蛮族700字シャッフル企画
kihakuです。5月16日(火) ~ 5月21日開催の「蛮族700字文体シャッフル・リデザイン」主催でした。
今回のお題は「走」と言うことで、v vetmanさんから提供いただいたお題の一つでした。前回に引き続き、なかなかに波瀾万丈な作品群になったと思います。
ですが、忌憚のない批評を超えて作品批判から作者批判にまで発展しかねない状況は危惧していました。姿が見えないからフラットな批評ができるのはいいと思いますが、勢い余って作者批判まで踏み出しかねない風潮はやめた方がいい。
『この作品面白くない』までは許容されても『このつまらない作品を文体でやった人は [以下ネガティブ表現] 』は作者批判にあたるのでアウトです。面白い文を書く気で書いたとは限らないのでね。
一つ。確実に言えるものがあるとするなら、「貴方の語りの理解に必要な前提知識が相手にあると思うな」でしょうか。私はこれを3KJPコンテストで痛いほど実感しました。これは個人的に思う意見ですが、人間は自分が理解できないものは基本面白くないのです。私自身、面白いと感じるハードルは低いですが、面白いポイントが前提知識に依存している作品を、前提知識を知らずに読んで面白いと思えたことはあまりありません。「面白い」と思えたものは、前提知識を借りずとも、本文の語彙や独特な世界観で読者を惹きつける作品が多いです。
文体企画は読みにいくと言う能動的な動作を行いますが、文体とはいえ人に読ませる読み物を書くのだから、読者に、読みにいったんだから調べろと言う論説も適当ではないように思います。難しいですね。
読み物、それも超短編かつそれのみで独立する作品群において、知らない前提知識をわざわざ仕入れに行ってまで読み直す人は少ない。そもそも、二次創作における正解をたびたび本家文体で示してくれている方もいますから、書くのであればそれを超えるつもりで書久野を目指した方が良いと思う。以下つらつらと……
とまぁ今回は二次創作が頻出したために、こう長々と前文を書き連ねましたが、こんな黒い塊を読む人も少ないでしょう。そもそも文体企画にはいろんな意図で参加しているんでしょうから、ここまでもこれからの内容も、これを正論として押し付けるつもりはありません。
私は今回文体作品が「面白いかどうか」や「表現で引っかかる箇所はあるか」と言う問いをされた際、すべて主観で感想を述べましたが、構成は口を出していませんでした。ただし、この批評という文化は本来の文体シャッフルにおいて存在し得ないものだと考えています。与えられたお題に持ちうる表現を注ぎ込んで吟味して自信を持って提出すべきだからです。
ですから今後、批評文化は無くした方が良いと提案します。私は感想を求められた際、「面白くない」とは言えませんでした。また、大抵の二次創作作品の前提知識をたまたま持っていたのも良くなかったのでしょう。これはこちらの落ち度です。申し訳ない。
さっさと本題に入りましょうか。
まずはテーマ「走」について。
「走」の調理方法
蛮族の皆様は、ある動作、名詞などを表す漢字一字スタイルに弱いように思います。特に今回は「走」という動作以外の何者でもないからです。もちろん慣用句としての「血走る」、「虫唾が走る」であったり速度の比喩としての「走り抜ける」であったりと、使い方は自由なわけですが。このページトップのイラストのように、サバなどの腐りやすいものを「足が早い」とも言いますしそこから繋げられるかもしれません。(イラストはカジキマグロの切り身)
