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祖父江のいちょう祭りを観に行く

今年も祖父江いちょう祭りの時期になったので、向かうことにする。

金山駅から名鉄に乗って、一宮駅へ。電車にはうっすら暖房がかかっていて、窓からは灰色がかった雲が垂れ込めているのが見える。朝に少しだけ降った雨のためか、車内はなんとなくモアッとした雰囲気の空気。
一宮駅で、尾西線の津島行き二両電車に乗り換え南下。西側の窓から見える景色に大きな建物はだんだんと少なくなり、遠くに鈴鹿山脈(たぶん)が見えて来て、まだてっぺんに雪は積もっていない。建物のかわりに田畑のスペースが増えて来て、それからイチョウの木も増えてくる。
近くに揺られていたおじいさんがいちょうの葉の様子を見て「まだ緑だて!」と声をあげて、それに対して他のおじいさんが「文句言うなて」と応える。
今年は長く続いた夏と短い秋のため、緑から黄色になる前に枯れてしまう葉が多いと聞いていた。だから、一面の黄色、というのはあまり期待しないでおこうと思っていて、というか元々、このいちょう祭りによる町いったいのワイワイした雰囲気が好きで来たのだった。いいのだ。

祖父江いちょう祭りの中心地である山崎駅で下車。電車に乗っていた人の八割ほどがここで降りていて、みんな楽しみに来たのねー。降りてすぐの大きな広場にはいちょう祭りののぼりが立っていて、多くの出店が並んでいる。野菜とか、みたらし団子とか、焼き芋とか、地酒とか、もちろんたくさんの銀杏も。銀杏にはいくつか種類があって、食感などが違うらしい。広場の入り口にはそれを試食できるコーナーがあって、揚げ銀杏と焼き銀杏をそれぞれ二粒ずつ爪楊枝に刺していただける。むっちりしていて美味しい。

ぐるっと出店を眺めたあと、駅の西側へ。
きっとこういう祭り以外の日常はほんとに静かな町なんだと思う。駅の半径1km弱に飲食店はなく、家と、畑と、イチョウの木ばかりのエリアなのだ。そこに今日は多くの人がやってきていて、その人々相手に銀杏などを売る小さな机が道端にぽつぽつと出ている。少し歩くと大きなお寺があり、その前の広場も飲食スペースになっていて、お寺の境内からはきっとステージ企画だろう和太鼓の演奏の音が聞こえてくる。
豚汁と、鬼まんじゅうを買ってベンチでいただく。鬼まんじゅうには、さつまいもと、紫芋と、銀杏も入っていて具沢山だった。美味しい。
ほかに銀杏を使った売り物としては、銀杏きしめん(麺に銀杏が練り込まれているらしい)や、銀杏ういろや、銀杏つみれ棒、銀杏コロッケなどなど。銀杏って、味を吸ったりとかなかなかしなさそうだし、単品での美味しさが際立つから、どう食べ物に織り込むか工夫のしどころだなあ、などと思って眺める。自分の好きな銀杏といえば、がんもどきの中に入っている銀杏。

一息ついてまた町を歩く。
なぜここ祖父江にイチョウの木が多いのかと言うと、伊吹からおりてくる強い風を防ぐために植えられたのが始まりらしい。たしかに、背を高くしたイチョウの幹を見ると、不思議にごりごりとした形状をしていて、ちょっとやそっとじゃ倒れないぞという妖怪みたいな凄みが滲み出ている。心強い。
その強強なイチョウの枝には実がすずなりになっていて、その枝を銀杏農家の方が棒でグイグイと揺らし実をポタポタと落として、その実を地面の青いネットが受け止める。
果肉をどうやってとりのぞいて中身の種をピカピカに出荷するのか、は知らない。また調べてみよう。

駅周りをぐるぐる歩き回ったのち、川の土手の細い道を南に歩いた。道端の草も紅葉していて、ススキはふわふわにひらいていて、秋はいい季節。

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