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建築旅 #008 【Louvre Abu Dhabi, UAE Abu Dhabi, by Jean Nouvel, 2017】 25th Dec 2024


カタールを後にドバイへ

3泊カタールに滞在。奥さんの勤務地であるドバイへと飛行機で移動した。ドバイの空港でレンタカーを借りて、家まで戻った。レンタカーを借りたのはアブダビとアル・アインというリゾート地に行くためには車を借りておいた方が動きやすかったからだ。借りた車は5ドアジムニーだった。砂漠の中を走り回ってみたかったからジムニーにしたのだが、結局そんな機会はなかった。笑

中東地域で先行リリースされている5ドアジムニー

ドバイに深夜着、アブダビに早朝発

深夜に奥さんの家に到着した。早朝、アブダビに向けて出発をした。アブダビへはドバイからは1時間ちょっと。高速に乗った。高速には料金ゲートはなく、ナンバーを監視していて、後日精算となるシステムだった。こういうところは新興国を見習って、日本も全部ETC限定にして切り替えていったらいいのにと思う。ドバイの人々の運転は荒い。(インドとかに比べればましではある)とにかくスピードが速い。ジムニーでは120km/h以上は出せないので、遅いレーンをダラダラと走る。高速を降りるとすぐに見えてきた。Louvre Abu Dhabi 。国が変わりドバイにもJean Nouvel。建築家の主戦場と化している中東、さすがです。

車から巨大な円盤が見えてきた

アプローチ

ジャンヌーベルの建築はアプローチが秀逸。今回の旅を通してそれを確信した。駐車場に車を置いて、歩いて向かう。ランドスケープがちゃんとしている。自分の建築をどこから見せると美しいのか、、、よくわかっていらっしゃる。パーゴラの下を歩いて視界が開けると巨大な円盤が見えてきた。

駐車場の人の流れを受け止めつつ、アプローチの軸性を意識させるパーゴラ
パーゴラを抜けるとドーンと見える円盤

確か、、、

僕が建築を志したきっかけは安藤忠雄に憧れたから。高校時代は一切勉強しなかった。浪人すると心に決めて必死に勉強して大学に入った。確か浪人決定した時の春に、同じく建築学科を目指していた高校の同級生が「ジャンヌーベルっていう建築家がいて、サントリーミュージアムで展覧会やっているから観に行かへん?」と言われた。その時は全く知らなかったジャンヌーベル。展覧会のインタビュー動画ではご本人が「詩」を朗読しているかのような受け答え。全く理解ができなかったことを思い出す。建築家というのは難しいこと(時に簡単なこと)を難しく言っていることがある。そういう建築家達の中で「その論理の中に溺れていく建築家」と「現物を見に行くとものすごく感覚的に共感できる建築家」とにわかれると思っている。コルビジェなんて完全に後者で、ジャンヌーベルも後者だ。「なーんだ、、、結局感覚的に良いもの造ってるやん」と思わせるのが、フランス人建築家のお家芸なのかもしれない。

パキッとした陰影

展示室の中はオーソドクスな美術館。大屋根の中にいくつものヴォリュームが嵌合しながらつながっている。その中を回遊しながら展示を見る。時折外光がはいってくる。このハイコントラストな感じが、いかにもジャンヌーベルだ。ルッツェルン的でもあるし、ナント的でもあるし、アラブ研究所的でもある。要はジャンヌーベル的ということか。笑

人の動きも絵画的に切り取る
このリフレクションした感じはジャンヌーベルそのもの
海もたまに見える

森の木陰

展示空間を抜けると最後に大屋根の下に出てくる。カゴのように隙間だらけの屋根からは光が漏れ出している。床に落ちた影はシャッターのボケ効果的に、隙間を通った光が回折して輪郭を柔らかくしてぼんやりと床を照らしている。まさに木陰。

砂埃によるチンダル現象も
輪郭が柔らかな光

建築的感性が麻痺している

カタールで刺激的な建築を過剰摂取したせいで、もう建築的感性が麻痺している。ルーブルアブダビに行った時は多分麻痺していて、それほど感動はしなかった。しかしながら今、記事を書きながらながら改めて見直してもかなりすごい建築だ。これはカタールがあまりにもすごいと思ったせいなのか、、、咀嚼するのに時間がかかりそうだ。

大屋根の下の空間

うっすら

なぜ感動しなかったのだろうか。周りの景色が雑多だったから?ちょっとスケールアウトした建築だから?単純にもう飽きたのか?疲れていたせいか?一つあるとすればこの屋根下の空間に思いの外、居場所がなかったからだろうか。階段状の座るスペースは薄暗く、前に見えるのは澱んだ水溜り。季節柄、僕が訪れた時期は冬。かなり過ごしやすいので、この薄暗い空間が逆に気持ち悪かった。一方で夏の時期に来ていればこの空間が気持ちの良いものになり得ているのだろうか?おそらく否だろう。日陰とはいえ夏は気温は50度近くなるので、この場に佇むことは難しいはずだ。

座る場所が少ない?
ルッツェルン的に空を切り取る

ドーム

直径180mの銀色のドームは、ステンレス鋼とアルミニウムで造られている。外側4層はステンレス鋼、内側4層はアルミニウムで、層間隔は80mm。計1万個の鉄骨部材を工場加工した85個の大型フレームで構成。総重量は約7,500トン。すごい。構造+仕上というようなものではなく、それ自体が構造であり、仕上げだ。先端はキャストで軒天井が作られている。

構造材としての区別がつかない
薄暗い?
先端部分の軒天井

アブダビの建築

色々と考えながらこの建築を後にした。素晴らしい建築であることは間違いなく、でもどこか過剰であるようにも感じてしまった。この建築を語るには違う季節に何度か訪れる必要がありそうだ。

素晴らしい建築であることに間違いはない

所在地

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