しかし調理方法は多いと感じます。「走」の動作一つをとっても、乗り物から動物、逃げるから追うまで状況は多種多様。走れないものに足を与えて走らせる世界観でも良いし、走る何かに乗っかってその風景を実況するのも良い。怪異だって走るもの多いですし、ホラーにだってできますね。
蛮族の皆様の作品は尖っているので、やりよう次第でいくらでも化けると思います。
臨場感やスピード感を意識した作品、もっと出るのかなと思ったんですけどね。
文体感想及び批評
軽く批評を受け持った作品に関しては、改めてここで批評します。
No.1
文体感想で言われていた擬音語「たったたーん」のリアルさの問題。私はブロードジャンプに詳しくはないのですが、下の動画を見ると確かにそういう踏切音にはならなさそうですね。
さて、この作品は提出前にDMで見せていただいて、提出作品には表現の修正などが入っているのでここで軽く批評をします。
まず、前半と後半の対比構造は好きです。ただし、区切り線で区切っているのに加えてさらに空白を開ける必要性には欠けると感じています。なんともおさまりの悪い見栄えになってしまっているように感じました。区切り線も空白も、場面転換や時間経過の表現に使われ、双方が同じ意味を持つからですかね。
当初 、前半の
踏切の一歩前。
たったたーん。
踏切線を超える。
の文章における「踏切線」が単に「踏切」と表記されており、踏切に飛び込んで新記録だと誇るアホにしか見えなかったので一応聞いたら陸上の踏切板のことでした。提出作品では修正されていましたね。
また、後半の飛び込みに至る理由の箇所は、情景の対比で見せるこの文に対してあまり重要な要素ではないように感じますから、あまり明確な描写をする必要はなかったのではないかなとも感じています。むしろ、「慰み者」という単語のどす黒さやインパクトがこのお話のノイズになってしまっているように感じました。査読当初は特に気にしませんでしたが、
一番楽だったのは飛び込みだった。
線路前で練習。
準備万端。
久々に靴を履く。
スニーカーですらもう馴染まなかった。
の部分。線路前まで貴方は靴下で歩いてきたんでしょうか。細かいところはままありますが、これは今回の文体作品の中でもかなり好みの部類です。綺麗に収まっている。
No.2
蛮族文体最初の提出作品です。
この主人公は生き残れたのでしょうか。タイトルの「奇襲」から考えるに、逃げる猶予を与え多様に見せかけて自爆した結果、結局主人公も巻き込まれて死んだ? いやでも熱気だけならワイスピとかなら生き残るな。生きてるのだろうか。どちらにしろ、奇襲が指す意味がいまいち掴めませんでした。一応、今回の700作品の中ではしっかりと「走る」を描写している作品だと思います。逃げる手段としての走る。いいですよね。命を燃やして瞬発力に変えてるのが最高だと思います。安定した技量でしっかり書かれた作品だと思いました。
No.3
私の好みに合っていて、個人的には好きな作品の一つです。そう気を落とさないでください。
「走り疲れたのかも。足を休めに」の箇所は部活の時は部活動のことを、現在は社会の中で足を止めずに走り続け、今日、カフェに来て少し足を止めている……といった認識でいいでしょうか?
