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フリゲ一期一絵祭反省会


フリゲ一期一絵祭が閉幕

フリゲ一期一絵祭が終わりました。
まずはお礼ですね。足切り有無にかかわらず、作品を応募してくださったすべての方へ。そして、作品をプレイしてくださった方、投票してくださった方、拍手コメントをくださった方、Xでリポストやいいねをしてくださった方……たくさんの方々のおかげで完走できた企画です。
本当にありがとうございました!

そしてここからは、運営者としての視点で記録を書いておきます。「この企画の裏にはどういう意図があったんだろう?」と気になる方や「フリゲ企画の運営に興味がある」方、失敗談で笑いたい方など、ゆるりとお付き合いいただければ。

日を分けて書いているので、テンションがこまめに切り替わります。
時々、皮肉的だったり厭世的と思われる言い回しが出てくるかもしれませんが、その部分は「匿名で」「繰り返し」「長文で非難された」時に書いている部分だと思ってください。
「主催者のメンタルキャパ以上にボコボコにすると、このくらい捻くれちゃいます」というのが、主催を経験したことのない方にも伝わるように、あえて残しています。

企画が終わった後で、今更ぐだぐだ説明する理由?
閉会後だったら、責められるのは私だけですからね!

反省点

運営の手際の悪さ、致命的ミス

まずはここですよね。
いきなり「応募フォームのURL入力欄が7文字しか入力できない」って。7文字で終わるURLの方が少ないだろどういうことやねん。「http」ですでに4文字使うんだぞ!
その後も、HPの工事してたら応募フォームもURLがリンク切れになってるとかさぁ……何やってんの? 初心者運営だからで許されるミスの量超えてるよ? そんなだからゲームもバグだらけなんだよいい加減にしろ!

最終日に定義追加

ほんとーーーーーに石投げ案件なんですけど。
「最終日に定義を追加した」ことはですね、大反省であります。
「ポイントが同数だった場合の判定方法」だったんですけどね、追加したの。
いやね、このあと書きますけどね、デットヒートになるようにルールを作りましたよ?
でも同着が発生すると思わなかったですのん。
だけど最終日の途中経過で、「このまま投票が終わったら同着だ…!」って焦ったんですのん。

ー石投げ劇場ー
(=´∀`)「いい感じに全作品に得票が入ってるお! この分だと最終結果は〆切過ぎないと分からないお。1票入力する度に変動しててエクセル先生が爆発しそうだお」
(*´Д`*)「だからコメント読んでハアハアする仕事に戻るお!!!!!!」
(*´-`)「最終日も半分終わったお…名残おしいお…さすがに昇順エクセル集計かけておくかお。ポチッとなだお」
:(;゙゚'ω゚'):「え…4作品が同数…? このまま終わったら判定方法どうするんご…? しかも全部1、2ポイントしか差がないから、同数ポイントがさらに増える可能性もあるお…」
(´°̥̥̥̥̥̥̥̥ω°̥̥̥̥̥̥̥̥`)「金賞に推してる人が多い方を優先する…これしか思いつかないお…もう最終日だからご意見を聞いている時間もないんご…」
ー閉幕ー

はい、どうすればよかったのか、全員分かりますね。
「ハアハアしてる時間を使って考えれば良かっただろ」
本当ーーーーーーに申し訳ございませんでした。
あらゆる盤面を想定してルール作っとけ! そんなだからお前のゲームはバグだらけやねん!
…いやー、最後の最後まで、全作品に綱引きをしていただけました。十人十色の魅力があったってことですね!

公式タグは早めに作っておこう

応募開始から20日でようやく公式タグを作る有り様でした。スロースタートってレベルじゃねえぞ!
そのせいか、「一期一”会“祭」という呟きに情報が分散することに。ただでさえ一発変換できないユーザーディスライクな名前なんだから、公式タグくらい用意しとけ!

企画用のアカウントがあると便利だったかも

企画の情報だけほしい人もいたと思うんですよね。そことのバランス取りのために、企画期間中はリポストをかなり控えめにしてました。企画専用アカウントがあれば解決した問題だなーと思います。

逆足切りは想像以上にメンタルにきた

参加作品に上限を決める制度「逆足切り」。これが一期一絵祭が異端である理由だと思うんです。逆に、これのおかげで唯一無二の企画になったとも言えるんですが…
心にきたね、きたよ、逆足切りするの。
こんな辺境の企画に応募してくださったのに、それを無碍にしなきゃいけないっていうのは、もーーーー本当にメンタルをやられた。
正直、応募数10いかないって思ってた。いったとしても15よりは多くならず、数作品にごめんなさいする形かなって思ってた。
ですが、たいへんありがたいことに、30を超えるご応募をいただきまして。
3つの内2つの作品を切らなきゃいけなかったのは、本当にしんどかった。拍手コメントで「最大の敵は逆足切り」って言われたよ。実際、応募作品のうち7割が逆足切りになってしまったので間違ってない。半数以上が足切り対象になる企画ってなんだよ……足切り喰らう作品のほうが多いって……

実は開催当初に「絵描きが足りなくてキャパ不足ならお手伝いしますよ」ってお声がけもいただいていたんです。
そのお声がけは本当に嬉しくて涙が出たんです。応募数が30を超えた時、ご好意に甘えようか悩みました。
ですが、初めての企画、先駆者がいない参加条件、運営は初心者という状況の中で、トラブルが起きないという保証はなかった。有事の際に、私以外に火の粉がかかるのは避けたかった。
だから上限の10は変えませんでした。
まあ、上限数を絞ったのは別の理由もあるんですが、それは後の項目で。
逆足切りの要素は予告していたにも関わらず、足を切らなきゃいけない作品が確定した瞬間は、本当に申し訳なさでいっぱいになった。誰だこのルール考えたの! ふざけんな! って思ったよ。
応募いただいた作品を見に行くじゃないですか。どれも魅力的なのが罪なんですよね。あー、この作品プレイしたいー、感想を呟いて限界ヲタク化したいー、ファンの皆様と感想戦やりたいーっていう作品ばっかなの。本当に。食指の動かない作品は一個もなかった。だから余計に辛かった。泣いた。

もし「逆足切り」の要素を引き継ぐ企画が現れたら、その主催者様には言っておきたい。
本当にメンタルにくる仕様だから気をつけるように!

