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年間の費用を分解しよう ~ 超初級 誰にでもわかる管理会計 ~

第3話

本日の登場人物

先生
新人さんは、取引先からの請求書も担当されていますよね?それらを思い出して、特定の部署で使った分かる費用をあげてみましょう。

新人経理
出費が大きいのは、洗剤と電気代と水かな。
洗剤は、衣料用とフロア清掃用と違うので明細を見れば分けられます。
電気代と水道代も、オフィスとクリーニング用機械とで契約を変えているので分けられます。
衣服の回収と配達は、別の業者さんに外注してるのでクリーニング事業部だけの費用ですね。
車はオフィス清掃事業部だけが持ってるので、車に関する費用は分けられます。
あと、前回先生が言っていた、お給料ですね。これもそれぞれの事業部に所属している社員は分けられます。

先生
どんどん出てきますね。他にはありませんか?

新人経理
機械のメンテナンス契約をしてます。それぞれ別の会社と契約してるのに、支払い月は一緒で今月1年分の請求書が届きました。
あと、クリーニングした制服を1つづつ包装する機械があるんですが、先月新しく買い替えて今月請求書が届いてます。支払いが重なっちゃったと社長が焦ってました。
これも費用になりますよね。あれ、でも今月だけ費用が異様に高くなっちゃいますけど良いのでしょうか?

先生
良いところに目を付けましたね。
まずメンテナンス契約から考えましょう。支払った月に全額費用として計上してしまうと、メンテナンス費用を支払う月だけ費用が高なってしまいます。そうすると、費用に引っ張られてその月の利益が異様に低くなってしまいます。これでは、正しい業績を把握できません。

大きな出費がある月の業績が悪く見える。

先生
もっと悪いのは、他の要因で利益が落ちたとしてもメンテナンス費用に隠れてしまう事もあるかもしれません。

大きな出費の中に、隠れた損失があるかもしれない。

新人経理
確かに。大きな出費があった月は、その支払いに目がいってしまいそうです。

先生
一括で年間の費用を支払うような契約は、各月で按分します。
そうすることで、支払った月だけ業績が悪くなるといった事を防ぐことができます。

新人経理
支払ってない月も年間サポートの恩恵を受けているから、負担しましょうって事ですね。
そういえば、機械の調子が悪かった時にエンジニアの方が見に来てくれました。請求されなかったんでてっきり無料かと思ったんですが、ちゃんとサポート料金を払ってたんですね。

先生
そういう事です。このように、月々の業績が分かりやすくなりますね。

各月で按分する。

先生
つぎに、機械の購入費用です。

新人経理
これも、1年で割るんでしょうか?でも、購入した年の利益だけが悪くなってしまいますし...数年で分割したいですよね。

先生
そこで登場するのが原価償却費です。
日照簿記3級のテストで、難関になる項目ですね。新人さんは得意ですか?

新人経理
テストは受かりましたが苦手です。
原価償却費とか、減価償却累計額とか混乱しました。

先生
では原価償却のおさらいです。
固定資産になるような設備を購入した年だけに費用を計上する仕組みだと、購入した年だけが業績が悪くなってしまいます。なので、財務会計では購入費用を複数年に分割して計上して良い、といったルールでしたね。

管理会計でもこのルールを適用するのも、適用しないのも自由ですが、今回は原価償却費を利用しましょうか。購入した時に資産の計上をしたと思うんですけど、資産の償却期間は何年でしたか?

新人経理
たしか5年だったと思います。
240万円で買って、5年間で負担すると、年48万。1年が12ヵ月だから、月4万円。機械の購入費用は、今月は月4万円ってことですね?

先生 はい、その通りです。

固定資産の場合、償却期間(月数)で割って、月々の金額を算出する。

新人経理
あのー、このまえ購買担当の事務さんが衣料用洗剤を間違って大量に発注しちゃって言ってました。半年分ぐらい頼んじゃったみたいです。
この場合は、洗剤の発注費用を半年で按分する感じですか?

先生
一度に大量に仕入れてちょっとずつ使っていく材料の場合、その月の消費量から負担額を算出します。

新人経理
なるほど。クリーニング事業部の同期に聞いてみます!

先生
ちなみにその仕訳は分かりますか?

新人経理
えっ…仕入勘定を使うんじゃないんですか?あれ、在庫勘定でしょうか…どっちがどっちだか分からなくなってしまいました。

先生
では、これは後日補講をしましょう。きっちり覚えておきたい項目ですからね。

では、今回のまとめに入りましょう。これまで上がった費用をまとめるとこのようになります。

新人経理
あれ、図にすると簡単ですね。

先生
簡単に見えますよね。重要な点は、その月に支払った金額ではなく負担する金額を把握する事になります。

新人経理
あれ?
月々に分ける意味は理解したんですが、そうすると私が普段登録している会計システムと金額がズレてしまう気がします。問題ないでしょうか?

先生
財務会計と管理会計の不一致問題ですね。
今回のケースは財務会計側の仕訳を調整すると一致しますよ。次回は詳細を説明しましょう。

新人経理
よろしくお願いします!!

-- 目次 --

第1章 部署ごとに業績を把握しよう

第2話 部署ごとに業績を把握しよう はじめに
第3話 年間の費用を分解しよう
・実務簿記1 仕入勘定ってあんまり使わない
・実務簿記2 保守契約の負担額を月々で分けよう
・実務簿記3 実務的な原価償却
第4話 オフィスの賃貸料を各部署で負担しよう(前編)
第5話 オフィスの賃貸料を各部署で負担しよう(後編)
第6話 《まとめ》部署ごとに業績を把握しよう

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