ヨシオ君 (怖い話)加筆版
僕が本当に体験した怖い話 (怖い話)(加筆版)
人は長く生きていれば
怖い体験・不思議な体験の一つや二つは誰にでもあります。
この話はそんな僕の体験を綴ったものです。
※登場人物の名前や団体名は全て仮名です。
【あの夏に出会った・ヨシオ君】
これは僕達が「ヨシオ君」という男の子に出会った時の話です。
その日は、夜とも朝とも言えない不思議な空気感でした。
それは今でも忘れることはありません。
小学校5年生の頃、僕は「クワガタムシ」「カブトムシ」に興味があって
田園風景が広がるこの村でも捕まえられる場所があるのではないかと思いました。
親に聞くと、この辺りでは川の近くの「柳の木」が
お決まりの場所だと教えられ、
早速、僕は夏休みに入ると、自転車に乗って
川の近くの「柳の木」を探し回りました。
そもそも柳の木というものがどんな植物かも知らずに
闇雲に探究していました。
■探求1日目
昼の午後、見つからない・・・
午後3時頃、見つからない・・・
夕方6時頃、見つからない・・・
■探求2日目
午前中、 見つからなかった・・・
午後4時頃、見つからなかった・・・
■探求3日目
夕暮れ6時~7時頃、クワガタを見つけた!!!
柳の木は木の中でも古くて樹液の臭いを発する、見た目で、どことなく腐ったような柳の木でした。
一般的には「クヌギ」と「コナラ」の樹液に集まるとも言われているようですが、僕が住んでいた場所では「柳の木」と言われていました。
その場所は川の近くにあって歩くとジクジクと湿った泥の滑りやすい所で、
こんな場所なら蛇や蜂がいてもおかしくないのだろうと思いました。
僕は嬉しくなって持って行った虫カゴに捕まえて持って帰ろうとしたが、
素手で触ることが出来ず悪戦苦闘の末に3匹の小さいクワガタムシを捕まえることができました。
それはとても感動的な事でした。
その話をクワガタを見せながら同じ地域に住む年下の小4の友達、
昭雄にすると興味津々な表情を見せました。
僕 「クワガタムシ カブトムシ 好きか?」
昭雄「うん 触ったことないけど好き」
僕 「なら その川の近くにある木に捕まえに行かないか?」
昭雄「うん 行きたい」
僕 「朝はどうだ? 」
昭雄「朝? 何時?」
僕 「朝 3時! この時間なら沢山捕まるぞ!」
昭雄「うん 行こう!」
僕達は虫たちがよく捕まる時間帯である3時にその木に行くことを計画しました。
もちろん、親にも僕達の冒険を話して許可をもらいました。
僕は約束の日に起きられるように早めに寝て目覚ましをかけました。
早く寝たせいか興奮しているせいか僕は2時には目が覚めて3時に昭雄の家に行きました。
1Fの部屋の昭雄はまだ寝ていたので窓ガラスを叩いて起こしました。
僕 「トントン・トントントン」
昭雄「・・・・・・・・・」
僕 「トントントン・トントントン・・・」
昭雄「・・・ガラガラガラ・・・早いなぁ・・・眠い・・」
「ほんとに行くの?」
僕 「ああ 行こう!昨日約束しただろ?」
昭雄「うん・・・ちょっと待ってて」
そして僕達は深夜とも早朝とも言えない暗い夜道を
自転車であの柳の木の方へと向かいました。
まだ星が輝く田んぼの中の1本道を通り抜けて大橋を渡る途中
遠くに市街地の街の灯りが見えました。
オレンジ色の橋の街灯の下で二人が生まれて初めて見る光景でした。
大橋を渡り切り川沿いの道を10分ほど走った所に、
あの柳の木がありました。
二人は予定通り目的地に到着しました。
道に自転車を並べて置いて手に懐中電灯を持って
二人で川の方に降りて行きました。
その途中で昭雄が足を滑らせて川の中に引き込まれそうになり
木の枝に捕まった昭雄の手をつかんで昭雄を助け上げました。
僕 「おい!気を付けろ!あぶねーぞ!」
昭雄「あーービックリした 助かったぁ!」
****「おーい!君たち危ないから気を付けた方がいいぞ!!!」
そこに突然 知らない子供の声が聞こえた。
僕 「誰かいるのか!?・・・」