今だから言えること

企画設計の基準は「あの時の自分」

企画期間中、拍手コメントでたくさんの励ましをいただきました。本当にありがたいことです。
その中で「辛い思いをする人に手を差し伸べる姿勢が美しい」と言っていただけたんですが、全然美しくないと思うんですよ、私の姿勢。コメントの中身自体は温かくて、本当に嬉しかったんですけど。この方が思っているような聖人じゃないんですよ、あたしゃ。

だって、この企画のルールを設計した時、頭に描いていたのは「過去の自分」ですからね。それも、フリゲ界隈に疑心暗鬼になっていた時の。
言っときますけど「あの時の自分」は負の感情のキメラでした。言葉巧みに騙され続け、気がついたら自分の作品を「本命作品の引き立て役」にされていました。
「あなたの作品のファンですよ!」と言っていた方が、ある日突然「こんな奴の作品なんて知らない! 騒動になって初めて知ったんだ! 私と同名で同IPアドレスの人があなたの作品をsageながら別の作品をageてたらしいけど、私じゃない! 別人だ! 言いがかり! お前の無名な作品なんて知らないもん!」と言ってきた時の衝撃を想像してみてください。
直接的な誹謗中傷だけでなく、信じていたファン(と思っていた人)に裏切られたんですよ。
だから、文字による励ましなんて一切響かなかったんです。当時の私には。口だけなら何とでも言える、あいつみたいに本命作品の踏み台として利用したいだけだろ、って荒んでました。コンビニの前でう◯こ座りしてるヤンキーみたいにやさぐれてました。

そこにさらに、他の作者様との比較攻撃が襲いかかります。
「ベストフリゲで◯◯様は26票! お前は1票! ◯◯様の作品はお前の26倍価値がある!」
「◯◯様はコンパク金賞! ニコフェス受賞! 夢現でも入賞! お前は受賞無し! ◯◯様の足元にも及ばない! 消えろ!」
こうして見事にフリゲの筆を折りました。闇堕ちフリゲ作者3分クッキング、お楽しみいただけましたか?

あの時の自分は「言葉を信じられなかった」。そして「自分より遥か昔にフリゲ制作をしていた人と比較されて疲れていた」。
だからフリゲ一期一絵祭は「イラストを使って応援する企画」だったんです。「有名作を弾くシステムを採用した」んです。

そして私、散々口酸っぱく言ってたじゃないですか。
「公開停止した作品の再公開でもOK」って。
これはまさに、荒んで作品を全部消して筆を折った、当時の私に向けて言っていたんです。

フリゲ一期一絵祭はとことん「あの時の自分」の理想通りに設計したルールなんです。自分自分自分! エゴ丸出しマッチョマンですよ。
30を超えるご応募をいただけたのは結果論であって、もともとは「自分のため」のルールだったし、企画だったんです。
人間の行動に「他人のため」なんてないと思うんです。あったとしても「『誰かのためになりたい』と思う『自分のため』」ですよ。

だから私はフリゲ一期一絵祭を心から楽しみました。自分の理想通りのルールで遊べるんだもん、当然でしょ。一番楽しんでたのは私。だから偉くも立派でも綺麗でもない! ワッハッハ!

そうそう、この企画、実は「SNSアカウントがなくても参加できる」企画だったんです。応募も投票もメールフォームからだったし、ご連絡先にもメールアドレスを書いていただいたでしょ?
あれも、当時SNSをやっていなかった自分を想定してのものです。
SNSやってて当たり前という風潮はクソ喰らえぃっ!!!!!

超重要アンケートの真相

応募期間の中盤で、こんなアンケートをしました。

これって何のためだったの? って話。
端的に述べるなら「数値レースの条件を、全作品でなるべく平等にするため」です。

この先の話をするのに、下記の論文が関わってきます。

https://www.jstage.jst.go.jp/article/jaae/14/0/14_45/_pdf/-char/ja

これは松山博幸さんによる論文で、「全国吹奏楽コンクールにおいて、発表順番が審査に影響を及ぼすか」を研究したものになります。
とりあえず結論だけ書くと、
・発表順の遅い方が有利になりやすい(overall order bias)
・ひとつ前の団体の演奏に、その団体の得点は影響を受ける(sequential order bias)
以上の結果が得られたという内容です。

そしてこれは、何も吹奏楽コンクールに限った話ではないと考えられます。
四則計算のように、丸と罰がはっきりするタイプなら問題ないんです。採点を名簿順にしようがランダムにしようが採点結果が変わることはない。「1+1=5」と書いていたら、たとえ最初に採点されても最後に採点されてもバツです。

でも、明確な基準のない芸術分野は? 創作分野は?
少なからず、上記のバイアスがかかるはずです。そういう結論の論文が出てるんです。

では今回のフリゲ一期一絵祭において、どういう策が必要だったか。
1.プレイされる順番を、全作品でなるべく均一にする(最初にプレイされる確率、最後にプレイされる確率をなるべく揃える)
2.前にプレイした作品による、当該作品への審査の影響が、なるべく少なくなるようにする
この2項目に対して、どのような策を講じたのかを書いていきます。

まずはひとつめ。
ここでお分かりかと思います。超重要アンケートの真意が。
あれは「初手プレイという、overall order bias上では最も不利な条件になる作品を、プレイヤーはどのような基準で選んでいるのか」を知るためのアンケートでした。
アンケートにある4つの項目を分解するとこうなります。

運営が一切干渉できない→好みで決める
運営により一定の干渉が可能→プレイ時間、知っている人
運営の匙加減→リストの並び順
まず、参加作品をプレイ時間の長い順に並び替え、その順位に20%をかけます。(あ)
次に、作者様のSNSフォロワー、ゲーム投稿サイトのフォロワー数などから「知り合い度」を算出。知り合い度の低い順に作品を並びかえ、その順位に9%をかけます。(い)
そして(あ)と(い)を足し合わせた数値を「暫定初手プレイ値」とします。この値が高いほど、初手プレイ率が高いということです。

そうしたら、リスト順補正値を足してみましょう。1番目に載った場合は10×0.16=16ポイントを「暫定初手プレイ値」に足し合わせることになります。
こうして「その作品が◯番目に載った時の初手プレイ値」を算出します。
基本的には初手プレイ値がなるべく平等になるように並べます。が、そこにsequential order biasの概念に基づいた調整をいれます。それは二つ目の項目に引き継ぎましょう。

次に二つ目。
前の作品の影響を受けるってどういうこと? ってのを簡単に説明しますと。
昼ドラみたいなドロドロストーリーが大好きで、型にハマった王道を嫌う人がいたとしますね。
その人がもし、古き良きRPGをプレイしたら。
たぶん低い得点をつけるでしょう。
問題はこの後。
もしこの後に、冬彦さんよろしく、ドロドロ愛憎劇を描いたノベルゲーをプレイしたら。
高得点をつけるはずです。「過剰に」。
前の作品が自分の好みに合わなかったことで、ドロドロゲームが「本来よりも、より魅力的に見えてしまう」ってことです。
これは逆も同じ。ドロドロノベルの後に王道RPGをプレイしたら、RPGには本来よりも低い点をつけるでしょう。
これがゲームの投票における、sequential order biasのかかり方と言えるんです。

