人は自分で試練を選んで生まれてきてる気がします。

SNSでよく見かけた言葉「親ガチャ」。
子供は親を選んで生まれてこれない、だから生まれる時にガチャを引いて良い親に当たったらラッキー、悪い親ならアンラッキーという意味らしいです。（間違っていたらすみません）
「国ガチャ」という言葉も目にしました。
生まれてくる国によって運命が随分変わる。これは理解できます。
だって、例えば今の時代の日本に生まれてくるのと北朝鮮に生まれてくるのとでは随分運命が変わってくると思います。

私は幼さ故に狭い視界で自分の環境を嘆いたこともありましたが、虐待されて育った両親の幼少期を知り、夜も眠れないぐらいショックを受けた事があります。
父親は絵を描く人だったのですが、受賞作品を見せてもらった時に、その空虚感の中に塗りたくられた絵の具、荒々しい筆先の跡になんとも言い難い苦しみと悲しみを覚えました。
私が平和な絵を描き続けたいと思うのはその反動からかもしれません。
絵は、父親にとっては苦しみを表現する場所。
私にとっては喜びを表現する場所です。
幼い頃から絵を描くのが好きだった私のこの血は確実に父親から受け継いだものです。
とても感謝しています。

私の幼少期は両親が不仲だったし機能不全家庭だったけど、二人とも私の身体に傷ひとつつけませんでした。
母親は愛情を注いでくれて、父親は金銭的な援助を続けてくれました。
今私が自分の息子に虐待という恐ろしい行為をするわけがないと思えるのも、それは両親が負の連鎖を断ち切ってくれたからだと感謝しています。

私の両親は確実に、私よりも厳しい試練を背負って生まれてきたんだと断言できます。

また、小学生に上がった頃、下駄箱の前に張り出されたコンクールから返ってきた絵の受賞作品を見るのが大好きでした。もちろん張り出された自分の絵を見るのも嬉しかったですが、いつも並んで張り出される一学年年上の男の子の絵にとても惹かれていました。
画面いっぱいに緻密に描かれた色んな人たち。笑ったり、怒ったり、遊んでいたり武器を持っていたり。画用紙一面がひとつの世界のようでした。
彼は小学校内にある特別支援学級に通っていたのですが、彼から見える世界はこんなにも広くて、鮮明で、楽しい事も苦しい事もある。子供ながらに大感動して、彼の作品が張り出される度に毎日見入っていました。

彼は足が悪く上手く歩く事が出来ず、知能障害もあったと思われます。子供の頃の記憶だし学年も違うので詳しくは分からないのですが、それでも彼の世界は本当に素晴らしかったです。
私は彼の絵によってより絵を描くのも見るのも大好きになりました。
彼はきっと、自分で試練を選んで生まれてきたけど、それを乗り越えて更に人々を感動させてくれる。私が人生の早い段階で尊敬してた人の一人です。

大人になってドイツに住んで、語学学校に通っていた頃、いちばん仲良くしてくれた10歳年上のタイ人の女性がいました。
彼女は美しく、柔らかい物腰でいつも私とコミュニケーションを図ってくれました。
英語も話せるし、再婚相手のドイツ人の旦那さんとも仲良しでとても微笑ましかったです。
ただ、彼女はなかなかドイツの永住権がおりないと嘆いていました。
私の永住権がおりたのはドイツに移住してから１年目です。ドイツ人の夫との婚姻証明書、翻訳済みの戸籍謄本、当時移住に必要だったドイツ語レベルA1の習得証明書。それを役所に提出して永住権を得ました。ドイツ語の証明書なんて何もチェックされませんでした。
タイ人の女性はドイツに移住して３年が経過していましたが常にビザの更新を強いられていました。

他にも色んな国の方々と語学学校で出会ったのですが、日本国籍を持ってるということがどれだけ優遇されてるのかを思い知りました。

私は自分の生まれた境遇を嘆くのが恥ずかしくなってきました。
どれだけ恵まれてるのか。
この広い世界にある日本という場所がどれだけ優遇されてるのか。

私も沢山傷付いて泣いたりもしましたが、世界を見渡すと与えられた条件で、それを超越しそうな努力で前進している人達がたくさんいらっしゃいます。

私はそんな方々を深く尊敬しています。
そして見習って前進していきたいと思います。