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亡くなった母は元気だろうか

私の母は、私が25歳のときに病気で亡くなった。

最後の2年ほどは入退院を繰り返す日々で、
母が家にいるとほっとして、
入院となると、父と2人きりの家はなんとなく空気が暗く、それでも気丈にふるまいながら(私も父も、お互いの前では殆ど涙を見せなかった)、毎日母のお見舞いに通った。

母が亡くなってもう数年経つが、
なぜか母を思い出すとき、

今なにしてるかな
元気にしてるかな

なんて、思ってしまう。

もう生きていなく、肉体もないのだから、
元気かどうかなんて問いはおかしい。
それなのに、今はどこか遠くに行っていて、たまたま長い時間会っていないだけのような、そんな感覚で思いを馳せてしまう。

足の脛にあったほくろや、
よく着ていたセーターの淡いピンク色、
読みかけの本を開いて伏せて置く癖。
記憶の中の母は、いなくなってもなお身近で、
生活感に溢れている。

母の死を受け入れられていない、
というわけではないと思う。
むしろ悲しみの渦中にいる時は、そんなふうに思えなかった。
亡くなって3年くらいは、夢に出てきたり、思い出して涙が止まらなくなることもよくあった。
今はそういうことはほとんどない。
母がいないのが、日常だ。

もうここにいない存在に対して、
おかしなことを思うこの感覚を
なんとなく、言葉で残しておきたかった。


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