応募受付終了後、参加作品を確定させた私は、急いで10作品の下見を行いました。作品の雰囲気を掴むために。
そして、「連続プレイした時になるべくギャップが出ないように」、作品を配置したわけです。

ここまで書いてきましたが、これでも全然バイアス排除は足りません。プレイ順を完全にコントロールすることが不可能な状況で、運営にできる限りのことはした……というだけです。
審査員が決められていて、審査委員長によるプレイ順番の指定ができれば、排除率はぐんと上がりますが。フリゲ一期一絵祭はそういう企画じゃないので。
創作物という、人が大切に作り上げたものを評価するのは、感情の問題が大きいアナログ要素です。
しかしそれを「数値」というデジタルな要素に落とし込むというのなら。
これらのバイアスを排除する努力を怠ってはいけない。受付順に並べる? あいうえおで決める? 「全作品が平等に注目される場を目指します!」って言ってる企画で、それは無神経すぎるでしょう。
逆に、この程度のバイアスも考慮できないのに、他人が作った宝物で数値レースするなって話です。数値レースをするということは、誰かが大切に大切に育ててきた子どもをお預かりするということ。すべてのフリゲを対象にするなら一万じゃきかない人数の子どもです。審査や投票における先行研究のひとつやふたつ勉強してからでないと、とても主催なんてできません。医師免許のない医者に我が子の手術を頼むような真似、誰するんですかって話です。
もちろん、競争要素が一切ない企画であれば、受付順でもあいうえお順でもくじ引き順でも何でもいいんですけどね。

こう言ってますけど、本企画だってバイアス完全排除はできてませんからね。
だから言ってるんですよ。「金銀銅賞の価値は、町内ボーリング大会優勝の名誉を100000000倍薄めた程度でしかない」って。
アンケの投票数が1票違っていたら、各項目の比重が変わっていたわけで、その結果作品の並び順が変わった可能性があり、それによって新たなバイアスが生まれて金銀銅賞は変わっていたかもしれない。こんな不安定な代物ですよ。どこの誰かも分からん人が匿名で入れた1票によって、簡単に結果が左右される賞です。
上の説明にもある通り、初手プレイ値の計算にガッツリ匿名アンケートの結果を使ってますから。だから重要アンケって言ったんだよ!

「俺たちが変なバイアスにかけられて、きちんと公平に投票しなかったって言いてえのか!」と仰る方がいるかもしれませんが、もちろんプレイヤーが悪いわけでなく、バイアスを排除できなかった私のせいです。皆様の清き1票は、とても重みのある1票です。そもそも人間なら絶対にバイアスは持っちゃいます。

ぶっちゃけると、各順位同士のポイント差、全部3ポイント以内なんですよ? 金賞と銀賞の間も、5位と6位の間も。しかも同数までありましたからね。
金賞票が1個入れば、1〜3番上まで飛んじゃう世界ですよ。大乱闘ですよこんなの。
投票者があと一人多ければ、少なければ。プレイ順アンケの票があと1票多ければ、少なければ。
結果が変わりうる環境だったってことです。
そしてこの企画は、そういう環境を積極的に作っていたんです。「逆足切り」ルールによって。
「たった一人、たった1票でいとも簡単に結果が変わる数値レースに、何の信憑性があるの?」って話です。まったく同じルールで、同じ作品でもう一回同じことしたら、たぶん結果は変わりますよ。
フリゲ一期一絵祭は、そういう企画です。
「1票にとてつもない重みをかける」
それでいて、
「結果の信憑性は、一人の気まぐれで書き換わってしまうほど薄っぺら」
こうなるように。

先人たちの企画で「数値なんて飾りだ」と仰る方がどれほどいらっしゃったか。
でもそれを「数値は飾りだ」と素直に受けとめることのできた方が、どれほどいたか?
そこが疑問だったから、私はこの企画のルールを設計したんです。
「どっかの名無しの権兵衛によって簡単に結果が変わっちゃうような、ぺらっぺらな数値」が計算されるように。
「私が投票しても結果変わらなくない?」どころか、「お前の1票のおかげでこの結果だよ!」という状況になるように。
「数値レースをしてるけど、その数値は飾りだ」っていうのはね、拳銃を突きつけながら「僕は君を殺そうとなんて思ってないよ」っていうのと一緒なんですよ。
本当に殺す気がないのなら、もっとロジカルに説明しなきゃ、信じてもらえるわけないんですよ。
数字というデジタルな指標を使ってるのに、作者に対してアナログな感情論でスルーを強要するのはねじれてますよ。デジタルな要素への疑問なんだから、論理的に説明してあげなくちゃ。「どうしてその数字が飾りなのか」ってことをね。

私も、暗黒時代に言われてましたよ。「ぷぷー!お前の作品、1票しか入ってないでやんの!どうせお前の自演だろ?◯◯様は26票も入ってるのにねー!フリゲ界が◯◯様を選んだ証拠なんだよ!お前の作品がなくても誰も悲しまない!◯◯様が迷惑がってるし、お前の命よりも私の作品の方が大事だって言ってんだから、お前はフリゲ界から立ち去ってそのまま死ね!」ってね。
その時の自分に、どうやったら「数字は飾り」ってことを納得させられるだろう。そう思って設計したルールだったし、そのために先行研究を勉強したんです。

ここまでの説明を聞いて、フリゲ一期一絵祭の数値レースの結果をどう受け止めるかは、皆様次第です。
もちろん、今回、金銀銅賞を受賞された皆様へは盛大な拍手を贈っていますよ。主催として。この結果が励みになったのなら、それはとっても価値のあることです。主催冥利につきるってもんです。

話がだんだん逸れてきましたが、他にも、インストアマーチャンダイジング(ISM)による視線誘導や印象操作の考え方を取り入れて、作品の並び順を決めました。インストア〜の話を始めたら小売店の経営について語らないといけなくなるので割愛。

こうして「作品同士のバイアスがなるべく均等になるように」調整をしていました。
Xで一日1作品紹介をしていましたが、あれの紹介順がリスト順じゃなかった理由は、もうお分かりでしょう。初手プレイ値を少しでも均等にするために、「リストの真ん中にある作品から」紹介していました。プレイ時間の短さで選ぶ人は下の方から始めるでしょうし、上から順番の人は当然1番目からプレイするでしょう。真ん中の作品の初手プレイ率を操作するための紹介順でした。
この目論見はある程度上手くいったと思っています。初手プレイを真ん中の作品にも誘導できたかなと。

プレイ期間中に「総投票数がいくら増えてもデッドヒートになるような仕掛けをしている」と宣言したんですが、その種明かしがこの項目です。
もちろん「金メダルにだけ投票する」のではなく「金銀銅3作品に投票させる」ルールなのも、最後の最後まで全作品が綱引きに参加できるようにするため。
逆足切りのルールによって、スタートラインの違う作品は弾かれた。
実力の拮抗する作品が、できる限りバイアスを均等にかけられた状態でレースをしたら。
その結果は最後の最後まで読めなくなるでしょ、っていう。

