赤の他人の初恋の人/短編映画『再会』より
何気なく座ったカフェの椅子に、これまでどんな人が座って
その人はそこで何を考えていたんだろう?
何をしていたんだろう?
その人はどこから来て、どこへ行ったのだろう?
その人はその場所で、初恋の人を待っていました。
初恋、と言っても、それは友達と「恋バナ」とかをする類のものではなくて
ただ自分の中にそっとしまって大切にしていたい、
思い出せばいつでも胸を温めてくれるものでした。
彼女と過ごした時間はほんの数日だったけど、
まるで世界が自分と一緒におぎゃあと生まれなおしたみたいに、
初めて自分は自分の形になれたような、柔らかい奇跡みたいな時間でした。
別れ際、もう会えなくなるのに、なぜか悲しくはなくて。
矛盾するけれどもいつかきっと会えるだろう、と
根拠もなく、しかしハッキリと、分かっていました。
大人になって、10代のころの感性については
大概の部分にさよならをしたし、諦めることも増えたけど、
なぜか「あの人にもうすぐ、いつか、会える」ということだけは
一度も疑ったことがありませんでした。
30代後半になって半年が過ぎたその日も、同じように。
「もうすぐ、いつか、会える」
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以上、短編映画『再会』についてのアイデアメモのようなものです。
主人公を演じてくださった役者さんとだけお話していたことを、書いてみました。
FUJIFILMの公式YouTubeチャンネルで公開中。約8分の短編です。
短編映画『再会』
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