早すぎた男

あまりにも早すぎた。どうしていつも置いて行ってしまうの。

彼はいつもそうだった。

まるですれ違うかのように、同じ方向を向いていても距離は遠のくばかりで。

どれだけ追いつこうとしても、彼は一番にゴールして笑ってる。そして私に笑顔を向ける。「追いついみろ」って。

でも、もう追いつけないみたい。あなたと私じゃ次元が違うから。住む世界が違うから。

もう、会えない。あなたは、いつもみたいに、はやく、この世界を去ってしまったから。

まだ、泣いてる顔も見たことないのに。早すぎるあなたはいつも余裕そうに笑って、そして余裕そうにこの生命のゴールを終える。

泣いてる顔も見たかった。また応援したいな。よーいどんで始まるこのレースに、私の声を乗せて連れてって欲しいな。あの表彰台に。お疲れ様。

ウサインボルトへ。   視聴者Aより

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