北海道民には県をまたぐ感覚がない。
平安時代あたりに全国各地の文化・伝承を伝えるため各地で作られた書物を「風土記」と呼ぶ。
1300年前に作られた風土記を読んだ過去の人たちはさぞかしワクワクしたのではなかろうか。インターネットもクソもない時代に全国各地の伝説とか文化を知ることができるわけだから。もちろん私は読んだことがない。
出張先の福岡で「出身はどちらですか?」とたずねると、ある人は「広島です」と言い、ある人は「熊本です」と言い、またある人は「長崎です」と言う。
福岡は九州のサラダボウルなのか?
北海道の外を訪れその地域の人と話すたびに思うのだけど、私をはじめとする北海道民には「県」をまたぐという感覚が驚くほどにない。
たとえば東京は日本の首都であるわけだから、全国各地から人が集まる。福岡の場合はさながら九州の首都みたいなもんだから、九州近隣の都道府県から人が集まってくる。
一方で北海道。
札幌は北海道の首都みたいなもんで(まあね)、そこで学びに、働きに、各地から人が集まるのだけど、とはいえみんな「北海道」のどこかから札幌に来てるわけで「別の都道府県から来ました」という渡来人的な人は滅多にいない。
北海道で「ご出身は?」と聞けばたいてい「函館です」とか「オホーツクの遠軽町です」とか「十勝方面なんです」とかそんな感じ。
もちろん全国企業であれば転勤があるわけだから、札幌にも北海道外の人間はいるにはいるのだけど、割合珍しい気がする。
むかし、横浜の会社で働いていたときも思ったのだけど、全国の別の都道府県から集まって、いっしょに働く、という概念に妙なワクワクを感じてしまう。
それはたとえば、スポーツの強豪校みたいな感じ。地元の有名人たちがひとつどころに集まって、共通の目標を叶えるために集結した感。
「別の都道府県から来た」というだけで、別にそれぞれがなんらかのスペシャリストというわけでもないのに、とにかくワクワクする。
私は高校も大学も仕事でも、長らく北海道を出たことがない。だからそういうワクワクを感じる機会がほとんどなかった。残念ながら。
もしも私が学生時代に東京に行っていたのなら、全国各地から集まった同級生に地元の話を聞いて「オリジナル風土記」を作ってたかもしれない。
クラスの天皇みたいな人に「こちら、ワイがオリジナルで作った風土記でございます(ははー)」なんて言いながら献上する。
そしたらそれを見たクラスの天皇みたいな人が「おい! 北海道の田舎者のカスがこんなもんを作ったぞ! 見てみようぜ!」って言ってくれて、クラスのみんながそれを見る。
みんなが集まって「おお〜」とか言ってる様子を見た私は「えへへ」と照れながら笑ってたと思う。
でもそう考えると、この空間にある文章は全国各地のそれぞれの地域の人が書いているわけだから、これがそのままネット上の「風土記」になる日もいつかくるのかもしれないね。
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