まあ、このレース自体の価値が「町内100m競争」の0.00000000001%分しかないんですけどね!
というか、この目論見が想定通りにいきすぎて、1票入る度にメダル作品が入れ替わってましたからね! 「1日に作業集中するのが面倒くさいから、あらかじめメダル発表用の画像作っておこーっと⭐︎」とか絶対できない企画でしたよホントに。総選挙やら人気投票企画やらで言うなら「この作品は太枠紹介確定だな」という判断が、最後の最後までできなかった企画ってことですよ。「主催ですら」。これがいかにイレギュラーなことであるかは、企画側に立ったことのある人の方が分かると思う。

結果が出た今なら言えますけど、これ、プレイしてくださった方のお人柄にかなーーーーーーり依存してますね。
こんな辺境の企画を応援してくださる皆様ですよ、そりゃあもう、優しくて篤実で温かい方々に決まってるわけで。
そうなれば、「温かい」「優しい」「胸を揺さぶる」系の作風が有利に決まってんですわ!
小説の公募とかだと、有利な作風を調べてそれに寄せる……ってことができるんですけど、一絵祭は初回でしたからね。傾向と対策もクソもないんですよ。もはやただの運ゲーじゃねえか!
料理コンテストで、料理が完成してから「審査員はこの方々です! ちなみに審査員はみんな和食が大好物です!」って言われたようなもんですよ。中華や洋食を作った人々は涙目じゃないですか。もはやただの運じゃないですか。だから「もはやただの運ゲーじゃねえか!」って言ったんですわ(大事なことなので2回言いました)
だから、たとえ同じ作品であっても、発表する場所を変えれば反応がガラリと変わりうるってことですね。
それから、本企画は意図的に「SNSアカウントを持っていない、あるいは見る専だとしても、平等に企画に参加できる」ように設計していました。なので、SNS上での反応を見て結果を予想されていた方には、意外な結果に思われたかもしれませんね。主催ですら〆切当日まで結果が分からなかったのに、途中経過すら見れない人が当てたらビックリなんですわ!

まあ、メダル云々言ってきましたけど、ぶっちゃけメダルはおまけですよ、何度も言ってるでしょ。
メインは虹賞ってゆってるでしょ! 虹賞以外の賞に賞品とかないから!!!
結果発表ページでも一番上にデカデカと虹賞置いたでしょ!!!!金銀銅は横並びで一列にまとめたでしょ!!!しかもアマチュア絵描きである私のイラストの下に!!!そういうことだよ!!!

そうそう、1票に滅茶苦茶重みをかけてますよって話だったじゃないですか。
嬉しかったのはね、投票してくださった方の半数がコメントつきで投票してくれたの。コメント欄は必須じゃなかったんですけど。
だからこそ嬉しかったなあ。「1票のウエイトがとっても大きい企画」「あなたの1票でメダルを贈る」という主催の意思を汲んでくださったような気がして。
もちろん、ご参加いただいた作品が「コメントを書けるほど魅力に溢れていた」のが大前提ですよ。

こんな感じの企画なので、結果に「一喜」するのはもちろん良いと思いますが、「一憂」するのは時間と精神の無駄だと思います。いくらバイアスだの何だの言ったって、蓋を開けてみたら運ゲーだったわけですよ。
こういうことが平気で起こるのが「創作・芸術的なもので行う数値レース」です。運ゲーの結果を根拠に作者や作品を称えるのはいいとして、反対に扱き下ろすなんぞ、馬鹿阿呆ドジ間抜け鬼悪魔人でなしサディストのすることなんですよ。

それにしたって、最後の最後まで、どの作品もレースから離脱しなかった企画って類を見ないと思うんですよね。それだけ全作品、十人十色の魅力があったってことなんですよ。投票経過をリアルタイムで見てた私が保証します。「これはもう、どの作品になっても納得ですわ」って思ったもん。
ここまで「全作品で」激闘した企画を私は知りません。有名ゲームと有名ゲームの一騎打ちみたいなのはあったよ? でも「参加している“全作品”が、最後まで誰一人離脱せずに綱引きした」企画はなかったはず。そうなったらもう、最後まで戦い抜いた全員に拍手ですよ。

上限を10作品にしたもうひとつの理由

ISMに触れたので、これも説明しておきましょうか。
作品の上限が10だった理由です。
「え? お前のお絵描きキャパシティが低すぎるからだろ?」って?
たしかに半分はその理由。
しかしもう半分はISMの概念によるものです。

スーパーマーケットにて行われた実験なんですけど。ちょっと分かりやすい例に改変して説明しますね。
ある売り場には「りんご味とみかん味のジュース、2種類おいた」。
もうひとつの売り場には「りんご、みかん、メロン、いちご、バナナ、ぶどう、マスカット、レモン、ライム、さくらんぼ、なし、パイン、トマト、ミックスフルーツの14種類をおいた」
さて、どっちの売り場の方が売れたと思いますか?

正解は上の売り場です。

どういうカラクリかというと「人間の情報処理能力には限界があり、それを超える選択肢を提示されると考えることを止める」ということです。その結果「購買という行為自体をやめてしまう」んですよ。
はい。作品数を絞ったもうひとつの理由、お分かりですね?
プレイヤーの皆様に「考えることをやめさせない」ためです。
「すべての作品が注目される場を目指す」と宣言している一絵祭において「プレイヤーが『選択』という行為を面倒くさがる状態」は非常によろしくないんですよ。なぜなら、選択が面倒になったプレイヤーは、何かの要素で選択肢を絞ろうとするからです。それはプレイ時間かもしれないし、絵柄かもしれないし、ゲームジャンルかもしれない。そうして絞った範囲のゲームだけをプレイして終わってしまう。他のゲームは見捨てられる。それでプレイする範囲を狭められたら、企画趣旨的に大失敗なんです。
選択行為が面倒くさくなって、プレイという行為そのものに消極的になってしまうんですね。

さっきのジュースの例をフリゲ企画に当てはめると、こういうことです。
最初から10作品に絞り、すべての作品に触れてもらう→上の売り場
たとえ50作掲載しても、結局8作品しかプレイされず残りの42作品には見向きもされない→下の売り場
味の種類(作品数)は下の売り場の方が多いですが、実際の売上(プレイ数)は上の売り場の方が多い。
さあ、フリゲ一期一絵祭が目指す売り場はどちらでしょう?
答えはもう、書かなくていいでしょう。
「作品数が多かったら全作品プレイはできなかった、10という数はちょうどよかった」という声が複数あったんです。まさしく「計画通り」と某漫画のコマが浮かんだわけでございます。