と私が聞いて合っていたっぽいので、今回の「走」に対する答えとして上手く文章に落とし込めていると感じました。
カフェ特有の、静かに会話が進んでいって、たまにコーヒーカップのかちゃりという音がなるような、そんな雰囲気を感じました。そもそも私はこういう、都会で社会の波に疲れて帰省した先で、旧友や幼馴染に出会って現状を俯瞰できるようになる展開がとても好みなので、私の中では高評価の作品なんです。
惜しくらむは、旧友がこのカフェに訪れた理由として作者が語ってくれた「幼馴染かつカフェの常連で、マスターから連絡を受けて大急ぎで店に来た」という甘酸っぱい描写を行うには、700字はあまりに短いという点でしょうか。現状ではこの結構重要なスパイスを読者に想像させることはできていません。また、話の主題が恋模様になっている中で、最初の学生時代と今との対比で出してきた部活動の要素があまりにも取り残されていて、そこを書くにもやはり、700字は短すぎるようにも思います。
私自信カフェでバイト中のみではありますが、こういう硬めのプリンが出てきそうなカフェでのんびり働いてみたいものです。
No.4
ニートに共同生活させて食費も2倍。流石に働かざるを得ないだろうってことかな? 蠱毒ですか? 「三秋芸術大学」に元ネタがあるのか分かりませんが、主人公は芸大に落ちたので経済学部で燻っているんでしょうか。
芸大は基本的に浪人が当たり前の世界です。親に浪人を許されない家庭であれば一回落ちたら諦めるといったことも考えられますが、本当に芸大に行きたい人は浪人なんのそのでやっていく人ばかりです。特に私の周辺には6浪が当たり前の人もいましたからね。この作品は主人公の背景を匂わせている割にそこら辺の描写やリアル感がないのでnfmでした。私の周辺環境と照らし合わせた結果、共感できない。そもそも芸大の赤本は付箋びっしりになることは稀です。付箋びっしりになるのは工科、建築系であって、それこそ経済学部に入れる学力でしっかり勉強した痕跡があるなら落ちることは稀なんじゃないかな。実技試験のせいで世論一般のFラン枠だし。
そもそも本当に行きたい大学を諦めた人間が、ハロワに行って分岐器で別路線に行ったとして、そこで続くのでしょうか。ここはもう個人差かもしれませんけど。
No.5
私の作品です。概ね好評だったようで安心しました。主催なので、「走」を全面に押し出した作品を書きました。主催がお題から逃げるわけにはいかないですから。
感想で、前半にとっつきにくさを感じると言われました。確かに読み慣れていないとそうかもしれませんね。しかし私は今回構成を重視して書いたので、ひとまずそこは切り捨てていました。「紙芝居風」と表現されてなるほどな、と。
今回の場面は、東部戦線お馴染みの膠着した塹壕線。正確なモチーフはありません。主人公は今日も今日とて前線を押し上げるために戦場を走り、やむを得ず戦況に対応して放棄撤退します。
構成は大きく分けて3つ。《前進 → 停滞/通信 → 後退》 です。前身と後退で表現を反復させる試みです。最後に『同じ壕。三年目の春が来る。』で綺麗に締めるのを目標に執筆しました。主人公はただ必死に走るだけ。走らざるを得ない環境にいるだけ。走る、という行動に理屈は要りません。
前進と後退の描写で差は設けませんでした。3年も同じ行動をしているため、当たり前で無機質な感情を抱かせるためです。これは敢えて平坦を描くのが大事な文章だと思います。それ故の「日常」です。
私は最近、文章の起承転結を第一にプロットを組んでいます。とにかく『起』か『結』にキラーワードや綺麗なオチを持ってくる、これを意識しています。そして情景を思い浮かべやすくする書き方や、映画のシーンの書き起こしのような書き方の模索も。前回の蛮族文体『花』回の短歌作文もそれを意識していました。オチが綺麗でしょ?
