理想のサンデー朝ごはん。
今日は日曜日だから朝ごはんを食べた。
白米、明太子、お味噌汁、トマトのサラダ、サバの味噌煮、牛乳。
米倉涼子の歯よりも白いお米のうえに明太子を大量にのせる。白米が見えなくなるくらいに明太子をのせる。
お米は知り合いの農家の米本さん(仮名)から無料で仕入れている。無料でもらってる分なにかで役に立つことで返している。お金が発生しない経済のあり方を米本さんと一緒に実験しているのだ。もう何年になるだろう。7年くらい。
お味噌汁にはわかめを「これでもか」というくらいに入れる。お椀に味噌とだしを入れてそこにわかめ。
洗濯機の中にたまっている家族の洋服くらいのわかめをお椀にぶち込む。お湯を入れると、部屋に差し込む高度の低い陽光がお椀の湯気をオレンジ色に照らす。
トマトのサラダは「トマトのサラダ」と言うくらいだから、トマトが入っている。
1個のトマトを手のひらの上でスッとカットして4つにする。豆腐のように。1個だったものが4つになる。魔法のようだ。子どもに数の概念を教えるときに使えそうだな、と思いながら切る。
緑の葉っぱと白い葉っぱをお皿にぶちこんでおく。そこにトマトを雑に放り込む。マヨネーズとケチャップ少々、それと秘密のだしを混ぜた50年ものの秘伝のソースを雑にかける。
ここまで読んで「あれ? なんかこの文章怪しくない? うそくさくない?」と思った方がいたとすれば、それは邪推だといえる。
邪な推測。それが邪推。
文章はまだ続く。
これで明太子がのった無料白米、わかめまみれの味噌汁、秘伝のトマトサラダが食卓に揃っていることになる。
あとは、サバ、牛乳。
サバはいつだったかの買い物で仕入れた、まるまる2尾。そいつらを捌く。おろす。YouTubeで魚の捌き方を見て練習したからできる。コロナ禍でかなり捌いた。
そういや私の父はむかし料亭で働いていたらしく、家ではよく魚を捌いていた。自分で釣ってきた魚を文庫本よりも厚い木のまな板の上に置き、ファイナルファンタジーに出てきそうな巨大包丁を使って捌いていた。週末の台所はいつも魚臭く、血だらけだった記憶がある。
「父さん、魚の捌き方教えてくれなかったな」と思いながら、私は私だけの出刃包丁をくるりとやってサバを軽快に捌く。
ちなみに出刃包丁には「出刃丸」と書いてある。
狸小路商店街の刃物屋さん「狸刃物店」で作った特注品で「出刃丸」に切れないものはない。およそ時間と空間をも切り裂けるのではないかと思っている。ちなみにさきほどトマトを切った包丁も「出刃丸」だ。
味噌漬けの準備をしてフライパンにサバを放り込んで煮る。煮詰まりすぎると味が濃くなるので注意が必要。こんなもの目をつぶってフラダンスを踊っていても完成する。
牛乳は北海道の北部、稚内の手前に豊富町という酪農が盛んな町から仕入れている。
豊富の酪農家からも毎週金曜日に牛乳が瓶で届くのだ。マジだ。ヤマトが運んでくれる。
本当は協同組合を通さないとダメなのだが、親せき・友人には直接届けられるらしい。豊富の酪農家、牛久保くん(仮名)は私と同い年の4代目でとにかくやさしい。
「ダーキさん、牛乳なんてね、どこの飲んでも変わらんす」が口癖である。
だから、「どこの牛乳を飲んでも変わらないのなら、牛久保くんとこの牛乳をずっと飲ませてくださいよ」と言った。
彼は嬉しそうで「じゃあ送りますね」と言ってくれて、それからもう3年は続いている。これも、お金が発生しない経済のあり方の実験だ。
父がむかし料理人だったこと、朝ごはんに上記のラインナップを食べたこと。
それ以外ぜんぶうそだ。それ以外ぜんぶうそ。
この生活に憧れて「いいなぁ」と思うような人はすぐにやればいい。
やろうと思えばすぐにできる。
何度も言うが「やれない」「できない」ことは、本気でやろうとしていないだけの話。
特注の出刃包丁は作れるし、お米を無料でくれる米本さんや、牛久保くんのような酪農家も探せば絶対にいる。事実、この国の3割は農家でもないのにお金を払わずにお米を手に入れている。
「いいなぁ」と思う人はいつまでもいいなぁと言ってないですぐに行動に移せばいい。
当たり前だが、考えて行動に移せばどんなことも実現できるはずなのである。
ちょっと、コーヒーでも飲もうかな。
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