティックで演奏する。おれらはマイクやそんな類の機器を使わない数少ないグループの一つなのさ。

イ: 全くマイクを使わないの?

P: そうだよ。ベースアンプだけだ。今までずっとそうやってやってきた。大規模な会場で演奏するレアなケースだったらもちろん使うよ。アウトドアとか5000席あるホールとかね。でも可能な限り使わないようにしている。全体の95%はそうやってアコースティックにこだわっている。関係者は少しナーバスになるよ。だって彼らはマイクとかめっちゃ使うからね。サウンドマンとか全員だよ。このグループはやってのけるんだ。秘訣はドラマーの特徴にもある。Bill Goodwinは音楽的なドラマーなんだ。

イ: 多くの場合、ボリュームはオーディエンスに聴かせるためにあると思うんだ。音楽の内容は無視してさ。

P: 賛成だよ。ヤワなボイスじゃ聞きづらい。重要な言葉だと思うぜ。

パフォーマンス前のウォーミングアップの際におれは言わなくちゃいけない "リード、しくじんなよ。" ってね。気の緩みと言う汚染は最終的に損害になる。汚染してしまったら竹すらも生えることができないぜ。口喧嘩は悪い事態を招く。
今はいいやつを見つけるのが難しいよ。ボックスからそれがゲットできるよ。わかるか?8ポンド払ってさ。

イ: だからMike Melilloはアコースティックピアノしか演奏しないの?

P: アコースティックだけだね。多分特別な2つのプロジェクト以外はエレクトリックピアノは絶対に使わないよ。本質的なアコースティックカルテットなんだ。まるでかつての売春宿にいるみたいだよ。

イ: あなたはサックスに付いてくることを認めてないの?

P: Oh, 彼らは彼らの持ち場があるけど、バンドがツアーしてたり仕事をしてるとき、カルテットと一緒じゃないんだ。レコーディングプロジェクトのためにね。「Crazy Horce」プロジェクトでおれらはすべてのツールを使ったよ。コントラストとしての音楽的な方法のひとつさ。
もう一度言っておくとおれは電子楽器を使うことは無い。エレクトロを乱用したりしない。心血を注いだアコースティックのこだわりを不明瞭な動機ですぐに変わることになるからな。スペシャルなプロジェクトでなければダメだ。おれはこれについては完全にシャイなんだよ。

イ: あなたは今まで何年間もジャズシーンにいるよね。あなたは自分のキャリアに幸せを感じる?それとも後悔がある?

P: 33年間だ。おれは本当に良い時間を過ごしているよ。すべてにおいて後悔などあろうはずがない。
若いころはジャズサックスプレイヤーになりたかった。大好きな仕事をやって金を貰うことになっておれはめっちゃラッキーだと思う。地球上には不幸せな仕事をやっている人がたくさんいるんだからな。おれが好きな数少ないマイナーな音楽もあるんだ。おれにのしかかってくるものはそんなにシビアではなかったよ。若気に至りだね。

イ: あなたがツアーをしなくなったときがあったね。そのときあなたはツアーを望んでいたの?シーンにカムバックしたことに喜びはあった?

P: 間違いなくあったよ。完全じゃないけどおれらグループは活動しているしオーディエンスもいる。これ以上質問することあっか?今おれは自分の著作権を守ったり出版権のディテールを整理することをやっている。これらはちょっと時間がかかるんだ。もしおれが後悔してることがあるとすれば自分のビジネスセンスの至らなさかな。音楽センスではないんだけどビジネスに関しておれらはバカなんだ。すべてをきちんと片付ける時期なんだ。一度やってしまえばこの先は安泰だと思う。

素晴らしいことは自分自身の運命をコントロールしたり、プロデューサーがおれに指図するのをやめさせるためにある。おれはすべてのナンセンスと対峙してきた。

イ: あなたは自分のマネージャーでもあるっていうのは本当?

P: おれらにはブッキングエージェントがいるけど、マネージャーはいない。必要ないんだ。サウンドマンも必要ないぜ!

イ: あなたは将来をどう考えている?

P: バンドでもっと旅をしてるな。壮大な夢は見てない。おれはずっと音楽をやってはいないだろうな。だけどこの先5年から10年はやり続けるよ。もっと作曲して少しツアーを減らすかな。家で過ごす時間をもっと増やしたりな。もっと曲を書いたり教えたりしたいな。でも常にツアーできていたらいいな。過密スケジュールとかじゃなくてさ。そんなにハードに働かないでたくさんの金が手に入るようにしたいだけなんだ!クリエイトに使う時間をもっと欲しい。ツアーって家族がいなくてちょっぴり寂しいんだ。昔の女とか恋しくなるし、人肌恋しくなるのさ。だけど不満ではない。