拍手コメントにて匿名で「上限10作品というのはおかしい!」と長文非難を送ってこられたんですけど、その真相はこういうことです。
この説明を聞いてもご納得いただけないなら、もう考え方が根本的に合わないので、その方と一絵祭の相性が最悪だったということでしょう。

「参加作品数は多けりゃ多いほどいいでしょ」?
まあ、企画の拡散という観点では、もちろん多い方がいいですよ。すべてのフリゲを対象にした総選挙なんて大盛り上がりだったでしょ。
でもね、対象作品を増やせば増やすほど、埋もれる作品も増えるんですよ。品数を増やすのに比例して売り上げが上がるんであれば、全国の小売も飲食も困っちゃいません。お客さんの財布の中の金は無限じゃないんだから。それと同じ。プレイヤーの時間やモチベも無限にはない。

一絵祭は「すべての作品に平等にスポットが当たる」ことを企画理念に掲げていました。
「私の作品、埋もれちゃわないかな…」って不安は、私も経験したことのあるものです。
私と同じ不安を持たなくていいように、参加作品数に制限をかけたのです。
「全作品が埋もれずに輝ける範囲で」「できるだけ拡散力を得られる」作品数を考えた時に、私は「10」としたわけです。

もちろん、参加賞に最も価値をつけるために「全作品にコメントとイラストつけます!」と宣言したことも、もう半分の理由ですよ。参加上限つけた理由の。作品数無限にしていたら、精神と時の部屋にでも行かない限り終わらんですわ。
「金銀銅賞の作品にイラスト贈ります!あとの作品にはなし!」だったら、先駆の企画と変わらないじゃないですか。
「参加した時点で、最も大きな恩恵の獲得権を手に入れている。副次的な効果はオマケでしかない」という企画を目指しているのは、構想当初から申し上げていたとおりなのです。
「優勝者に賞金100万円!」だと、優勝しなきゃ意味がなくなるんですけど、「参加したら1万円確定!優勝したらポケットティッシュもあげる!」だったら「まあ優勝できなくても、参加できたからいいか…」ってなるでしょ。

ただまあ、このポリシーのせいで「応募してやったのに弾かれた!」という人を出してしまい、傷つけてしまったのは事実であって、そこは猛省しています。
「というか、なんでこの理由を期間中に説明しなかったんだ」って?
プレイヤーの方に「全作品やれよ」って圧をかけちゃうかなあ…と思ったんです。圧のかかってる企画には参加しにくいですよ。ましてや第一回という辺境の企画ですよ?

企画をやってみてよかったこと

思わぬインプットに繋がった

自分が普段触れない分野に飛び込んでいくと、思わぬインプットを得られるって話。
あれです、あれ。ゲーム制作会社が「趣味はゲームって言ってる奴はとらない」って言ってるのと一緒。
「ノベルゲームは自分の専門外だな」っていう呟きを見つけたんですが、私からすると、もったいないなあと思います。創作のインプットという意味ではね。
ノベルがRPGに通ずるところもたくさんありますよ。画面のカラーコントロール、固有名詞の覚えやすさ、UI、キャラの差別の付け方、伏線の仕込み方、布石を打つタイミング、視線誘導、SEの使い方、知らないBGMとの出会い、プレイヤーの感情曲線のコントロール、ピクチャの動かし方、テキストのリズム感……例えだけでもこんなにあります。
私が公開しているゲームだって、近代文学に影響されたものですからね。夏目漱石の虞美人草をRPGにしてみた! っていうのは前代未聞だったと思う。そういう個性を生み出すためにも、普段触れないジャンルからのインプットって必要だと思うんです。

かくいう私も、今回、この企画をやらなければプレイしなかったであろう作品がたくさんありますよ。
ですが、この機会にプレイできてよかったです。思わぬ収穫がたくさんありました。
何万とあるフリゲの中から、せっかくピックアップされてるんです。それらをプレイして、普段の自分にはインプットできない技術を盗む機会にするっていうのは大事かなーと思いました。

あとは画力の意味でも勉強になりました。
ファンアートって原則「似せる」ことが必要なんですよ。髪型とか衣装とか、目の形、カラーバランス、肌の色、眉の太さ、ハイライトの位置……そういうのを観察する勉強になりますね。
神絵師は揃って「模写しろ」って言うでしょ? 要するにそういうこと。観察眼をつけるってことよ。
フリゲファンアートは、画力の向上もできる上に作者も喜ぶというwinwinの関係なのである。合法二次創作だぞ、やるっきゃねえ!

自分の作品のプレイヤーが増えた

これは完全に副産物なんですけど、拙作『精神仕掛けの浪漫劇』をプレイしてくださる方が増えました。
もともとコレが目的だったわけではないです。本作の再公開を決めたのは企画が開催してからですし。
でも結果的に、公開停止以前より反応が多かったんですよ。不思議ですね。すでに一度公開したことのある作品なのに。

ほら、小学生向けの「友達の作り方」にたいてい書いてあるじゃないですか。「会話のきっかけとして、相手の持ち物を褒めろ」って。
たぶんそれに近い理由じゃないかなあ。
私が一絵祭の宣伝しまくって、参加者様の作品を紹介しまくってるのを見て、「こいつはどんなゲームを作ってんだ?」となったんじゃないかな。
もちろんこの誘導を狙ったわけではないです。逆に、誘導を狙ってなかったからこそ、私の作品を手に取っていただけたのかなと。
「私の売名のために、他の人の作品を利用しよう!」という魂胆だとしたら、それが透けて見えたと思う。そうなれば応募もないし、参加作品のプレイヤーもいなかったと思うし、当然私の作品のプレイも増えなかった。

なので、自分の作品をより多くの人に手に取ってほしかったら、まずはフリゲの世界において自分ができることをやってみるのも一つの手ですよ、ってこと。


あ、ただ「売名目的で、ろくにプレイもしていないのにベタ褒めする」ってのはやめた方がいいです。それこそ一部の人が親の仇のように嫌う「互助会」「相互」ってやつです。作品公開直後に無条件で星5レビューを付け合いましょう! みたいなのは、多分外から見てもバレます。しっかりプレイした上で絶賛するならまったく問題ないですけど。
作者の方を向いたコメントか、自分の売名という目的を向いたコメントかは分かりますよ。すぐバレます。事実じゃなくて気持ちについてる嘘って誤魔化せませんから。

期間中にも呟いたんですけど、参加作品に感想がついたり、イラストが投稿されたりした時、自分の作品のように嬉しくなったんですよ。「DL数が◯◯超えた!」というご報告に、心から祝福を贈りましたよ。
この感覚こそ「フリゲ一期一絵祭が、月泉きはるの売名を目的としない」最大の証拠じゃないかなあって思うんです。
だからこそ、天邪鬼的に、私の作品を手に取っていただけたのかなって思ってます。

