生成AIを活用した新規事業をクローズドで検証している理由とプロダクトの手応え
クローズドベータ版で検証を進めているtoCプロダクトで、初めての売上が立ちました(めでたい)。
新規事業で初めての売上が立つ瞬間は何度経験しても感慨深いものです。
その余韻冷めやらぬうちに、プロダクトの現在の手応えと、まだクローズドベータで進めている理由を簡単に書き記しておこうと思います。
どんなプロダクトか
簡単に言うと、チャットで求人が検索できるサービスです。チャットや検索周りでLLMを活用しています。
詳細は過去の記事をご覧ください。
売上が立つまでの流れ
ド初期はできる限りコードは書かずにプロトタイプでの検証を実施。
チャットの体験設計をするためのUXリサーチは裏側で人がAI役を担って検証。
それと並行してLLMを使った開発のリサーチをエンジニアが準備。
ある程度チャット体験の設計が見えてきたら、プロンプトやコードを書き始め、α版を作る。
コードを書いてシステム開発し始めてからも、いわゆるMVPに集中し、nice to haveは後回し。
KPIでのシミュレーションに留めておき、キャッシュポイントのシステム開発も後回し。
VP検証とユニットエコノミクス検証の見込みが立ち始めたタイミングで、キャッシュポイントになる機能を開発。
もう少し具体的な立ち上げの流れは代表松本の記事にも書かれています。
立ち上げからこれまで、常に意識していることは「無駄なものは作らない」という点です。クリアすべきIssueをじーっと見極め、グサッと刺しに行くような心持ちでいます(意識の話なのでうまく実行できているかは別ですが)。
クローズドで検証を進める理由
まだ一般公開しない理由は、競合に見られたらまずいから隠しておきたいとかではありません(むしろ気持ち的には公開したいくらい)。
クローズドで検証をしている理由は次の通りです。
見栄えを気にしなくて良い。業界の人や知り合いに見られるとなると、少なからず見栄えを良くしたいエゴが出る。それはユーザーにとって本質じゃない。
データにノイズが入ることを避ける。良くも悪くもChatGPTや生成AIが絡むプロダクトは今フィーチャーされやすい。一時的なバズになり、瞬間最大風速が大きくてもプロダクトにとってのプラス効果が少ない可能性がある。
「スタートアップのプロダクト開発初期はコードを書くんだ。PRするな。ユーザーにフォーカスしろ」のようなスタンスがあるかと思いますが、上述の理由もそれに該当するかもしれません。
20代で新規事業を立ち上げた経験からの学び
今の新規事業チームは30代前後が多く、新規事業の立ち上げ経験を持つ人が多いです。
立ち上げの酸いも甘いも経験しているので、今回の立ち上げも腰を据え、虎視眈々と1つずつ歩みを進めています(笑)
私自身も過去に何度も新規事業の立ち上げに関わってきました。24歳の頃にベルリンに行って友人と開発したプログラミング学習アプリや、20代半ばに知人と起業して立ち上げたミールキットのサブスクリプションサービス、他にもメディアやSNSの立ち上げを手伝わせて頂いた経験があります。
初めて自分のプロダクトをリリースした時の喜びは今でも鮮明に覚えていて、デプロイする時の高揚感と期待感、そして不安が入り混じった感情でした。
「このプロダクトを一人で多くの人に見て欲しい、使ってほしい!」
「知り合いの投資家の方や知り合いにすげー!って言ってもらいたい!」
こんな心境でした。プログラミング学習アプリも、ミールキットのサブスクサービスも。若かった自分(とチーム)は、SNSや各種媒体でPRをし、そこに集まるアテンションやリアクションに嬉々としていました。
「いいプロダクトだね」「いいデザインだね」と周りに言ってもらえることはそれはもう最高の褒め言葉で、一番と言っていい嬉しい瞬間でした。
ただ、これはユーザーの声ではありません。知り合いの方から嬉しいことばをいただいても、それはユーザーへ価値が届いていることとは別の話です。
ミールキットの時は周りの方のお力添えもあり、リリース後すぐに民放各局のテレビ番組に取り上げていただき、「すげー全チャンネル制覇まであと1個だ」みたいな話もしてました。
テレビで紹介され、アクセスがスパイクしても耐えうるようにインフラの負荷対策をし、ミールキットの注文数が爆発しても大丈夫なよう各仕入れ先と連携をしておいたことで、テレビからのユーザー獲得も無事乗り越え、売上も拡大しました。
ところが、その流れが落ち着いた後に残ったのは、継続しないユーザーと少し利用を続けてくださったユーザーのデータでした。
「この中の誰がターゲットで、どのセグメントのKPIを伸ばしていけばいいかわからない」「そもそもターゲットじゃなさそうな人がいっぱい来た」