最終的におれは今の音楽活動の規模をスケールダウンさせる。おれは20歳じゃないんだ。40歳とかそれ以上だぜ?おれは自分の心配をしたいんだ。いい歳の取り方をするために生きるのさ。長く新譜をリリースできていればいいんだけどね。

イ: レコーディングのフィールドで間近控えていることはある?

p: Yes, シンセサイザーとのプロジェクトがある。おれらはそのプロジェクトの真っ最中さ。おれは許可を貰いに申請したよ。協奏曲とアルトの曲を書きたいね。いつかジャズのSummer Schoolもやりたい。ささやかな夢さ。だけど少し努力をすればいつか実現できると思っている。なるようになる。おれがやりたいことはそんな感じ。ツアーが終わったらジャズ方面で精力的に活動したい。ジャズを教えることが出来たらベストだね。それから気持ちよくプレイできる曲を作りたい。今は最高に楽しいよ。おれはみんなのために演奏することを愛している。止めないぜ。

イ: あなたは去年Londonに引き連れてきた5人編成のグループを維持しているの?

P: Yes, これは安定的なグループだよ。ずっと忙しいよ。Steve Gilmoreがベース、Bill Goodwinがドラム。彼らはおれと長年やってきた仲だ。おれらのグループのピアノを担当しているHal Galperは6年間一緒だね。素晴らしいトランペットプレイヤーのTom Harrellをグループに迎えることができたよ。彼とは4年間一緒。可能であればいいミュージシャンと出会ったらグループに引き入れるようにしているんだ。

イ: 7年前にとあるインタビューで、僕たちはクラリネットについて議論したんだ。そのときにあなたが過去に演奏していたのを思い出したよ。その一年後ぐらいにあなたがアルバム3枚連続でクラリネットを演奏して素晴らしい効果を生み出していたのを聴いてすごく満足したんだ。今ではアルトでその倍素晴らしいことになってるようだけどね。

P: リズムセクションの顔を笑顔にさせるぜ!おれはいつも再びクラリネットを演奏することを考えているんだ。
おれらがグループにギタリストのHarry Leaheyを招いたときに、ソプラノが良い働きをしたんだよ。だからおれはいくつかの曲でいつもの二倍集中したのさ。今クラリネットは良いと思う。なぜならおれらはDukeの曲をミュートトランペットでたくさん演奏してるからな。クラリネットとイケイケなリズムセクション、ソプラノはすこし厚かましすぎるね。あれはおれらが今やっている音楽とはちょっと違う感じだった。楽しかったよ。どうにか曲のカラーを変えるために曲をやると、そういう今のグループとは違うサウンドが鳴るんだぜ、良い感じだろ?

おれは自分のことをアルトサックスプレイヤーだと思っている。クラリネットはおれの主楽器じゃない。おれはクラリネットでやっていけるけどそれでセットを維持することはできなかったんだ。クラリネットの曲とかね。すぐに台無しにしてしまうんだ。おれらがやっているアンサンブルの一部はDuke Ellingtonの「Heaven」。その曲ではトランペットとクラリネットと共にarco bassを演奏したよ。でもただのアンサンブルであることに変わりはないよ。そこではおれは即興演奏をやってない。それが出来ておれは幸せだ。

イ: あなたが現在取り組んでいるレコーディングは何?最近のやつ。

P: おれらはBlack Hawkでレコーディングしている。Black HawkっていうのはHerb Wongの新しいレーベルね。おれらカルテットがやった他のレコードはイタリアの2枚のレコードだけ。アメリカで手に入れるのは難しいぜ。「Integrity」って言うアルバムな。おれは世界を視野に入れている。アルバム「Heaven」はおれらにとって最初の正真正銘のアルバムだ。いろんなプロモーションが行われているからみんなが手に取ってくれることを願うよ。おれに言わせればこいつはカルテットの活動がアメリカから飛び出した唯一の例なんだ。CDにもコンパイルする予定だ。これからいろいろなビデオプロジェクトをこなさなきゃいけない。全部最近決まったことなんだけどね。おれはただ自分たちのことをやり続けようとしてるだけなんだ。

イ: あなたがアンプを使わなかったパフォーマンスはずっと見てるよ。このことに関して今のあなたはどういう考えを持ってるの?

P: 音楽と会場によるね。クラブではまず使わないよ。もし自分のサウンドがバンドスタンドから客まで届けることができないなら、それはホーンがダメになる時間なのさ。リズムセクションの連携だ。プレイヤー全員がうまく機能するように競争心を持たなきゃいけないよ。おれはオーディエンスが騒がしくないことを信じている。音楽はクリアでラウドだと思っているんだ。少なくともおえらがやる音楽はな。
楽器を使う人がマイクを足蹴にするのはお勧めしない。実際悪くないアイデアなんだけどね。とくにシンガーはマイクが大事だと思うよ!見ているものは得るものだからね。演奏してる人たちを見ているときサウンドは彼らから出ているんだ。音の大元からダイレクトにサウンドをゲットするってこと。ジャズの音楽はそれが顕著だ。

パフォーミングについて考えているとき、人々へのサウンドをきちんと計算するべきだ。それがおれらのやっていることのすべて。たまにおれらはピアノに力を入れなくてはならなくなる。でもかなりレアなケースさ。

イ: 現在のサックスの立ち位置はかなりカリスマティックな楽器のように思える、たくさんの若いミュージシャンがサックスを演奏しているね。彼らのアプローチにバラエティを感じる?