宣伝力の勉強になった

ちょっと一例を出してみますね。初日の「1日1作、作品紹介します!」担当だった『花はじき』をれいに挙げさせていただきます。ただでさえ20000文字越えの記事なので、さくっとひとつ出しましょう。

宣伝の際に、どの層を狙ったかなんですけど。
「6割の人間」です。
どういうことかというと。
あらゆるものや人において、全体の2割は無条件に対象が好きです。2割は無条件に嫌います。残りの6割は分かりません。
ゲームのスクショや紹介文を見ただけで興味を持ってくれる「2割」と、どんなに手を尽くしても相性が合わない「2割」の人にリソースを割くのは無駄。
「どっちに転ぶか分からない」6割を狙います。

DLサイトを拝見した時に、優しく可愛らしい立ち絵や和室のノスタルジーな背景など、柔らかく温かい印象を受けたんです。
だから、そういう雰囲気が好きな層は、私の紹介なんかなくてもDLします。
なら私は別の魅力を推す必要があります。
そこで呟いたのが、これです。

このスクショを解説しましょう。
得点が出てきていますね。つまり花はじきとは、高得点を狙うゲームであることが伝わります。
紹介画面の「温かい優しさ」だけでは食指の動かなかった人へ、「ハイスコアを目指すゲームでもあるんだ」という別のアプローチを仕掛けます。

このスコアを載せたのはもうひとつ理由があって。
既プレイの方はお分かりだと思いますが、上のスコアは全然高得点じゃないです。だって、やろうと思えば全ての札を取れるゲームですから。
ですが、あえてそのスクショを選びました。
スマホアプリのゲームの広告って、たいてい下手くそプレイを見せられるじゃないですか。
あれは「俺ならもっと上手くやれる!俺にコントローラーを貸せ!」と思わせて、DLを促しているんですよ。
だから私も、自分がへたへた民であることを利用したんです。
「私はこれだけしか取れなかった。でも頑張れば札の全抜きもできるっぽいよ? 私は無理だけど」って。
そうすれば、「ハイスコアを狙うミニゲーム」が好きな層に、花はじきを遊んでもらえるとふんだんです。
140文字という制限のある言葉とスクショしか使えない中で、少しでも宣伝力を増すために、自分のゲームの腕前ですら使ったんです。
こうでもしなきゃ、弱小アカの企画なんて届かないですよ。

それでも、己の筆力のなさを恨み続けましたよ。
参加作品の十人十色の魅力を、全然表現できてないんじゃないかって。
でも、試行錯誤だけはしました。
一人でも多くの人にプレイしてほしい。
一人でも多くのコメントがほしい。
それはもう、自分の作品と同じくらい願っていました。
投稿サイトに参加作品のレビューがついていたら、自分の作品のように喜びました。
流れてくる感想コメントも、自分の作品へのコメントと同じくらいにニヤニヤ舐め回していました。
理由は分かりません。でも本当に、自分の作品への前向きな反応と同じくらい嬉しくて。
だから、自分にできる全力の宣伝をしました。
他の方のコメントを見て「そういうアピールもあるのか!」と勉強しました。

私のこの、必死すぎるともいえる姿勢を「凄い熱量」と仰る方がいました。
それは、企画が盛り上がってほしいからでもあるし、一人でも多くに作品を届けたいからでもあるし、自分がもっと嬉しい気持ちになりたいからでもあるし、色々な理由がありました。

でも多分、一番大きかったのは、10作品全部が主役でいてほしいって気持ちです。
私自身が、自分の作品を引き立て役にされて筆を折った経験があるから。
ある作品を、別のある作品の踏み台になんてさせたくなかった。一個一個の作品が、貴重で、魅力的で、あったかくて、大切な、「唯一無二の作品」として扱われる場所にしたかった。

そのために、フリゲから離れていた間に培った、物書きとして、絵描きとしての力を絞り切った。
これ以上出せるものはない! ってところまで出し切った姿を「熱量」として受け取られたのかなって思います。

みんなもフリゲイラスト描こう! 企画開こう!

フリゲ一期一絵祭は、多くの方の支えがあって開催できた企画です。私の想定以上の反響をいただきました。
その理由のひとつは「参加賞としてイラスト確約」という条件があったからだと分析しています。この条件がなかったら、応募は半分もなかったんじゃないかな。
といっても、私は商業絵の一枚も描いたことない、正真正銘のアマチュアです。画力も決して高くない。
それでも30を超える応募があったんですよ。それってつまりこういうことなんです。

フリゲ制作者はファンアートに飢えている

そうです。フリゲ制作者は、あなたの一枚を待っているんです! 正座で! 生唾呑みながら! 呼吸を荒ぶらせながら!(風評被害防止のため以降は自重)
画力がないから恥ずかしい? 私だってアマチュアじゃい! 何なら「下手くそなくせに自作絵でゲーム出すな」って叩かれたことすらあるわ! そんなやつが、自分のイラストを賞品にしてるんだぞ、正気の沙汰じゃねえや!
だからみんなもフリゲイラスト描こう!(もちろん、作者様がイラストお断りを明言している場合は従いましょうね)

そして、一期一絵祭に疑問符をお持ちの方。
「自分だったらこういうルールにするのになー」と思っている方。
自分が主催者になっちゃいましょう!
知名度がないから企画が成立しない? 大丈夫ですよ、私の企画立ち上げ当時のフォロワー数、30人もいなかったですよ。心優しい人が絶対に広めてくれます! 何なら私も微力ながらお手伝いします!
立ち上げよう、フリゲ企画!

第二回フリゲ一期一絵祭について

結論から申し上げると、フリゲ一期一絵祭は今回が最初で最後です。
私が今後、フリーゲームのファンアートを描くこともないでしょう。

イラストを描くって、決して簡単ではありません。私のようなクオリティでも、十数時間はかかります。
参加していただいた皆様に、私の全力の応援を届けるべく、日程を調整しました。公募を捨てました。自分のゲーム制作は一切進めませんでした。これはもちろん、私が望んで、進んでやったことです。実際に楽しかったし、たくさんの学びと出会いがありました。
しかし、いくら自分本位でやっていたことだとしても。

「あいつに傷つけられた。私の作品を否定された」
「DL数とかで足を切る企画なんだね…(ノω・。`)ヾ(・ω・`*)ヨシヨシ」

このやり取りを見せられた時の、私の気持ちを想像してみてください。
ポキっという音がしたんです。何かが。
ああ、私、悪者になったんだ、って。
自分の作品や私自身をを10万文字かけて罵倒されて、フリーゲームを作る筆を折った経験があるからこそ、同じように創作に自信をなくした方への、応援を届けたいと思って始めた企画だったのに。
あんなに忌み嫌った「傷つける人間」「人が大切に生み出した作品を否定する人間」だと思われたんだって。
この人たちにとって私は、フリゲ界から去るべき人間なんだって。
そう思ったらね、ものすごい虚無感に包まれちゃって。
自分の創作を休止して、公募も捨てて、日程を調整して、イラストをお届けしようとした結果が、このやり取りなんだって思ったら。
「あ、これ、無理だ」ってなっちゃった。
だから二回目はありません。

