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たのしい舞台の相姦図①

今日も時間がないので、ごまかします。
半年前くらいに急に「俺、官能小説家になろう!!」と思い立って、バーッと書いていた導入部分を放出します。
もうちょっとだけ続きを書いてるので、また時間がないときに続きを貼ることにします。

もう「官能小説家になろう!」というモチベーションは跡形もなく消えているので、たぶん完結はしません。

興味ある人向けに単体100円でも販売しておきますが、月額購読がおすすめです。

■たのしい舞台の相姦図

 《1,成人向け演劇作品を作ろう》

 外は明るい。夏休みが近づく六月。大阪府にあるK大学の207教室で、劇団あそぼうの第二回公演に向けた会議が行われていた。
教室の椅子に座っているのは、芸術学部・舞台芸能専攻に籍を置く八人の男女。ペンを握ってホワイトボードの前に立つ主宰、竹下風馬の顔を、他七名の劇団員が見つめている。
劇団あそぼうは昨年の冬に旗揚げ公演を行った学生劇団だ。教授陣からの評価も上々で、劇団員一同、次回作に向けて意気込んでいる。
作・演出を務める竹下が、ホワイトボードにでかでかと「R18」と書き示し、こう言い放った。身長180センチほどの彼は、劇団内で最も背が高い。
「R18の演劇作品を作りたいねん」
「グロい系?」と、看板役者の尾崎優成が尋ねる。竹下はペンのキャップを閉じながら、「いや、エロい系」と返した。今すぐにでも芸能界に入れそうな甘いマスクを持つ尾崎は、両手を頭に乗せて背もたれに身体を預けた。

彼らは同い年の大学三年生である。そのひとつ年下の二年生コンビ、後藤春樹と三澤遥平が、同じく二年生の吉野愛の顔を見つめる。吉野が口を開いた。
「えっちなことするってことですか?」
 劇団で最も身長が低い吉野が、ホワイトボードを指さす。その声色に非難の様子はない。ただただ純粋な疑問文だった。
「えっちなことを表現するってことやな」
 と竹下は言う。
「あかんやろ」
 と、綾瀬晴奈が腕組みをしながら言った。彼女は劇団あそぼうの看板女優だ。それに同調して、西美乃梨、草田茜がうなずく。彼女らは竹下・尾崎と同い年の三年生である。以上、劇団あそぼうは三年生男子の竹下・尾崎と、同じく三年生女子の綾瀬・西・草田、そしてその後輩にあたる二年生男子の後藤・三澤に加え、二年生女子である吉野の、計八名で構成されている団体だ。

看板女優の綾瀬は続ける。
「昼ドラみたいなことなら面白いと思うけど、R18ってことはアダルトやろ?」
「まあ、アダルトやな」と竹下は返す。
「じゃああかんやろ」
 と綾瀬は繰り返した。劇団で唯一長い髪を持つ彼女の背筋は、しゃんと伸びている。腕組みをキープしたまま、西や草田からも意見を求めるような表情をした。アジアンテイストの洋服を好む草田が手を挙げる。ざっくりと開いた袖口から、素肌が覗いていた。
「そういう要素があるっていうのは全然いいと思うけど、それがメインっていうのは……」
 西もそれに対して小さくうなずいた。
「お前らはどう思う?」
 竹下は後輩の後藤・三澤に問いかける。
「僕はなんでもいいです」と三澤。青いパーカーのお腹にあるポケットに両手を突っ込んでいる。
「お前はなんでもええやろなぁ」
 尾崎は組んだ両手を頭に乗せて笑った。そして草田のほうを向く。
「さっき茜、そういう要素があるのは全然いいって言った?」
 草田は天井に目をやりながら話す。
「だから、わからんけど、ベッドシーンみたいのとかは、あってもいいというか、別に拒否するつもりとかはない。でもアダルトやったらさ、おっぱいとか出すんちゃうん。それは厳しいなっていう」
「おっぱいとか出すん?」
 尾崎は竹下に尋ねる。
「出せたらな」
 竹下は笑いながら言った。そして続ける。
「まあでもそれは無理やと思ってる。実際、AVを撮るとかそういう話ちゃうし」
「じゃあアダルトってどういうことですか」
 吉野は無邪気に尋ねる。
「性的に興奮させたい、そういうエンタメを作りたいってことやな。笑える作品とか、泣ける作品とかと同じように、勃起できる作品を作りたい」

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