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音楽ゲーム『SOUND VOLTEX』のデータアナリストって何するの? 2nd Track
※注意書き
この記事では、音楽ゲームないしは『SOUND VOLTEX』に関する用語が多く含まれます。また、IT業界におけるデータアナリストとは意味が異なることにご注意ください。
1. 前回の振り返り
前回の記事の紹介
こんにちは。
TAITO STATION Tradz SOUND VOLTEX部門 データアナリストの『キギル(kigil)』です。
今回の記事は「音楽ゲーム『SOUND VOLTEX』のデータアナリストって何するの? 1st Track」の続きとなっております。是非そちらも読んでみてください。
おさらい
TAITO STATION Tradz SOUND VOLTEX部門のデータアナリストになり、noteを通じてどんなことをしてきたか振り返ることにした。
BPLS2のプロテストには応募しなかったが、プロ選手の友人によってチームに所属し選手のサポートをすることになった。
レギュラーステージでは主に『メガミックスバトルの調査・戦略立案』『選手スコアデータの管理』を行った。
レギュラーステージはなんとか突破するも、自身のデータアナリストとしての取り組み不足を実感した。
2. クォーター/セミファイナルでの活動
早速ですがクォーター/セミファイナルに向けてどのような活動をしてきたか書き連ねていきます。レギュラーステージでの自分のサポート不足を実感していたため「1mmでも勝利に近づけるなら時間対効果が低くても何でもやる」というのをモットーに動いていました。
メガミックスバトルの情報収集(続き)
クォーター/セミファイナルから次鋒戦と副将戦の2つでメガミックスバトルが行われます。レギュラーステージではLv17-18が課題曲でしたが、クォーター/セミファイナルでは次鋒戦が難易度帯が変わらずLv17-18、副将戦がLv18-19となります。
ということで前回同様にLv19の課題曲の各フレーズを収集していました。メガミックスバトルの仕様を調べたり戦略を考察することも引き続きやっていました。
オーダーとポイント獲得戦略の立案
クォーター/セミファイナルのオーダーを決めたり、各試合でどのようにポイントを稼いで勝つのが現実的なのか考察したりしていました。自分が最初にたたき台を作って、その後チームの皆で議論して決めるという流れです。
実はクォーター/セミファイナルは2日連続での収録だったため、両方の試合を合わせてオーダーや各テーマの練習の比重を考える必要がありました。
オーダーについては「各対戦のレベル・テーマに対して必要になる練習量」、「対戦相手オーダー予想」、「選手の得意譜面傾向」などの観点から決めました。
ところで、Tradzのオーダーは1巡指名の「WANIROU」選手を副将・大将のどちらにも置かなかったり、クォーター/セミファイナルとでオーダーを変えていたりと、かなり変則的だったと思います。どうしてこのオーダーになったのか、詳しくはおまけ章に書きます。
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(https://www.youtube.com/live/LzeY1XHTBbY?feature=share&t=1400)
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(https://www.youtube.com/live/MNoVoEcZbjk?feature=share&t=1363)
そして、ポイント獲得戦略を立てた理由はずばり選手が何に練習を注力すべきかをはっきりさせるためです。
クォーター/セミファイナルの練習に関して主に3つの懸念点がありました。
クォーター/セミファイナルの収録はこれまで同様に前回の収録から約1ヶ月後
レギュラーステージと異なり、全選手が1試合に2回は必ず出場しなければならない
レギュラーステージは1試合内で3回対戦なのに対し、クォーター/セミファイナルは5回対戦が行われる
