プロボノのインパクトを最大化する事業の仕組み

先月、プロボノ(仕事で培ったスキルや経験を活かして、社会や公共のために取り組むパートタイムの社会貢献活動)メンバーのみで構成される、NPO支援団体を始めた。

先週末、我々がバックオフィス支援(DXや資金調達)をしているNPOの代表に招待していただき、全国こどもの貧困・教育支援団体協議会のフォーラムに参加する機会をいただいた。

この二日間を通して、NudgeForが、プロボノのみで構成される団体として、どのようなに事業を行えば(子ども支援業界への)インパクトを最大化することができるのか、ということが見えてきたので、備忘録として少し書いてみる。

子ども支援業界に関心がある人、インパクトの大きいプロボノをしてみたいと思っている人、NudgeForへの参加を検討している人の参考になれば嬉しい。

子ども支援団体における共通課題

このフォーラムを通して確信した、子ども支援団体における共通課題は資金と人手の不足だ。

  1. 資金不足
    基本的に、国内のNPOは資金不足であるが、特に子ども支援事業は状況が深刻。原因は多岐にわたるが、代表的なものは1) 国からの助成金が少ない、2) 事業収益を生みづらい、3) サービスを必要としている子ども、家庭が多い等がある。

  2. 人手不足
    2010年かその前頃から日本で「子どもの貧困」への注目が高まり始め、これに貢献する団体や人は多くなったが、近年、その数は減少している。セーブ・ザ・チルドレンのデータによると「子どもの貧困」という問題に対する国民の認識も薄れてきていることが分かっている。加えて、子どもと長い時間、直接関わることが必要であるため、比較的人手の必要な事業であることも人手不足の原因の一つである。

プロボノ団体が提供できること

これらの課題の是正のために、プロボノ団体がその価値を最大化できる役割は1) 資金分配と、2) バックオフィス業務のアウトソーシングの仲介の二つだと感じている。

1)資金分配団体

現場で使う時間が多い子ども支援団体では、資金調達に割く時間が少ないために、資金不足から抜け出せない悪循環が生じている場合が多い。

資金を楽に、継続的に受け取れる資金分配団体があれば、団体は少ない人ででも質の高い支援を子どもに提供することができる。資金の調達、管理、分配は現場仕事と比べ少ない時間で行えるし、オンラインでも行えるのでパートタイムのプロボノが適任だ。

潜在的な資金調達源となるのは:

  • 企業(企業寄付、企業が出す助成金等)
    企業の場合、団体としての信頼度や実績、経営者とのつながりも重要になるため、誰でも簡単に集められるわけではなく、資金の偏りが生じやすい。

  • 個人(単発寄付、定期寄付等)
    個人の場合も同じく、団体の信頼度やインパクトの開示などがしっかりされている団体に多く集まるため、それにリソースを割けない団体は個人寄付での資金調達は困難である。

  • 政府系(休眠預金、日本財団、子ども家庭庁等)
    政府系の資金はその金額が大きいのが特徴だ。しかし、ある程度のクレジットがなければそれを受け取ることはできないので、申請作業が膨大だったり、基準が厳しかったりするため大規模NPOに偏りがちである。

の三つがある。資金分配団体としてこれら三つの領域から最大限に資金を集め、均等に分配することが求められる。プロボノ団体であれば、人件費も出ない(または少ない)ので、集めた資金を低コストで分配することができるため資金分配団体として適任である。

2)バックオフィス業務のアウトソーシング仲介団体

もう一つ、プロボノ団体が担える役割は経理、会計、法律、経営などのバックオフィスの仕事をサポートすることだ。

これらの仕事は本来、子どもと現場で過ごす職員とは分けて行われるべきだが、人手が不足している団体では、この両方を現場の職員が賄っている。

しかし、これをプロボノ団体がすべて行うのには相当の数の人員が必要になるので、これをアウトソーシングために業者と団体の仲介となるのが現実的だ。

経理や会計などのバックオフィスの作業であれば、プロボノ自らが手を動かすよりも、手を動かせる人及び会社とアウトソーシングを必要としている団体をつなげ、指示出しや交渉などを仲介する役割を担う方が、少ない時間で大きなインパクトを生み出せる。

例えば、週末の3時間の間にアウトソーシングサービスを提供している会社との交渉、指示出し、契約を終わらせることができれば、平日、本業をしている間にその作業が終わる。経理の場合、プロボノ一人だと3時間で100枚ほどの領収書しか処理できない(と仮定する)が、週5時間この作業に時間を割ける3人にアウトソーシングすることで、一週間で500枚の処理を行える。すなわち、実質3時間で500枚の領収書の処理ができるという計算になる。

もちろん、アウトソーシングをするには資金が必要になるためアウトソーシングにお金を出せる団体にしかこれは当てはまらない。しかし、人件費よりかは安く収まるので、(例えば)経理専門の人を雇ったりしている団体であればコストの削減につながる。

これに突っ込みたくなるのが、「アウトソーシングの仲介は果たして必要か」という点だが、もちろん仲介なしでアウトソース先を探せて、交渉、指示出しまで行える団体に仲介は必要ない。しかし、NPOの業務のアウトソーシングを専門としている会社は少ないため、NudgeForの支援先のような小規模または地域密着型で平均年齢が高い人たちだけで運営されるような団体には、少なからずニーズはあると思っている。どこをアウトソーシングするのが最適かという調査からアウトソーシング先への指示だしまで一貫したサポートが必要になるだろう。

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