田舎の車窓から
ヒカルちゃんがグループをおかしくしているから、マナミちゃんとユウコちゃんが反旗を翻すらしい。
先日電車の中で通話をしている人がいた。
私は結構それが気になったのだけど、私以外に乗り合わせた数人は誰も気に留めていない。
まるで私だけ異世界に迷い込んだかのように、渋い顔をしつつ聞き耳を立てていた。
非常識だなと思う反面、ヒカルちゃんが何をやらかしたのか、マナミちゃんとユウコちゃんは頑張れよと心の中で思った。
他人の会話というものは、情報量が少ないからこそ余計に気になるものだ。
それにしてもなぜ誰も気にしないのか。
そしてこの人も何故周りの目を気にせずに話し続けるのか。
ちらちらと見てしまうのは、どうやら私だけのようだ。
しばらくした頃、私の真向かいに座っていたふわもこ金髪ギャルが長い髪を耳にかけた。
耳には白いワイヤレスイヤホン。
思わずハッッッと声が出た。
イヤホンをしていたから、私以外気が付かないのだ。
よく見れば周りは皆、イヤホンをしている。
なんだ、走行音とイヤホンから流れる音楽で聞こえるわけがないのか。
と思ったけれど、ハッッッという私の声に合わせてギャルと目が合う。
いや、聞こえとるんかい。
どうやらノーイヤホンの私だけに聞こえる声ではなかったようだ。
リーダーに相談するために今夜みんなで食事に行くことも、聞こえている。
ピザが美味しいお店らしい。
どこだろう。
ピザ。
おしゃれなカフェやイタリアンの石窯で焼いたピザよりも、デリバリーのジャンキーなピザが好きだ。
ピザ食べたいなー、そうぽつりつぶやく。
ギャルが私を見る。
聞こえとるんかい。
ギャルと3席空けて座る部活終わりJKも私を見る。
いや、お前も聞こえとるんかい。