この事情から分かるように、レギュラーステージよりも全ての課題曲を十分に練習するのは難しい状況にあると判断しました。
また、そもそもレギュラーステージとは試合内容が大きく異なることや、オーダー調整にも寄与できることも含め、ポイント獲得戦略を考えることが重要でした。
クォーターファイナル以降は計19ptを取り合うため、引き分けがなければ10pt獲得したら勝利が確定します。その10ptをどの対戦で獲得できそうかを、オーダーを考えるときとほぼ同じ観点で考えました。これに関してはかなりきめ細かく論理的な整理ができた自信があります。
ポイント獲得戦略と練習方針の詳細を話すと長くなるので、一言で言うと、「大将戦の新曲バトルまでに10ptとる、そのためにメガミックスバトルに勝つ」です。果たして実際その通りに上手く事が運んだでしょうか、試合結果は下記リンクからどうぞ。
【クォーターファイナル 試合結果】
【セミファイナル 試合結果】
対戦相手の得意/苦手傾向の分析
SOUND VOLTEXにも他音楽ゲーム同様に階段・ソフラン・縦連打などといった譜面パターンの概念が存在します。また、このゲームには「つまみ」という入力デバイスがあるので譜面パターンの種類数は他音楽ゲームと比較して豊富だと思います。よって、全ての選手に何を得意/苦手とするかというのがバリエーション多く存在すると仮定できます。
対戦相手の得意/苦手傾向を知ることは対戦相手の選曲予想・自チームの選曲議論に寄与します。
基本的に各選手は得意な譜面パターンやBPM帯の曲を選ぶのが合理的です。反対に自身の苦手な譜面パターンを持つ曲は選ばないです。これは当然ですね。
そして、上の話の裏返しになりますが自チームの選曲を考える際は対戦相手が得意な曲を選ぶことを避け、対戦相手が苦手な曲から選ぶという戦略をとることができます。
話をまとめると、以下のようにベン図で表すことができます。
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②が自選候補曲(勝率が高そうな曲)
上側の薄黄色は自選候補、下側は他選候補ではあるが①,②よりは可能性が低い曲
前置きが長くなりましたが、実際に何をしたかは至極単純です。1st Trackで書いたようにゲーム上で対戦相手の自己ベストを知る手段はないため、下記のデータからその時点の自己ベストを調べ対戦相手の得意/苦手の傾向を判断しました。
YouTubeチャンネル等に上がっている動画・配信アーカイブ
Twitter
過去の試合結果
プラスで各選手がドラフトの資料に書いている「強み」の欄を参考にしました。
対戦相手のオーダー・選曲予想
対戦相手の得意/苦手の傾向が対戦相手の選曲に影響するという仮説を前節で述べましたが、もう一つ参考にしたデータがあります。それがスコアランキングです(https://p.eagate.573.jp/game/sdvx/vi/ranking/index.html)。
SOUND VOLTEXは公式ホームページにスコアランキングが存在します。しかし、このランキングはあくまで「通称スコア」のランキングであり、BPLの舞台で競う「EXスコア」のランキングはありません(2023年4月現在)。
では、このページを眺めて何の意味があるでしょうか。実は、このランキングには「EXスコア」の自己ベストを更新すると「更新日時」の日時が更新されるという仕様があります。また、「通常スコア」が同率の場合には更新日時が新しいプレーヤーが上位にランクインするという仕様もあります。
基本的にBPLの選手はほとんどのLv17,18に関しては「通常スコア」で理論値を出しているので、「EXスコア」を更新することはランキングに現れることとほぼ同義です。これは「通常スコア」の理論値が大多数いる曲についても当てはまります。つまり、選手が練習で「EXスコア」を更新した形跡がスコアランキングに残るということです。
結局EXスコアは分からないのですが、対戦相手に関する数少ない情報なのでこのランキングは毎日全課題曲を監視してました。付随して、対戦相手チームのオーダー(どの選手がどの対戦に出るか)についてはこの情報から100%予想を当てました。
