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【コぐるみ創作バトル!】ぶどうパンは好きじゃない~後半~

この創作は【コぐるみ創作バトル!】の作品になります。
※詳しくは下記をご覧ください。


【第三弾】
①前半イラスト(着ぐるみ)
②物語前半(コッシー)
そして今回は③完結編。

第一弾、第二弾はコッシーが先攻でしたが、
第三弾は着ぐるみ先攻で作ってみました。
ラストシーンのイラストを先に描いてから、コッシーが物語後半の文章を書きました。
どんなイラストでも味わい深い物語にしてくれるコッシーかっこよし!✨
後半もお楽しみに!


という訳で、さっそく物語本編へどうぞ。



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おばあちゃんを責めてしまったあの日からぶどうパンが私たちの前に出てくることはなかった。妹たちは急に出てこなくなったぶどうパンに何かしらの異変を感じていたと思うが、私に気を使ってか何も言うことはなかった。むしろいろんなパンを食べられるようになって喜んでいたのかもしれない。私はおばあちゃんに対する後ろめたさからかどのパンを食べてもあまり美味しいとは思わなかった。

私は何度もおばあちゃんに謝ろうと思った。けれでも自分の気持ちを上手く伝える自信が持てなかった。ぶどうパンは好きじゃない……けどぶどうパンを出してくれるおばあちゃんの気持ちは好きだった。そのことをおばあちゃんに分かって欲しいと思っていたが、おばあちゃんに酷い言葉を浴びせた私が今更何を言っても無駄な気がした。

おばあちゃんを責めたあの日から私は自分の本当の気持ちを隠すようになった。家族や友達にさえ自分の本音を言うことはなかった。おばあちゃんの時のように悲しい気持ちさせるくらいなら自分さえ我慢すれば良い、そう思って生きてきた。


おばあちゃんに謝ることができないまま数年の月日が流れた。高校生になった私は自分の将来に対してある願望を抱いていた。もちろんそれを誰かに話すことはなかった。叶えられる自信は無かったし、話したところできっと笑われるだけと思っていた。諦めようと思っていたが、日に日に想いは強くなっていった。その頃からおばあちゃんの夢をよく見るようになった。忘れたくても忘れられないあの時のおばあちゃんの悲しい顔を夢で見る度に私は暗い気持ちなった。まるでおばあちゃんから責められているみたいで強い自己嫌悪を覚えた。優しいおばあちゃんがそんなことするはずないのに。


そんなある日、おばあちゃんが何かの用事で家に訪ねてきた。大きくなっておばあちゃんの家にあまり行かなくなり、おばあちゃんと会うのは久しぶりだった。少し痩せたように見えたおばあちゃんだったけど、相変わらず私たちには優しかった。たくさん差し入れを持ってきてくれたけど、その中にぶどうパンは入っていなかった。私は最近見る夢のこともあって、それがなんとなく気になって私はふと思った。

おばあちゃんに謝ろうかな。

おばあちゃんがこの先もパンを買う時にわざわざぶどうパンを避けるのは、なんだかとても悲しく思えた。最近おばあちゃんの夢をよく見るのは神様から「謝りなさい」と言われているような気がした。私は意を決しておばあちゃんに話しかけた。

「おばあちゃん、あのね。私おばあちゃんに謝りたいことがあって……。えっと、その、昔ね、おばあちゃんの家でね、えーと」

どうしても自分の気持ちを上手く伝えることができない。しどろもどろになり言葉に詰まる私をおばあちゃんは優しい眼差しで見つめたままジッと待っててくれていた。そんなおばあちゃんを見ていたら私は涙が溢れてきた。おばあちゃんはハンカチをそっと取り出して私の頬を拭うとゆっくりと話し始めた。

「おばあちゃんね、しーちゃんに感謝しとるんよ」
「か、感謝?」

私の言葉におばあちゃんは深く頷いて話を続けた。

「しーちゃんからあの時『ぶどうぱんは好きじゃない』って教えてもらわんかったらおばあちゃんずーっとぶどうパンを出しとったわ。しーちゃんに言われて次の日からぶどうパンじゃないパンを出したんよ。そしたらあの子達からお礼を言われてね」

そう言っておばあちゃんはTVゲーム夢中になってる妹たちの方を目を向けて微笑んだ。

「『ぶどうパンも好きだけど他のパンも食べたかったの。ありがとう』と言われた時におばあちゃん何も分かっとらんかったなぁって思ったんよ。しーちゃんがおばあちゃんに正直な気持ちを言ってくれて本当に嬉しかったんよ」

まさかおばあちゃんから感謝されるとは思ってもみなかった私は止めどなく流れる涙をそのままにおばあちゃんに自分の想いを伝えた。

「おばあちゃん、あの時は本当にごめんなさい。私はおばあちゃんが大好きなのに好きじゃないなんて言ってごめんなさい」

おばあちゃんは何も言わずにそっと私を抱き寄せると優しく頭を撫でてくれた。私はおばあちゃんの腕の中でわんわんと泣いた。
ぶどうパンは好きじゃないって伝えても良かったんだ。自分の素直な気持ちを伝えても良かったんだ。

ひとしきり泣いて辺りを見るといつの間にか妹たちが側に立っていた。妹たちは「お姉ちゃん大丈夫?」と心配そうな顔をしていた。私は大丈夫と妹たちに笑顔を見せた。そしておばあちゃんと妹たちを真っ直ぐに見つめて口を開いた。

「笑わないで聞いてくれるかな」

3人とも真剣な表情で頷いて私の言葉を待っている。

「実は私ね……歌手になりたいんだ」

私は初めて自分の将来の夢を誰かに伝えた。笑われるのが怖くて思わず耳を塞ぎたくなる衝動をなんとか抑えて反応を待った。数秒の後、最初に口を開いたのはすぐ下の妹だった。

「すごいよ、お姉ちゃん!カッコいい!」

その言葉に呼応するように1番下の妹も声を弾ませて言う。

「しー姉ちゃん歌上手だもんね!なれると思うなぁ!」

二人の妹に目を潤ませお礼を言う私。そんな私たちにおばあちゃんは優しい眼差しを向けて微笑んでいた。


この日を境に私はおばあちゃんを悲しませる夢を見なくなった。その代わりに別の夢を見るようになった。その夢で私はおばあちゃんや妹たちの前で自信満々に歌っているのだった。夢の中の私たちは本当に楽しそうに笑っていた。

そして私はその夢を正夢にすると心に誓っているのだった。



おしまい

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いかがでしたでしょうか。
第三弾はピリカさんから頂いたお題、
「ぶどうパンは好きじゃない」から創作しました😄

コッシーとの創作バトルを楽しつつ、
毎回少しずつ新たな描き方に挑戦しながらイラストを描いています。
めちゃくちゃ楽しいです😆

よろしければこれまでの作品も見てください♪


【第一弾】『気の若いナイスじいさん』
①物語前半(コッシー)
②後半イラスト(着ぐるみ)
③物語後半(コぐるみ)

【第二弾】『デートの日はいつも雨降り』
①物語前半(コッシー)
②後半イラスト(着ぐるみ)
③物語後半(コぐるみ)



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着ぐるみ
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