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回り回って白米/人生さいごに食べるもの
「最後に食べるなら、白米かな」
そう言ったのは母だった。
いつの日だったか忘れてしまったが、最後の晩餐に何食べるか、という話を家族でしていた時のことだ。晩餐というからには、やっぱり贅沢なものがいいんじゃないか。それならお寿司か、焼肉かな。そんなふうに僕らは話していたけれど、母は白米の一点張り。その理由は、と聞くと、
「結局、白米が1番美味しいと思うのよね」
とのこと。美味しいものは人それぞれだよね。話はそんなところに着地したような気がする。
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僕だったら何を食べたいかしら。くまさんの、「人生さいごに食べたい物のエピソード」という企画を知って、考えてみる。贅沢にお寿司や焼肉もいいけれど、
僕だったら、最後にはやっぱり好きなものを食べたい。
餃子とビール。羽付きのぱりっとしたやつ。噛むと肉汁がジュワッとしていて、それをキンキンに冷えたビールで流し込む。最高。オーソドックスな豚肉のが1番好きだけど、時々エビとか、青葉入りとか、変わり種を挟むのも悪くない。
想像すると、よだれが出てきそうになる。うん、やっぱり餃子とビールが良さそうだ。と思ったけれども、ちょっと待てよ。餃子とビールが最高なのは間違いないけれど、その2つを食べちゃったら僕はきっと
もっと、生きたくなる。
こんなに美味しいものを食べておいて、もう何も食べれないなんて。それはきっと、お寿司でも、焼肉でも一緒だと思った。美味しくって、パワーのあるものを食べたあとって、満ち足りて、また明日からも頑張ろうって気持ちが湧いてくる。そんなものを最後にはできない。だって、最後なのに、生きたくなったら切ないじゃないか。
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じゃあ、何にしたらいいんだろう。そのとき、母のセリフが浮かんできた。
白米、か。
日本人の主食なだけあって、僕もご飯は好きである。好きなものっていうところで、まずは1ポイント。
それから、想像してみた。白いご飯を、甘みを感じるくらいによく噛んで食べる。よく噛んでいる時間は、これまでのことを思い出すのに、もしかしたらぴったりなのかもしれないと思った。最後の時に向かって、静かに収束していくような、そんな感じがする。
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母さんのチョイス、悪くないやん。何年か振りに、あの日の母の選択に共感する僕だった。
人生さいごに食べるなら、僕は白米を食べよう。
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ピカリさん経由でくまさんの企画を知りました。
https://note.com/kuma_san_note/n/n9c5668fb6a5b
個人の企画っていうのがあるのをついこの間知ったばかりですが、これからもちょこちょこ参加して行きたいです。
くまさん、素敵な企画をありがとうございます!