それから拍手コメント使って、匿名でつらつらと批判を並べられたことね。
あれもしんどかった。
「応援してくれる人のボタン」と明記してあるのに、何でわざわざそこから非難を送ってくるんだろうね? きっと匿名なのが都合が良かったんだろうね。

一期一絵祭で傷ついてしまった方、その方をよしよしと励まされた方。匿名でつらつらと批判を送ってこられた方。
あなた方が恨み、敵視し、軽蔑した「フリゲ一期一絵祭」は、これで終わります。この企画を立ち上がるキッカケとなった「月泉きはるという人間が『イラストを通してフリゲ制作者様を応援したい』と願ったこと」も、二度と叶うことはありません。フリゲのファンアートを描くことは、おそらくないのですから。

あなたを傷つけてしまったことが、私にとっていかに不本意であったか、避けたい事態であったのか、それを示すにはもう、これしかなかったんです。

…とまあ、この章のここまでは、騒動の真っ最中に書いた部分です。
今は少しずつ落ち着いてきています。企画やって良かったー! って満足感の方が圧倒的に大きいです。
それじゃあ何で暗黒お気持ち表明を残してるんだよって話ですけど。
フリゲ企画の運営って、ほとんどが無償でやってるものです。
いくら好きでやってる企画であっても、限られた時間を企画に充てて、本人なりに精一杯やっている中で攻撃されると、こんなふうに簡単にダークマターに叩き落とされちゃうんだよって話。それを企画運営をしたことがない人にも伝えたくて、あえて残しました。

新しい企画が立ち上がっては、その運営者をダークマターに落とし、「企画なんて二度とやるもんか!」と撤退させることを繰り返す界隈には、衰退しか待っていないと思います。
企画に限った話じゃないですよ。古参のネットワークを使って、新参が不利で自分が有利になるような情報を流布しまくって、大事な部分は隠したままにして、その結果新参を撤退させる…みたいなことを繰り返せば、そりゃあ他の界隈にシェアを取られますよ。

ただまあ、第2回開催決定! とすぐには言えないかなあ…
企画運営しながら、作品プレイしてコメント書いて、イラストを仕上げて…というのは、仕事家事以外の時間リソースを全部企画に突っ込んでやっと何とかなるレベルだった。
楽しかったというのと、ちょっと休ませて…という感情は同居しうるものだと思います。
でも、さっきのダークマターの時には思ってもみないほど、たくさんのご支援をいただく企画に育った実感はあって。
一瞬の炎にしちゃうのは名残惜しいって気持ちも出てきています。

でも本当に数ヶ月間はないからね!
自分の創作を1ヶ月間止めていたので「作りたい!」欲が強いってことですね。書きたい小説もあるし、ゲーム制作も進めたいし。夏の児童文庫合戦も開幕してますしね!
何度も言いますけど、創作を止めて企画を優先したのは紛れもなく私の意思なので、ネガティブを押し付ける意図は一切ないですからね!

一切の文句を言うなって言ってんじゃないのよ

別に「主催を神と崇めよ! いっさいの文句も意見も受け付けない!」って言ってるんじゃないですよ?
実際に「コメントが投票する3作品にしか送れないのはどうなのよ。全作品に送れるようにしたら?」というご意見は「その通りだ」と思ったので、フリーコメントを追加しました。

じゃあ嫌な意見と耳を傾ける意見の違いって何なのよって話ですが。
「企画の趣旨や目的をご理解いただいているか」ってことです。
フリーコメントのご意見は「全作品が平等に注目される場を目指す」という企画趣旨をご理解いただいているからこそ出たものだと分かります。
一方で「審査基準を公開しろ」「上限数を撤廃しろ」などのご意見は、企画趣旨をご理解いただいているとは思えません。企画の根本を否定している人の意見なんて聞きたくないですよ。

あれです。精肉店に対して「できれば鶏肉も置いてほしいな」っていうのと「何で苺を置いてねえんだ!果物の扱い増やせよ!」っていうのの違い。
精肉店という看板見えてます? って話。

審査基準を明確にしてほしいなら、フリーゲーム夢現さんのフリーゲーム大賞なんかは計算式を明示していますし、ふりーむさんのフリゲオブザイヤーはDL数と可視化された数字を使ってるので、そういう企画へどうぞ。
上限があるのが気に入らないなら、上限のない企画に応募すればいいだけの話。ゴロゴロありますよ。
精肉店に来ておいて果物がないことを騒がれたら「スーパーなり八百屋さんに行ってください」としか言えないんです。

今後、企画をやってみたいと思う方へ、私の失敗からアドバイス

結論からズバッと書いちゃいますわ。
「応募フォームに『要項読んだ? HP見てくれた? ルール把握した? 同意してくれた?』ってチェックボックス作れ!」
「できればHPや要項を第三者に見てもらって、不明瞭なところがないか聞け!」
「運営の立場上、強く言えないこともあるだろうが、嫌なものは嫌だという意思表示すべき!」
「名前を背負って発言できない人のお気持ちは聞かなくていい!」

一個目と二個目は解説不要!

三個目! 運営の立場に立つと、強い言葉は使えないぞ! 参加者を萎縮させてしまうからだ! 大切な作品をお預かりしてる立場で暴れられない!
だけど、嫌なものは嫌だと言った方がいい!
嫌だという意思表示をしたのに、それでも続けてくるなら、そいつはもう「企画応援者」の建前を失う! ただの嫌がらせ悪質クレーマーだ! 嫌だと分かっていることをする=悪意があるという証明だからだ!
悪意ある嫌がらせ悪質クレーマーをブロックしたり無視したりしたところで罪には問われない!
実際「匿名のコメント機能で好き勝手文句言ってくんな! 返事が必要な内容は問い合わせから送れ!」って言ったら、長文お気持ち拍手コメントはピタッと止んだぞ! 意思表示大事!

最後に四つ目!
匿名でコメントできるツールを作った場合に限る話だが、その機能を使ってネガティブキャンペーンする人の話は聞かなくていい! 聞いたとしても話半分でいい!
その意見が正当なものならば、自分の名前を背負って発言できるはず。実際、フリーコメントのご提案はメールフォームからしてくれた。一方、上限があるのはおかしいだの、審査基準公開しろだの言ってきたのは、いずれも匿名拍手コメントからだったぞ!
自分の名前=責任を背負って発言できない人の非難やお気持ちが、あなたの意図を汲んだものである可能性は限りなく低い。
本当に「企画をよくするために提案したい」のであれば「主催者はどういう意図でこういうルールにしたんだろう?」というのを確認しようとするはず。それならば「主催者と言葉のキャッチボールができる手段」で接触してくるはずなんだ。DMなり、メールフォームなり。ドッヂボールを選んでいる時点で、あなたの考えなど聞く気がないってこと。そんな人の批判が、あなたにとって有意義なものである可能性は低いと思います。

最後の最後でやっと口調が戻りました。
先駆者のベテラン勢からのありがたく貴重なお話は、もちろん助けになると思います。
でもね、一人くらい、初心者やらかし人間からの話も聞いておいた方がいいよ!
フリゲ企画界のしくじり先生と呼んでくれたまえ!