喊声(かんせい) → 震天(しんてん) → 転進(てんしん) → 生還(せいかん)
といった言葉遊びもしてみたり。 今回は自分の作品が気に入っています。
No.6
作品提出が少なく、複数参加アリにしようか血迷った際に恐れ多くも書いてくださった2作の作品の一つです。この作品は初手のインパクトが全てですね。人と一緒に初見でゲラりたい文です。あと、題名の使い方としてフックが完璧なので暴れ枠じゃなかったら手放しで褒めてました。あと半角カタカナは余程のことがない限り全角カタカナと併用しない方がいいと思います。せめて統一せい。二次創作ではあるけどまぁ、初見で笑っちゃったので負けです。
提出前に面白いか聞かれた時に、「頭空っぽになる。面白いよ」といった俺が全てです。深夜に読むべき文ですね。深夜なら多分5回くらいなら笑える。二度目以降は味がしなくなってきます。そしてその状態で読む最後の「オトモダチ」は私の肌は鳥肌が立ちました。羽が生えそう。
『赤い屋根の特徴的な二階建ての一軒家に大声が響く。』
は読みにくさがあるので
『赤い屋根が特徴的な二階建ての一軒家に大声が響く。』
の方がいいと思います。
No.7
数少ない直球勝負枠。若干直球勝負しすぎたきらいはあるものの、周りがイロモノすぎて逆に目立つ。レースを書くのであれば、もっとスピード感が欲しいですね。スピード感が出せれば臨場感はついてきますから。そのためにはvさんやろくろうるさんのように体言止めを多用したり、短文をいくつも並べたり、セリフとそのセリフを説明する描写の前後を入れ替えたり……いくらでもやりようはあります。
また、レースゲームはどんでん返しのドラマを期待してしまうので、順当に競り合いで勝つのはいささか拍子抜けの感がありました。私の場合はクラッシュでデスゲームにでもするかもしれない……好みの問題でしょう。
No.8
以下査読時の本文↓
-----------------ココカラ
ロマンチズムという名の揺らめく妄想に没頭する若者の初夏。人生という海原を進むティーンエイジャーの航海は、自由に見える。しかし、航海を止めた人間は、走錨した船がごとく無自覚に流れ任せの事故を起こす運命だ。
でも、それでも、その事故をも笑い飛ばし、自らの糧にする心持ちがあるならば。
走り抜けろよ。青春。
-----------------ココマデ
この文に対して私は、
『走錨が押し流されることを指すので走る感がなく、「走り抜けろよ。青春。」で締めるには疾走感がない気がしました。 帆船の帆が順風満帆で膨らんでる感がないというか、前半の「ゆらめく」や「没頭」という表現が邪魔しているように思います。内容面では特に文句もレギュ違反もないです』
と返信しました。
「走」というテーマに対して、「人生を走りぬける」と取る作品は多く見受けられました。この作品は、船を走らせるという意味も持ち合わせていて、人生の比喩にもなっているんだろうなと考えていました。ただ、どうしても蛮族文体『花』のNo.4と比べると未熟な感が否めないなと感じました。「走錨」という表現で明確に「走」が出てきてしまっているのも問題かもしれません。上の批評文にあるような意味を持つ単語のため、どうしても青春を駆け抜けるという一般的な「走」イメージを上回って「走錨」が出てきてしまいます。本題ではなく表現の一つなのにも関わらずです。オチが霞んで見えてしまう……ということです。
でも出してくれてありがとうございます。提出作品がマイナーチェンジ版でよかったですよ。二次創作出されてたら他作品に呑まれて霞んでたと思います。
No.9
題名を真面目に有効活用している作品。
題名というのは最初に目につく分、読み終わる頃には記憶から薄れています。ですから、作品の末尾に置く一文や主張を題名に据えるのは大きな利点です。ただし、いくらアイデンティティとはいえ、『などといみふめいの供述をしており』は読みにくすぎました。題名なら尚更。ひらがなが繋がりすぎると日本人の脳は拒否反応を示し始めます。どこで切ればいいかわからないからです。さらに、題名として独立しているため、ここにひらがなを用いることで印象が変わるといった効果はあまり見込めないでしょう。読みにくさが先行します。日本語において漢字が五つ並ぶと、日本人の脳はそれを中国語だと認識し始めるそうです。文字の効果というのは面白いですね。