話を戻します。実際の選曲予想はどうだったかというと、「総合的に見て譜面傾向はそれなり読めたが、ズバリな選曲予想自体はほとんど当たっていなかった」です。そもそもほとんどの選手はこの仕様を知っている上に各選手の情報が少ないのは周知の事実だったため、情報戦が非常に活発でした。裏の裏をかくといった行為が普通に行われているのでまず当てるのは無理です。
先程、理屈っぽくベン図を出しましたが実際の選曲パターンは他にいくらでもありました。「対戦相手の意表を突くために対策を要する曲」、「タッグバトルで相方の得意傾向を優先した曲」、「自分のチームに因んだ曲」などなど。その辺りも予想に加味するとキリがないです。
ですが、そのような情報戦を私も色々サポートして処理していたので選手の負担は減ったんじゃないかなと思います。
選手の練習曲の設定
「ポイント獲得戦略」の項で触れた通り、クォーター/セミファイナルでは1曲に対する練習時間が短くなっているという事情がありました。加えて、選手から「何を練習すべきか分からない、アドバイザーに決めてほしい」という要望が出ました。その要望に則って、選手の練習曲をアドバイザー側で設定するという方針になりました。
まず、練習曲すべき曲が以下2種類であると定めました。
自選候補
既に高い水準の自己ベストを出している曲をさらに伸ばす・安定感を高めるために練習する他選対策
対戦相手が選んできそうな曲、自己ベストが相対的に見て低すぎる曲のスコアを伸ばす、PUCを出して威圧するために練習する。
そして、それらの練習曲は下記の流れで練習してもらいながら設定しました。
①選手が課題曲を全体的に軽く触れていく。
↓
②選手が自身の「得意/苦手」のラベルを各課題曲につけていく。
アドバイザーが『SDVX-EST』のスコアランキングから選手の自己ベストの順位を確認する(相場確認)。
↓
③アドバイザーが「現状の選手の自己ベストの順位」、「選手・対戦相手の得意/苦手」、「対戦相手の選曲予想」の観点から『自選候補』『他選対策』のラベルを付ける。
↓
④選手が『自選候補』『他選対策』のラベルがついている曲を練習する。
↓
(以降②~④のループ)
上に出てきた『SDVX-EST』とは「GAME PANIC」のアドバイザーでもある『てんあ』さんが運営している非公式の"EXスコア"ツールです。そのツールには全国の猛者達がこぞってスコア登録しており、各曲のEXスコアランキングも見ることが出来ます。選手は基本的に非公開にされていますが、プロの実力に匹敵するプレイヤーが十分な人数登録されているため、このランキングから選手の自己ベストの相場を確認しました。
以上がクォーター/セミファイナルまでの活動内容です。試合後の感想はファイナルを含めて後ほどお話します。
3. ファイナルでの活動
クォーター/セミファイナルは選手たちが怒涛の勢いで勝利を収め、見事にファイナル進出を果たしました。試合結果が好成績であったこともあり、ファイナルまでのサポートの仕方はクォーター/セミファイナルとほとんど変わらなかったです。そのため、新たに語ることもほぼないです。
メガミックスバトル後攻時の戦略考察
ポイント獲得戦略はクォーター/セミファイナル以上にメガミックスバトル全力体勢でした。というのも、ファイナルの課題曲はシングル・タッグで2つのLv帯×3テーマとあまりにも多すぎる状況で対策時間の観点で他選曲を取ることがこれまで以上に難しくなっていたからです。ちなみに先鋒戦の課題曲数は513曲です。
そのため少しでもメガミックスバトルの勝率を上げるために、選手間ではあまりにも有名な後攻不利問題に着手しました。
メガミックスバトルは1曲目が後攻の自選曲、12曲目が先攻の自選曲からランダムに選ばれます。なのでお互いに自選曲を計6回プレーできることには変わりないのですが、その重みが大きく異なります。
1曲目はゲージが全くない状況のため1点差つくかどうかの勝負です。さらに、合計得点が負けているほどゲージが多くもらえる仕様があるのでここの勝負に勝つことにそこまで意味がないです。
一方で、12曲目は極めて重要な局面になりがちです。お互いに全てのゲージを使って勝負し、点差によっては勝った方が対戦に勝利する状況が生まれます。メガミックスバトルはよく出来たゲームでそのようなドラマチック展開になりがちです。その12曲目が自選曲であれば非常に有利であることは言うまでもないです。
