3軍が作れないのなら100敗すればいいじゃない(前編)
福岡ソフトバンクホークスが強い。
2年連続の顔合わせとなった読売ジャイアンツとの日本シリーズは昨日(2020 11/22)を終わった時点で2勝0敗。シリーズ通算9連勝、過去10年で6度の日本一。近年のプロ野球においてホークスの強さは群を抜いている。
特に昨日の試合(13-2 ホークスの圧勝)は、久しぶりの1試合フル観戦だったこともあり、凄まじい絶望感を筆者に与えてくれた。
「向こう30年は勝てないと思う試合がしたい。」
第一回WBC、韓国戦を前にしたイチローが発したこの一言は物議を醸したが
昨日の試合は筆者にとってまさにそんな試合であった。
特に投手・野手ともに途中出場選手の質の高さは衝撃的なレベルであった。
「育成のホークス」
その成熟ぶりを「筆者は」いや「全野球ファンは」まざまざと実感させられた。
ホークスでは2011年の3軍創設以来、従来の2軍制度だけでは十分な出場機会を与えられなかった選手たちにも実戦を通した育成システムが導入され、多くの育成出身選手が花開いた。
こうした若手育成は、孫正義オーナー以下球団の総意として全面的なバックアップを受け、練習施設をはじめ若手育成のシステム作りだけで100億円近い投資がなされてきた。
2011年といえば、我が中日ドラゴンズ(筆者は大の中日ドラゴンズファンである)がホークスと日本シリーズを戦い、3勝4敗で惜しくも涙を飲んだ年である。落合ドラゴンズ最終年。敗れはしたものの両チームは互角の戦いを繰り広げていた。(ここから少しドラゴンズによった話にはなるがご容赦を。)
「あの時」両チームに差はほとんどなかった。
しかし「あの時」ホークスはすでに次代の一手を打ち始めていたのだ。
「あの時」から約10年。その後低迷期を迎えたドラゴンズは8年ぶりの Aクラスに歓喜した。次は優勝だ!しかし、3軍はまだない。
かたやホークス。「あの時」打った次代の一手は完全に成熟した。千賀滉大・石川柊太・甲斐拓也・周東右京など、ホークスを担う若手のスターたちは、その多くが3軍から誕生した。
「このチームには勝てない…」
柳田悠岐が故障離脱した2019年シーズンなど、今後も1年単位で見ればラッキーパンチはあるかもしれない。
しかし、中長期的な戦力の持続という点で考えた時、ホークスに並び立つチームは現れるのだろうか。3軍制度導入が遅れているチームに関しては30年とは言わないにしろ、少なくとも10年は確実に勝てないのではないか。
「成熟した育成のホークス」
具体的な根拠を伴って突きつけられた10年間の差。そのショックは本当に大きかった。
かつてのホークスは、若手育成に関してむしろ脆弱な印象さえあった。
それは、小久保裕紀・松中信彦・井口資仁・城島健司・斉藤和巳など、日本を代表するスーパースターたちに依存したチーム編成であったことが一因であった。
小久保・松中の衰え、井口・城島のメジャー流出、再起不能に陥った斉藤和巳。柱の力に頼り過ぎていたチームは柱が揺らいだ時、それを補う力を持たなかった。2008年、ホークスは最下位に沈んだ。
スーパースターだけでは勝てない。秋山新体制を迎え、大テーマとなったのは「強豪であり続けるチーム作り」であった。
先の2011年の日本シリーズの後、当時の主力であった川崎宗則・和田毅・杉内俊哉・DJホールトンがホークスを退団し、ホークスは再び窮地に陥った。
しかし、ホークスは折れなかった。翌2012年こそBクラスに沈んだものの、柳田悠岐・今宮健太が台頭し2014年には日本一を奪回。その後、現在に至るまで2016年を除いてホークスは全ての年で日本一の栄冠に輝いた。
若手育成を軸とした「強豪であり続けるチーム作り」が完全に功を奏した格好である。
思えば2020年は内川聖一・松田宣浩の不調、外国人選手の未稼働など主力依存型のチームのままであれば、過渡期となったシーズンであったはずだ。
しかし、ホークスは強かった。
もちろん大前提としてホークスは資金力に恵まれた球団である。秋山政権以降も、特にV1を勝ち取る年(2011年や2014年がそれに当たる)は、大型補強を行い優勝を勝ち取っている。(2011年 内川聖一、アレックス・カブレラ、細川亨など。2014年 李大浩、デニス・サファテ、中田賢一、鶴岡慎也など)
一方で、高額なスーパースターに依存したチーム作りはFAによる他球団への移籍・故障・年齢的な衰えなど、強さが持続する仕組みとは言えない。
ホークスはこの10年で、豊富な資金力をバックとした大型補強はあくまで黄金期への入り口、V1を勝ち取る際のメインエンジンとするにとどめ、中長期的な戦力の持続においては若手育成をメインに添えるチーム作りに切り替えた。(資金力の行使は不足点の補充にとどめ、希少価値の高いHR打者獲得に使用されることが多い。2016年は李大浩退団の穴を埋めなかったため優勝を逃すなど、資金力を背景とした選手補強もホークスの強さを支える重要なピースであることは間違いない。)
こうして10年かけて作り上げた「ホークス王朝」は、もはやバレンティンのメンヘラ化ごときでは容易に崩れない。(バレンティン選手ごめんなさい。)資金力ではなく、若手育成を最たる強みとしたこと、これが「強さの持続」の最大のミソであった。
他球団はホークスの10年計画をみすみす許してしまったわけである。気づいた時にはなんとやら。孫正義には今日もプロ野球界がレガシー業界に見えて仕方がない。
こうなってしまっては他球団に残された道は一 ただ一つ。
「T T P」→「徹底的にパクる」である。
今すぐにも全球団に3軍を!「強豪であり続けるチーム作り」を!
しかし、ファンの声虚しく、多くの球団は「3軍システムこそ資金力の賜物」と若手育成システム導入を渋り続ける。
あゝレガシー産業。ナベツネは今日も元気だった。
ならば、である。
「3軍が作れないのなら100敗すればいいじゃない」
筆者は上記提案を行いたい。ここにもプロ野球界の古い体質が関わる。実現可能性は低いかもしれない。それでも、あえて、筆者は上記提案を行いたい。
ということで、ようやく本筋に入ろうと思うが、
それではつまり、衝撃的なことに、ここまで全て「前置き」であったということになる。
もはや1つの投稿で済む範囲ではなくなってしまった。悲しいがな「前編」は、なんと前置きだけで終了である。
後編では、筆者の独断と偏見による「ならば」論を、前編同様の乱文でお届けする。
後編を読むか否かは読者諸氏の判断に全て任せられるわけだが、前編を読んで少しでも興味の湧いた方には後編のアップを経て、是非とも再びお会いしたい。
それでは前編は最後に一言綴って結びとしたい。
「色々言ってますが、とにかく後編も読んでほしいです!お願いします!(懇願)」
…後編へ続く
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