見出し画像

みんな漏れなく死ぬ世界で生きている。


もし私の育った家庭が円満で、大好きな日本から離れなかったら出会うことのなかったライナーさん。
ライナーさんだってもし私がドイツに来なかったら「よい一日を!」って日本語で言う事もなかったと思う。
お客さんと従業員。
たったそれだけの関係だけど、ライナーさんは仕事上がりにいつも私が働いてるパン屋に立ち寄るんだ。
お昼過ぎに売り切れるパンも出てくるから電話予約をしてもらえたら予め取っておくことができる。
いつも石窯パン(Steinofenbrot)を予約してくれたライナーさん。もう声だけでライナーさんって分かるぐらいになってた。
あのね、殆どの人は名字で予約するのにライナーさんは「ハロー!ライナーだよ!」って電話口で名乗るの。面白いね。
ほんとうに穏やかな人だったんだ。

ある日突然居なくなる。
この世界ではある日突然人が亡くなる。

悩んで、泣いて、笑って、憎しみあって、慈しみあって、あんなに心を動かしたのにみんな漏れなく死ぬ。
なんでだろう。

ふと頭に過る。
もし、このまま年に1回一時帰国したとして、母と2週間~3週間過ごせるとして、じゃあ、あと何日母と過ごせるのかな?
私が実家から出たのは10代の終わり頃。

トータルで何年一緒に居れたんだろう。
この先も何年一緒に居れるんだろう。

何だろうね。
ライナーさんとお母さんが同い年だからかな。
無性にお母さんに会いたくなりました。


いいなと思ったら応援しよう!

きいろ
頂いたチップは一時帰国費用の一部として使わせていただきます。有難うございます。