内容面としては、「走」を要素分解して、「追う」と「追われる」という関係を作り出している点がテクニカルだと思います。もっと他の人も、動作の要素分解はすべきですね。後半の落とし方は好みです。前半は特にはないです。
No.10
宗教的な話? 輪廻だろうか。読んでいて足の感覚がなくなってきたというあたりで、巷で噂の”感覚遮断落とし穴”味を感じた結果、真面目な話が頭に入らなくなりました。
わからん。すまない。
No.11
前提知識が全ての文。知識がなければ何を話しているかわからない。私はわからなかった。よって面白ポイントも私には発見できず、調べてみた感じでもいまだにイマイチわからない。宗教の話は総じて膨大な前提知識の上に成り立つので、固有名詞を出すのであれば最大限読者に寄り添ってください。あるいは知識以外の独立した要素で勝負するか。読まれません。
せっかく二次創作するなら布教させてやるくらいの気概で書きましょう。これだと本当の意味での布教になりそうですけど。
No.12
サンリオキャラを知らなくてもまぁ勢いでなんとかなるとは思いますが、話の中にしっかりとキャラの容姿や知名度が盛り込まれてしまっているため、これもサンリオ未履修読者に優しくない作品だとは思います。そもそも、ハローキティのポップコーン屋さんを知ってる人はどの程度いるんでしょうか。
「焼き立てのポップコーンはいかが?」のフレーズだけ嫌に耳に残りますよねあれ。なんか聞くところによれば、あれのRTAも存在するらしいですね。人間、極めようと思えばなんでも極められるということでしょうか。ぜひみんなも文体も極めましょう。
No.13
これは通すかだいぶ迷いました。フォームに地の文のみ(題名なし)で送られてきたため、「走」がどこにあるのか全くわからなかったのです。そのため一度本人に凸り、「今回のテーマ「走」はどこに含まれますか?」と聞きました。
結果、『私が過去に遭遇した最速終了試合で、全体的にスピードプレイで走り抜けた』ということでした。私は本家人狼に詳しくないためこの試合が爆速終了するものなのかはわからないのですが、このように疑問を呈すので前提知識を有する題材はあまり良い手とはいえませんね。
『任意ですが題名がつけられる(題名でお題をどう調理したか伝えられたりする)のでスピードプレーで走り抜けたってことが伝わる題名かなんかがあった方がいい』と助言をして「日没は1分半後」という題名がつきましたが、知識がなければ日没がなんの指標かわからないのでやはり爆速プレイであるという情報は伝わらないでしょう。
これを通したのは、初参加ついでに辛口批評でスパルタ訓練してくださいという意味がこもっていたりします。
内容がただ単にゲームの書き起こしになってしまっているので、ここに一捻りする要素が必要かもしれません。今回の周りの作品を見ればわかりますが、実体験は書かず、元にしていたとしても緩急の両方、またはどちらかを明確にした作品が多いです。わかりやすい魅力や見せ場を敢えて作るのです。
No.14
問題作。何が問題作かっていうと、今まで散々噛まれまくったガムだから。そろそろ普通の短歌は通用しません。だから私は前回一本の作品に短歌を組み込みました。
……まぁ、わかります。締切6秒前提出かつ、30分未満ジャム。discord上に「やれ」スタンプも付けられている。
弁明の余地はあるでしょう。出しただけ偉い。でも短歌一本は相当なパンチがいるって!!レギュで晒すって書いてあるので、晒しますね。すまん。
No.15
果たして元ネタがあるのかないのか。私には判断できかねますが、まぁなくても作品として自立はしてますね。アポトキシンみたいなやつでも飲まされたんですかねこの主人公は。アントマンを彷彿とさせます。第二ラウンドってあれだよね。ベッド行きだよね多分。私がBLだと思ったのでこれはBLです。
No.16
東方の知識いるやつ? 中途半端な知識なのでお空のあの八卦砲(いま名付けた)しか分からない。作品の雰囲気は好きです。東方新作出たよね。ダンマクカグラが終わるとどうなる? ダンマクカグラが始まる。
No.17