企画に参加してみようかな…という方へ

主催を経験した者として、企画への参加を検討されている方へ伝えたいこと。
まずは、ぜひ参加してほしい!
主役なくして企画は成り立ちません。どれだけ立派な建物を作って、素晴らしい立地を選んで、
大々的に宣伝しても、肝心の商品がなければ商売になりません。企画主は、あなたと、あなたの作品という「主役」を求めています。

そしてもうひとつ「企画の全体最適を考えてほしい」
どういうことかって?
一絵祭を開催して、特に嬉しかったことのひとつが、「参加者様がお互いに作品をプレイしあってくださったこと」なんですよ。
中にはファンアートを描いてくださる方まで。
これが本当に嬉しかったし、主催としてはすっっごく有り難かった。
主催は、その立場上、中立でなければなりません。明らかに片側が一方的に悪いトラブルならいいんですけど、実際は複雑な場合の方が多いわけで。
参加者同士でのトラブル、互いの蹴落としあいみたいなのは、主催にとって最も怖い事象のひとつ。
そうなれば企画自体の評判が下がり、作品と作者様、主催にあらぬ悪評がつくことも。

ですが、一絵祭の参加者様は、皆様「一絵祭自体を盛り上げよう」としてくださったんですよね。
自分の作品だけが目立てればいい。
私へのコメントだけがたくさん集まればいい。
私が一番であればいい。
そういう考えの人っていなかったと思います。そうじゃなきゃ、他の参加者様の作品プレイなんてしないでしょ。
「他の方の作品にも触れて」「一人でも多くの人に企画を知ってもらって」「結果的に自分の作品のプレイヤーも増える」
こういう「全体最適サイクル」を作っていただけたのは、本当にありがたかったです。

ですから、ご自分が企画に参加された際は、ぜひ、他の参加作品に触れてほしいです。
参加者様同士の空気感が温かいというのは、主催者にとって大きなメリットです。それに、あなたの感想ポストから企画を知った人が、あなたの作品に触れてくれるかもしれませんよ。

「それじゃあ、参加者にしてほしくないことは?」

……思いつかん!
いや本当に、一絵祭は参加者様に恵まれた企画だったので、不満とかないんですわ!
参考にならなくて、すみませんなのですわ!

最後は明るい話しよう!

前の項目で反省会を締め括ったらバッドエンドじゃないですかやだー!「すみませんなのですわ!」じゃないんですわ!
明るい話しましょう! よかったこと言おう!

開催期間中に、妄想コンテストで準大賞をいただいたんですよ。

この2作が準大賞をいただいた作品です。なんと2連続で準大賞をいただいたんですよ! ビックリですわ! 500〜800の作品が鎬を削るコンテストでですよ! 本人が一番驚いてるわ!
精神浪漫をプレイしていただけた方からは「まーーーーーた大正時代もの書いてんのか」って飽きられそうなんですけど、こっちは漱石後期三部作の色が強くて、精神浪漫は前期三部作の色が強いので、読後感は別物です。要するに『贖罪』はわりと救いがない。「重苦しいやるせなさ」という選評をいただいたからねワッハッハ!

私が明治末期〜大正時代ハアハア( *´Д`)なのは関係なくてですね。

受賞報告ポストをご覧になった参加者様から「妄コンに興味をもった」と言っていただけて、それも嬉しかったなあ。
フリゲ専門だった人に小説という表現方法を、小説畑の人にフリーゲームという世界を、ご案内できたのが満足感あって。
私、「名声の欲求は小説で満たし、性癖晒す欲求はゲームで満たす」って棲み分けしてるんですけど。同じように「小説とゲームの二刀流!」という方が増えてくれたら嬉しい。「あと3日でゲ制デーだよ!」「まずいよ!妄コンの〆切だって明日なのに!?今日は缶詰だよー」みたいなやり取りできたら幸せ。

もうね、フリゲ制作者で妄想コンテストにカチコミかけましょう。100文字から応募できるんで、創作の合間に書けますよ。いけるいける!小説専業じゃなくて、フリゲと二刀流でも選考して貰えるし受賞できるのは証明されています!
しかも『愛を喰う』に至っては、受賞時本棚(ブクマ)ゼロ、スター(いいね)ゼロでしたからね! 小説界隈での人脈ゼロでも審査していただけるんですよ、エブリスタ様のコンテストは!
そうして賞を総なめして「なんだこいつら!? え? フリーゲーム制作者!? フリーゲームってこんなにクオリティ高いの!? ちょっとプレイしてみるか!」って小説畑さんを引き込もう!他界隈の人をフリゲの住人にする前に、まずはフリゲ住人が他界隈に歩み寄ればいいんだ!
…深夜に記事を書くと、すーぐこういう馬鹿げたこと書くんだからー悪い癖よ? やめましょうねー(翌日の私より)

だんだん私の願望語りになってきましたが、こういう「新しい界隈」との「ご縁」を結べたのは、予想以上の成果だったと言えます。一期一絵祭真っ最中というタイミングで準大賞に選んでいただいたエブリスタ様に、一生足向けて寝られませんわ…

…そうそう、最後に一個。

この子いたでしょ。ほら、いちおうフリゲ一期一絵祭のマスコット? イメージキャラ? みたいな立ち位置だった。

最後まで名無しだった!!!!!

最終日に可愛すぎるイラストを投稿していただいてから気がつく阿呆ぶり!!!!!!
本当にしょうもない主催者だよ!!!!この子を最初に書いてから数ヶ月あったのに、なんで最終日まで名無しで進めたし!!!!!

「じゃあ苺衣千絵ちゃんとかどうです?」
「3秒で考えたことを隠さないネーミングやめろや!」
「いいえ、1秒です✌︎('ω'✌︎ )」
「そこでドヤるな! もう閉会してんのに意味ないだろ!」
「第2回をやれば活かせますよ閣下!」
「世に出しても恥ずかしくない名前が出来てから考える!!!!!」

反省会を間抜けな話で締めくくる、これぞフリゲ一期一絵祭クオリティ!

こんな主催による企画なのにハッピーエンドで終わったのは、参加者様、プレイヤーの皆さま、応援してくださった皆さまに恵まれたからです!
ありがとうございます!
本当にありがとうございました!

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