以上の理由から後攻不利問題があることは事実なのですが、先攻・後攻はランダムに決定するため、対策としては割りと真面目に『『祈る』』以外ありませんでした。
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(https://www.youtube.com/live/MNoVoEcZbjk?feature=share&t=3400)
そんな後攻不利問題ですが、何とかしてその不利要素を減らせないかを「WANIROU選手」と一緒に考えました。そして、確実性は高くないのですが一つだけ戦略を編み出すことができました。
しかしながら、ファイナルは幸運なことにメガミックスバトルはどちらとも先攻を引くことができたのでその戦略をお披露目することはありませんでした。次シーズンも同じ仕様であれば機会はあるかもしれませんが、できればKONAMIさんに後攻不利がなくなるような仕様変更をして欲しいところです。
(P.S. 4/20のTradzラジオにて若干後攻時の戦略の話が出ました。)
(以下、ファイナルまでのネタバレが多く含まれます。)
4. ファイナルを終えた感想
\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\ 祝 Tradz優勝!!!!! ////////////////////
WANIROU、MURAKAMI、350B1選手の3人共最高にかっこよかったです。また、チームの1サポーターとしてこの景色を見せてくれたことに本当に感謝しています。
クォーターは戦略通りの勝ち方で進みつつも最後に新曲まで勝利していました。また、セミファイナルに関してはあまりにも異常な勝ちっぷりで終盤はベンチでドン引きしながら見ていました。
正直、この試合結果を見たときに「別に俺いなくても勝てるんじゃないか…?」と思ってしまいました。ですが、少なくともちゃんと戦略を組んだり練習曲を設けたことなどのサポートが選手のモチベーションに繋がっていたなら嬉しい限りです。
一転してファイナルはトラブルにも見舞われ、戦略通りにもいかずかなり厳しい戦いだったと思います。しかし、その中で見事に勝利をもぎ取れたのはやはり選手の強さ、諦めない心、そしてここまでの培ってきた成果の賜物だと思います。
そして、これまで戦ってきたチームの皆さんにもBPLで熱い闘いを繰り広げてくれたことに感謝しています。自チームだけでなく皆が真剣にBPLに取り組んでくれたことが自分の分析のモチベーションに繋がったのは間違いないです。また、クォーターファイナル以降は色んな選手が敗退後もTradz選手との練習に付き合ってくれたようで大変ありがたい限りです。
一個人の活動としては勝っても負けても悔いの残らないぐらい全力のサポートができたと実感しています。ただし、マネジメントと選手への気遣いはあまり上手く出来ていなかった気がするのでこれは次シーズン以降の課題です(特に試合中にトラブルが起きた際はいつもどおり振る舞うことしかできませんでした)。
また、終盤は練習内容も戦略立案もほとんど私主体で決めており練習の仕方にかなりの強制が働いていたと思いますが、選手3人ともそれを最後まで信頼して付き合ってくれたのが本当に頼もしかったです。ちゃんと選手と合意を取りながら方針を決めていたとはいえ、それを折れることなくこなすのはそう簡単にできることではないです。
そしてBPLS2 SOUND VOLTEX部門でデータアナリストとして取り組んだことはとても貴重な経験になりました。実は本職もデータアナリストなのですが、音楽ゲームのプロシーンでのデータアナリストの活動はやはり一風変わった刺激的な内容でした。というのも本職はどちらかというとエンジニア型の業務で、今回の場合はコンサル型であるという違いがあります。それに加えてSOUND VOLTEXのプロリーグ自体初めて行われる競技であり、何が正解であるかはビジネスシーンよりも乱雑で分かりにくいものです。