P: おれはツアーとかで忙しいから、そんなにたくさん音楽を聴く時間が無いんだ。すごく良いサックスプレイヤーが何人かいることは知ってるよ。良い若いプレイヤーは両手で数えるくらいだと思う。昔と変わらず彼らはNew Yorkに出てきている。そこには何の問題もないよ。

イ: 一時期、たくさんのColtraneの弟子たちが後を絶たなかったね。

P: Yes, 10年ぐらい前だっけ?今でもその流れはあると思うよ。どう考えてもそう思えるんだ。音楽ビジネスを生き残るために彼らはただの模倣から抜け出さなければいけない。今はDave Liebman、Mike Brecker, Dick Oates, Eric Kloss, Ronnie Cuberらのような素晴らしいミュージシャンがいる。Al Cohnのサウンドは今でも美しい。前に彼の演奏を聴いたんだけど。ラウドでホットなサウンドで良かったよ。まるで上質なワインのようだった。

イ: 少人数編成のグループじゃなくて他のことにチャレンジする予定は?

P: とても稀だけど、クインテットを楽しめなくなることがあるんだ。スタジオに入る予定はない。スタジオ仕事は十分やったからね。

イ: 僕はあなたがRichie Coleとの2アルトセッションのようなことをやったのか気になっていたんだ。

P: 8年前の彼のアルバムに客演で参加したとき、わかるだろ?最近Conte Candoliと「Old Acquaintance」っていうアルバムをやったんだ。これは彼のアルバムで、おれはゲスト。こういう感じのこと?この質問は大編成のことを想定してたと思ったんだけど。
(このプロジェクトは)他の状況に向けて準備していたものだと思う。おれが一曲やったKurt Weillのアルバムがあった・「Lost In The Stars」のCarla Bleyのアレンジをやったんだ。でもそれは2年前のことだ。おれは最近クインテットに集中しているだけなんだ。


イ: あなたは何年か前にとても作曲にいそしんでいたね。Londonでレコーディングするビッグバンド曲をいくつか作っていたね。「I Remember」っていうLPの収録曲をね。

P: おれはある意味、常に曲を作っているんだけど、あのときはそういうことはやっていない。おれが唯一書いた曲はクインテットのための曲だ。

イ: 現在のアメリカの一般的なジャズシーンについてどう考えている?いくつかのクラブが閉店したって聞いたよ。

P: New Yorkはスウィングしていると思うよ。ジャズが再び注目されていると思う。おれらはどうにか忙しさを保っている。クラブとコンサートの割合はちょうど半分半分ぐらいだね。おれらがクラブでやるときは大体コンサートと一緒だよ。ヨーロッパでもそれと同じことをやっている。こっちでは会場はクラブなんだけどね。彼らはクラブの演奏をずっとコンサートのように扱っている。これはとても素晴らしいことだよ。集客もNew Yorkでのそれと変わりない。

イ: あなたが演奏してるLondon Symphony Orchestraが参加したPatrick Williamsの「An American Concerto」は個人的にとても楽しめたよ。1980年だったしMichael Legrandによる作曲のオーケストラショーケースの次のアルバムだよね。

P: 基本的に同じ流れだよ。Yeah. おれは大編成で4,5枚のアルバムをやったよ。憂さ晴らしみたいなものさ。当時これらのアルバムはビジネス的にも上手くいった。良い感じだよ。金がかかったプロジェクトだったから今はもうできないけどね。今はこういうレコードを買う人も少ないだろ。


イ: イギリスでのあなたのライブに足を運ぶ人のようにみんなもっと頻繁にライブを楽しんでほしいと心から願うよ。Ronnieのバンドが7月にイギリスに来た週は長期休暇の後だったんだ。

P: さらにもう一週間滞在するのが大好きなんだ。ビジネスが良い感じだったからね。だけど13年や14年前からさ。おれはEuropean Rhythm Machineとやったよ。それは72年らへんに出たアルバムだと思う。12年位前ね。Yes, 彼のバンドはジャズを大いに見失っている。おれらは12年前もこういうことをやるのが好きだし、12年後もそういうことをやっているのが良いな。

以上です。

序盤の訳が分かりづらくなってしまってすみません。

サウンドは体から発している(特にジャズは)からマイクは極力抑えるという考え方がおもしろいと思いました。

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