「血走る」という一文にのみ用いたと思われるピーキーでジャンクな逸品。これ前提ある作品ですか? あまり私の琴線には触れなかった。ただ文章としてはしっかり展開を書いていていいんじゃないでしょうか。
No.18
夢に中のカオス空間、取り止めのなさをよく表現できていると思う。『漫画みたいな手榴弾』はまさに漫画の手榴弾の可能性もあるのか。パプリカ世界ですね。平沢進の曲が合いそうです。
細かい表現でいくつか気になる箇所があります。
『利き足の筋肉を全力で強張らせて、跳躍。』
強張らせるって表現だと、足が棒になったような、今にも足が攣りそうな雰囲気になりますね。
『爆弾をポッケから取りだして。描かれた鱗を嘲りながら、その口に爆弾を放り込んだ。』
前半は手榴弾という表現だったのにいつの間にか爆弾になっている。統一してほしかった。もしかしたら夢の移り変わりで変容したのかもしれませんが。
さて、まぁいいかと許可したが、主題が「走」よりも「跳」になってないかなこれと言う気もします。
No.19
「走る」でしっかり答えてくれている作品。読んでいて思ったのは、ちょくちょくなんかの曲の歌詞みたいな文があるな……ってこと。元ネタがあるのかは知らない。特徴的な読点の位置ですね。これをみていて思ったのですが、普段なら忌避される読点の多様は、息切れの描写にすれば今回合法で使えたんじゃないかということ。
内容は、明言しない表現で話が進んでいきますね。雰囲気は戻れない寂しさと埋まらない胸の穴の感覚にあっていて好みな文章でした。
No.20
はい。今回の「走」の使い方で思わず納得した一作です。よくこれで出しましたね。RTAエミュが多分完璧。文体に出すからこそ輝く作品なので、この作品の内容に文句はありません。ありませんが、別に文体提出の設定でなくても書けるやろこれ書ける人は……と思いながら作品をページに貼り付けました。
やるやんという気持ちと、やりやがったなという気持ちに板挟みされています。これをTOPに立たせた蛮族諸君はマリアナ海溝よりも深く反省してくださいね。
謝罪
黒蜜砂糖さんの作品が手違いで掲載されていませんでした。申し訳ありません。彼の作品はしっかりと「走」に答えていたので本当に申し訳ない。確認を怠りました。おそらくリビジョンを一度差し戻した関係でペーストが無かったことにされました。多分。ぜひ個人で掲載して欲しいな〜と思っていたりします。
総評
さて、総評です。
蛮族の飛び道具(笑)の風潮はそろそろ許されなくなりつつあります。私達は読者である前に創作者としてこの場に立っています。創作は読み、見る客がいます。文体シャッフルと言う、一本の作品群に紐付かないために一作一作が独立する場において、その客を切り捨てて、置き去りにして自己満足の作品を創作とは言わないと思っています。まぁ練習の場である前提は変わらないので強く言えることはないんですけどね。
文体シャッフルはいわば、自身の執筆力の実力テストです。私は基準を「テーマから逸脱しない」という面においており、説明ができるなら通してあげようという感じで主催をしましたが、ここまで二次創作で溢れるとは思いませんでした。
文体企画はあくまで文体を見る企画ですから、面白さは確かに付属品かもしれません。面白い文を上げる必要があるのか? と言われればその限りではないでしょう。ただ、面白みのない文を書いたら、そういう文を書く人だという認識は多少付いて回るでしょうけど。
特に二次創作は元の作品の良さを継承する、あるいは逆手にとって昇華させる物です。敢えて二次創作で書いたなら尚更気を遣って然るべきです。決して、その面白みが外に伝わらないようでは到底良い二次創作とはいえないのではないでしょうか。財団のTaleだってそういった側面の評価基準が多いでしょうし。
また、蛮族は発展性の限られたお題の調理方法が下手な印象があります。開催して残ったのは、普通に私が『美』のようなお題を設定すれば良かったのかなと言う後悔です。
最後に、自分の作品に自信を持ってください。生み出された作品が報われません。あなたの作品の最初のファンはあなたです。私は失敗したとは思っていても、常に自分の作品に可能性があることを信じて出しています。
「出さない神作より出す駄作」とは言いますが、あなたが駄作と言ってしまったらその作品は他者に認められても抜け殻な気がします。
以上。