昭雄「誰!?・・・・・・・・」
声がする方向に懐中電灯の明かりを向けた。
数メートル離れたところに麦わら帽子をかぶった白いTシャツに半ズボンの見知らぬ男の子が立っていました。
名前を訪ねると「ハヤシ・ヨシオ」と答えました。
僕 「ヨシオ君もカブトムシ採りに来たの?」
ヨシオ「うん」
僕 「そか 見かけない顔だけど どこの学校?何年生?」
ヨシオ「金村小学校 4年3組」
僕 「金村って僕達と同じ学校だけど見たことないね」
ヨシオ「転校生なんだ 夏休み前に引っ越して来たんだ」
僕 「それで見たことなかったのか」
昭雄 「なるほど、 そういうことか」
ヨシオ「僕もクワガタとカブトムシが好きなんだ」
「この場所はお爺ちゃんに聞いたんだ」
「ここから降りると川に落ちるから」
「もう一本先の木の間から降りた方が安全だよ」
僕 「そうなのか、知らなかった」
ヨシオ「虫なら こっちにいるよ 」
案内される方に進むとその木の枝や根っこには、
沢山のクワガタとカブトムシがいました。
僕は虫カゴに数匹、クワガタムシを入れて
昭雄は虫カゴを忘れて来てしまったので
僕が持っていたビニールの袋にカブトムシを一匹入れて持ち帰りました。
空はまだ薄暗く、あと数分もすれば日が昇りそうな時間に感じられました。
ヨシオ君の家は反対側だったので僕達はヨシオ君と新学期に遊ぶ約束をしてその場で別れました。
僕と昭雄は自転車を走らせ「ヤッホー!!!やったぜーイェーーイ!」という歓喜の声をあげながら
明け方の空の中をまるで天にも昇るような気持ちで家に帰りました。
一つだけ残念なアクシデントがありました。
それは、昭雄がビニールの袋に入れたカブトムシが動かなくなっていたことです。
ビニールに空気穴を入れるのを忘れたのが原因でした。
しばらく庭の木の葉っぱの上に乗せて空気が吸える状態にして置いたのですが、一度失われた命が戻る事はありませんでした。
かわいそうな事をしてしまったと・・・・
二人で悔やんだが取り返しのつかない命の切なさを感じました。
その後、僕と昭雄は夏休みの間、虫相撲をして遊びました。
カブトムシのお尻を叩いた昭雄がカブトムシにおしっこをかけられて大笑いしました。
そんな時、僕達は「ヨシオ君もこの虫相撲に誘いたかったなぁ」と話していました。
残念だけど家も連絡先も全く分かりませんでした。
夏休みが明けて新学期が始まるとヨシオ君との約束通り
僕達は4年3組の「ハヤシ・ヨシオ君」を尋ねて行って見ました。
しかし、誰に訊いてもそんな名前の生徒はこのクラスにはいないと言われました。
「おかしいなぁ・・・そんなはずはない」・・・と思いました。
その様子を見ていた用務員の叔父さんに、何故「「ハヤシ・ヨシオ君」を知っているのか訊かれました。
僕達が体験したあの日の事を用務員の叔父さんに全て話すと、
用務員の叔父さんは「ハヤシ・ヨシオ君」は、10年ほど前に
あの川で溺れて亡くなった少年で、
当時、金村小学校の4年3組だったそうです。
僕 「えっぇぇ!!!幽霊???ヨシオ君は幽霊だったの!!!?」
用務員「んーーー気味が悪いかもしれないけど君たちのことが心配で」
「助けに来たんじゃないかな」
「そんなに悪い子ではなかったよ 」
「昆虫好きでね いつも昆虫図鑑を見てる子だったなぁ・・・」
僕 「そかぁ・・・」
昭雄 「・・・そう言えば あの時のヨシオ君は全身が濡れていたよ」
僕 「あ、そう言われれば確かにそうだった」
「川に入ったわけでもないのに・・・」
僕 「あ、、、・・・」
昭雄 「あ、、、・・・」
その後、僕も昭雄も金山小学校を卒業しました。
僕は卒業して30年以上が経過しました。
あの時、仲良かった昭雄とは今は疎遠になってしまい、
あの日の話をすることはなくなりましたが、
僕は今でも あの日、ヨシオ君が僕たちに姿を現した理由は、
僕達に命の大切さを教える為に話しかけてくれたように思うのです。
時を経て、大人になった今でもそう思っています。
END