このような状況になり、後から振り返ればそのスパイクしたグラフを除けば、これまでの角度での成長に戻りました。
つまり、興奮や高揚感がチーム全体を包み込んだのは一時だけで、残ったのは分析の難易度が高くなったデータと、開発待ちのチケットでした。
ステルスだからこその利点とステルス解除タイミングの難しさについては笠原さんのお話が自分の中では印象に残っています。
ユーザーに価値を届けることだけにフォーカスして、コツコツ積み上げ、どこかで大きくジャンプする
新規事業立ち上げの経験を何度か重ねた30代になってもなお、心の奥底では「早くみんなにプロダクトをお披露目したい...!」という気持ちはあります。
ただ、それはそっとしまっておき、自分たちのエゴは意識的に排除するようにしています。
「このプロダクトを公開したら知り合いのAさんはなんていうかな」
「UIデザイナーのBくんに良いデザインだねって言って欲しいな。こんなもんかって思われたくないなあ」
こんな思考が頭によぎる瞬間はぶっちゃけあるんですが、そっ閉じしてます。
ユーザーではない誰かのために使う時間があるのなら、それはユーザーのために使ったほうがチームもユーザーもハッピーなはずです。
プロダクトとして荒い部分はまだまだたくさんあるけど、ユーザーが価値を感じてくれるコアな部分に集中するんだと自分たちに言い聞かせて、今開発を進めています。
今はクローズドなので、業界内の知り合いの方から「おーすごいね!」と言っていただくチャンスはないのです。
その代わり、ユーザーから得られるフィードバックで手触り感を感じたり、初めて売上が立ってユーザーに価値を届けられているんだと感じる瞬間をチームで少しずつ共有できていると思います。
ぶっちゃけると、ユーザーからのフィードバックは良い評価の声もあれば、厳しい声もあるカオスな状態です(笑)
でも、その厳しい声も素直に受け入れられる状態が今のチームにはあるように思います。うまく言語化できなのですが、厳しい声に対して「そうだよね、まだまだだよなあ」って実感を持てると言いますか。
現時点でのプロダクトの手応え
誇張や背伸びなしで、チームはこのプロダクトへの手応えを数ヶ月前から感じ始めています。
上述の通り、正直いうとプロダクトはまだまだ荒い部分が多くあります。めちゃくちゃたくさんあります。LLMを使っているということもあって、「こうしたいんだけどどうすればええねや...」のような技術検証もありますし、チームのリソース的にやりたいこと全てに手が回っている状況ではありません。
そんな粗々な状態にも関わらず、結構悪くない数字が出ています。 “悪くない”と少し控えめに書きましたが、もう少し正確に書くと「あれ、これってまあまあいいのでは?」というムードがチームにあります。
この新規事業を立ち上げているCaratは、これまでにもHR系のプロダクトを数回立ち上げ、運用をしているのでだいたいの数値の相場感チームの知識としてあるのですが、それらを比較対象として見た時に、この新規事業はいけそうだぞ、という所感を持っています。
まだプロダクトのあらゆる品質に課題がある中でその数値感なので、ここからさらにユーザー体験を磨いて改善をしていけば、もっといけるのではないかと考えています。
とはいえ、まだ検証しなければならないIssueが多くあり、未知数な部分が多いので1つずつクリアしていかないといけません。
少し長い目で見れば、競合が出てきた時にどうするのか等の戦略も必要です。短期ではプロダクトの品質を改善しつつ、少し先のことも考えてUVPを探索する必要があります。
LLMをサービスのメイン体験に活用していることもあり、UXの検証・技術的な検証の両輪が必要なプロダクトです。結構やることがあって、手が足りてない状況です。
これまでとは少し違ったデザイン設計やシステム設計が必要なので、未知な領域への好奇心がある方はぜひお声掛けください。
X(Twitter): https://twitter.com/kiiita
note上ではプロダクトは今はお見せできませんが、もし開発に興味がある方はカジュアルにオンライン等で話しながらプロダクトを見ていただくことはもちろん可能です!
チームにJOINする/しない問わず、「どんな感じなん?」という方もお気軽にご連絡ください!(競合ドメインのリサーチ的なのだけは堪忍して頂けますと🙏🏻)
お話の中で自分も思考が整理される部分もあるので、ほんとお気軽にメッセージください。またアップデートあればnote書きます。
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