この記事を読んでわかる通り、基本的にはデータを集めることが主体でした。しかし、そのデータを基にメガミックスバトルの戦略を組んだり、練習方針を立てたり、選曲を予想するということはある意味得られたデータから解釈を見出し、施策を提案するという本場のデータアナリストの業務の流れに沿っているんじゃないかと思います。そのおかげで自分が何をすべきなのかは同じ考え方で整理できていました。
最後にこれだけは言いたいのですが、もしこの記事を見てアドバイザーになってデータアナリスト的なことをしたいと思った人は絶対に自分のやる気を持ち続ける覚悟をしておいてください。同じことをやるとそれなりに労力が求められます。中途半端になると選手を戸惑わせることになり、それは他チームであっても起きて欲しくないです。
私自身はもちろん、新しく挑戦したいことはまだまだあるので、次シーズンもBPLに関わるのであればまたデータアナリストとしての活動できることを期待しています(ただ、まだ一般人としてBPLを楽しみたい欲が若干ある…)。
プロ選手目線でなく、あくまでサポーターとしての立場でBPLS2 SOUND VOLTEX部門を振り返ってきました。選手あってのサポーターなのにこんなにも熱く語ってしまい少々恥ずかしいですが、面白いと思っていただけたら何よりです。またどこかでBPLに関わる機会があれば、いずれこのような形で記事を書くと思います。
前回同様、BPLS2 SOUND VOLTEX部門をすでに視聴した人向けの裏話を載せて締めたいと思います。
では。
おまけ
クォーター/セミファイナルの歪なオーダーの背景
あまりおまけっぽくないですが、クォーター/セミファイナルのオーダーについて具体的に説明していきます。改めて下記にオーダーを貼ります。
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この2試合のLv/テーマの構成を比較すると、中堅戦以外は全て一致しているのが分かります。そのため、オーダーを同じにすれば練習が効率的になるのですが、それをあえて崩して村上さんとみそびの配置を完全に入れ替えています。また、ドラフト1巡目のわにろうが副将戦、大将戦のどちらにも出ていません。
このようなオーダーにした根本的な理由はシンプルにその方が勝率が高いと考えたからです。
先にオーダー崩しの理由について述べていきます。まず、「オーダーを揃える」ことのメリットは「全体で見て練習が効率的になり、1曲に対する練習量が増える」だと思います。シンプルに集中すべき課題曲が絞られて、自選決めや他選対策がやりやすいですね。
もう一方の「オーダーを崩す」メリットですが、ずばり「自選曲に尖りを持たせられる」ことです。村上さんはONE-HAND方面、みそびは高速系やPEAK方面でそれぞれ突出した強みを持っており、これだけは負けないという自選曲を作りやすいと考えました。しかし、オーダーを揃えてしまうとその分自選曲を倍に増やさなければならず、自選の尖りが弱くなります。特にメガミックスバトルだと1試合で5曲決めなければならないので、レギュラーシーズンの頃から自選候補を絞り出すのに苦労した選手も多いと思います。
そしてオーダーを崩した結果、副将戦は2人が特に得意な譜面を惜しみなく出すことで勝率がかなり高い5曲に絞れていたと思います(その反動でファイナルの選曲に苦しんでいたが)。大将戦も国内全1スコアまで仕上げられた曲を余すことなく解き放っていましたね。
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(↓↓↓大将戦の自選曲↓↓↓)
ガニメデ練習中は大体途中終了しちゃってたから気長に伸ばしていきたいです pic.twitter.com/xeJZxopnzO
— トルネード村上 (@TornadoMurakami) February 15, 2023
大将戦、自選は絶対に負けない自信があったので無事勝ててよかったです #BPLS2 pic.twitter.com/0oMTofg5js
— みそび (@yubiugokanai__) March 1, 2023
また、このオーダーは特に副将戦・大将戦に対して大きく働くメリットを持ちますが、ポイント獲得戦略では副将戦は絶対、大将戦の自選もなるべくポイント取りたい、というものだったのでそれにマッチしています。逆に言えば他選曲は取れたらラッキーくらいでした。
