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真冬の怖い話

真冬の怖い話。

霊現象とは、何も、夏に限って起こることでは、ありません。
暑さ寒さなど、季節には関係なく、彼らは進出鬼没です。

これは、僕が中学2年の冬に、実際に体験した、本当にあった怖い話です。

中学生の頃、僕は自転車で通学していました。
学校から家までは3kmほどの田んぼ道で、
その途中に、古いお地蔵さんが立っていました。そこが、だいたい中間地点でした。

僕は陸上部に所属していて、授業が終わると、部活で夕方まで走り込んでいました。
あの日は、午後から降った雨が雪に変わり、冷たく寒い日だったことを、
今でも覚えています。

いつもどおり、17時45分頃に、学校のグランドで部員たちと別れ、帰宅時間はいつもどおり、18時頃になるはずでした。
しかし、その時間になると吹雪が激しくなりました。

顧問の先生や先輩に「気を付けて帰れよ」と声をかけられ、
僕たち部員は「はい」と答えて自転車に乗り駆け出しました。

通学路の中間地点には、古いお地蔵さんが立っていて、普段ならそこまで7分程度で行けるのですが、
その日は、20分くらいかかったように感じました。車が通る道でもあるので、アスファルトは除雪車によって除雪されていました。
雪道でもアイスバーンでもないのに、その日は、いつもとは違い、
自転車の進みが遅く、不思議に思いました。

その時、背中に冷たい視線を感じました。
急いでペダルを踏み込むも、自転車はふらつき、前へ進みません。
背後から何かに押されているような感覚が強まり、自転車が大きく揺れ始めました。
何度か体勢を立て直しながら進んだのですが、見えない力の恐怖を感じ、
とにかく、その場から逃れたい、その一心で力強くペダルを漕ぎました。
普通なら15分で帰れる道を、30分以上かけてようやく帰宅しました。

不思議で怖い体験に心が動揺しました。

その話を、近所に住む同級生の三浦に話すと、彼も、同じ体験をしたことがあると、言いました
。吹雪の中で、女性のような高い声を聞いたというのです。
それは風のヒューヒュー音とは違い、「帰るなー、帰るなー」という、言葉だったそうです。
さらに、3年前に同じ中学校にかよっていた兄も、雪の降る田んぼ道で同じ体験をしていたというのです。
兄はその体験を話すたびに、今でも恐怖が甦ると言っていました。

この土地に生まれ育った祖父に話すと、昔、昭和の頃、おお吹雪で玉突き事故が発生し、
多くの人が亡くなったそうです。
車と車の間に挟まれた自転車の中学生の女の子も、犠牲になったそうです。
当時は、霧や雪がなければ、見晴らしの良い田んぼ道だったとのこと。
祖父が言うには、三浦が聞いた「帰るな」と、いう女の子の声は、
お地蔵さんを気にしてのことだろうと言っていました。

お地蔵さんは、あの交通事故の犠牲者やその家族への慰霊と共に、
これ以上事故が起こらないように、との、祈りが込められたものだそうです。

翌日、僕と祖父は、お地蔵さんの様子を見に行くことにしました。
誰も手入れをしなくなったお地蔵さんの雪をはらい、
きれいにすると、その不思議で怖い現象はなくなりました。

Word:かっつぇ・imaging factory

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