オーダーを崩すデメリットはやはり練習量が増えることですが、これに関しては以下の理由で他チームよりもデメリットは薄いと判断しました。
練習時間が他チームより多くに確保できていそうだったこと
レギュラーステージのテーマと一部重複していたこと(Lv17 ONE-HAND、Lv18 NOTE, HAND-TRIP)
練習曲の設定によって効率的な練習ができること
特に3つ目はアドバイザーの裁量範囲であり、責任は重大ですが努力次第でかなり無駄を削れます。色々データを集めて必死こいてたのはそのためです。
3巡目(?)わにろう
クォーター/セミファイナルのオーダーの話の続きでもう一点、ドラフト1巡目のわにろうが副将戦・大将戦のどちらにも出ていないことについて触れます。これはファイナルのインタビューで本人が言っていたように「1巡目は無理、その代わり3巡目の人として最強になる」という意向があり、それ以上のことはないです。自分はわにろうが昔からの友達だったので「こいつまたなんか変なこと言ってるよ…」と思っただけで1mmも気に留めていなかったです(ただ、本人としては結構ヘビーに捉えていたようなので逆に申し訳ない)。
実際、序盤戦で特に肝である次鋒戦の勝率が100%だったのはまさに有言実行だったと思います。自選曲の引き出しの豊富さ、判定が合わないときのリカバリー、ここぞという場面の決定力が備わっており、メガミックスバトルの練習で着実に実力とメンタルを鍛えてきたのが伺えます。
あと試合と関係ない部分ですが、彼は常に選手やアドバイザーの輪の中心であり、チームオーナーとのコミュニケーションも大事にする素晴らしい人格者でした。自分もどういうサポートをすべきかの相談に何度も乗ってくれたので非常に助かりました。どこかの誰かの受け売りですが、まさに「1巡目の器」を持っていると思います。
Tradz SDVX部門史上、最も泥沼にハマった議論
シーズンを通して、選手・アドバイザーで幾度となく議論を重ねてきましたが、その中で一番結論を出すのに時間がかかった議論は何だと思いますか?
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はい、答えは『ファイナルのテーマ決め』です。これが何なのか知らない人がほとんどだと思うので概要を説明します。
ファイナルのテーマは出場する2チームが交互にPICKする形式で決まります。決めるのは先鋒戦の3テーマと中堅戦の3テーマでこれらが被りなく埋まります。ルール上、GiGOから選択するので、Tradzは2,4番目に余っているテーマを先鋒戦と中堅戦のどちらかに割り当てることができます。6番目は自動的に決まるので意味はないです(実は合理的なPICKをするとGiGOの5番目のPICKも発生しないです、どうしてかは是非考えてみてください)。
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このPICKをどうするかの議論で、まず選手らの具体的な要望を聞き取りました。例えばみそびがPEAKやりたいとかそんな感じです。次に列挙された要望に優先度をつけて、それぞれがどのテーマをどっちの試合に割り当てることなのか整理しました。最後はそれに基づいて2,4番目に埋めるテーマを決めるという流れです。
後ろ2つの優先度付けとテーマ決めの部分ですが、これがどうにも上手いやり方が思いつかずGiGOのPICKパターンに対する理想のPICKを全列挙することになってしまい、これが過去最悪の苦行でした。多分計5時間くらいかかりました。
最初は自分が中心で他の人に色々手伝ってもらいながらパターンを列挙していましたが、途中で頭の処理回数が限界に達してまともに思考が働かなくなりました。しかも、このPICK会がセミファイナル終了後の2日後にあるという異常なほどタイトなスケジュールで、この議論をその前日にやってたのでその日にやるしかなかったです。
情けないことに、結局残りは深夜2時でも頭の回転が早かった村上さんに埋めてもらいました。申し訳なかったです。
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おしまい
Name: キギル/kigil
Twitter: @kigil_stn