【ほぼ毎日レビュー】★★★★☆出光美術館「物、ものを呼ぶ」感想/8割以上が国宝&重要文化財! 見ないと損する!最高の展覧会
先日「掛け軸塾」のYoutubeの「2024年秋東京で絶対見るべき美術展~伊藤若冲、琳派、国宝・重文が勢揃い! 出光美術館ラスト展!!」で、出光美術館の「物、ものを呼ぶ」展が詳しく紹介されていた。
総合評価/★★★★☆/出光美術館「物、ものを呼ぶ」展
紹介動画の最初は、伊藤若冲の「鳥獣花木図屏風」。
1センチメートル四方の正方形8万6,000個を墨で切り、その8万6,000個すべての中にさらに小さな正方形を描き入れてから画面全体を白く塗り、その上に印象的な白いゾウをはじめたくさんの動物を極彩色で描いている作品。
宇多田ヒカルのサクラドロップスや、チームラボの作品の中でもそのオマージュが見られる。
「掛け軸塾」の説明を聞くなり「狂気だわ」と思い、ぜひ観たいと思った。狂気を見たいというよりも、なんだろう、そこまで本気を出せるやりたいことへの執着みたいなものに人間味を感じてみたいし今は観たいと思う。
攻略法/出光美術館「物、ものを呼ぶ」ギャラリー解説の日にGO/出光美術館「物、ものを呼ぶ」展感想
子供を誘って定期テストの休みの日、午前中の部活帰りに出かけた。
でかけたのはギャラリー解説がある日。
Youtubeなどで予習をしつつわたしも娘2人もそれほど知識があるわけではないので展覧会は音声ガイドかギャラリー解説があるある日を選んででかけることが多い。
美術館についたのは17時すこしすぎ。18時からギャラリー解説の日だけれどあまり混んではいなかった。
入口で「18時のギャラリー解説に入口のスタート地点集合ね」と言い合って別れて、それぞれが好きなように回った。
子供と行く時はいつもこのスタイル。
最初の展示は伊藤若冲の「鳥獣花木図屏風」から!/出光美術館「物、ものを呼ぶ」展感想
最初の部屋は伊藤若冲の「鳥獣花木図屏風」。
これを見に出かけたわけで、もちろん素晴らしかったけれど38点の展示品のうち36点が国宝と重要文化財という力の入った展示の中ではこれほどの作品でも普通に見えてくる。
それでもチームラボには申し訳ないけれど、チームラボと伊藤若冲では格が違うことも、とてもよくわかるなと思った。ただ、この感想を子供に言うと、「ママ、とはいえ、チームラボは、□四角を維持したまま、動物たちを動かしてるじゃない。あのプログラムはやばい」みたいなことも言っていた。
自分でもプログラミングをはじめた中学生には、手でかくほうがプログラミングで再現するほうが簡単に見えるらしい。こういう思わぬコメントが子供と出かけるとオモシロイ。
ちなみに、実際に目の前にすると伊藤若冲の「鳥獣花木図屏風」が真筆かどうか疑われ続けているということも、なるほどとなる。
すぐ隣に同じく伊藤若冲の真筆とまったく疑われていない見るだけでその精密さと超絶技巧の構図に目が点になって前から動けなくなるような「群鶴図」があったからだ。
「群鶴図」のチカラがあるのであれば、「鳥獣花木図屏風」のすごい構図と8万6,000個のマス目までつくったのだから、全力で「鳥獣花木図屏風」も描いてくれたら、もう光とパワーが強すぎて前に立てない! というぐらいのものになった気がして「惜しい。。。」とみんなついつい思ってしまって、これ真筆? って思わず疑っちゃうんじゃないだろうか?
わたしが貼り付けた上の「群鶴図」を見て普通じゃない? と思ったそこのあなた! これ、、、実物ヤバいです。(語彙)。ヤバさを表現する言葉を私が持たず残念ですが、ヤバいです。見に行ってください。
とはいえ、8万6,000個のマス目は、若冲ぐらいぶっとんでいないとそもそもが無理な気もしてくる。
鳴き交わす両極端な若冲の「群鶴図」と仙厓の「双鶴画賛」/出光美術館「物、ものを呼ぶ」展感想
「物、ものを呼ぶ」展は、展示方法の面白さも光っていた。
最初にニヤッとしたのは、若冲の「群鶴図」の横に、江戸時代の禅僧・仙厓義梵(せんがいぎぼん)の「双鶴画賛」の鶴が向い合せに並び、精密な鶴と一筆書きのような鶴がカーカーと鳴きかわしているように展示されていたこと。
若冲の精密な鶴も、仙厓の太目の鶴もどちらも負けてはおらず、しっかり張り合っている心地よい緊張感のあるつり合いがある。
仙厓の「双鶴画賛」に添えられた言葉は「鶴は千年、亀は万年、我は天年」。
鶴は千年、亀は万年生きるけれど、私の寿命は天が決めるというようなメッセージだろうかという解説が添えられていた。
しかもこの作品が出光佐三の最後の収集作品だと書かれており、なおさら抗がん剤治療中の私には響く。
あと数カ月なのか5年10年生きられるのかわからないと言われてから、気力を保っていけるのは「我は天年」。でも結構頑張れるはずみたいな、意味のない自信をもってると自分に言い聞かせたり、なにもなかったように今までよりさらに未来に前向きに向かってそっちに夢中になって癌のことなど考える隙間がなかったというように過ごさないとやりきれない。
何が何だかわからないけれど人間それぞれがもつ自分だけの狂気は絵画名品の中では日常の中よりも出会いやすい。
そういうものの前にたつと、自分の中の本質とか、自分のココロが刺激されて前向きモードが少し動く。そういうものを、癌と向き合う気力が出始めた今は、心が求めている。
酒井抱一の「風神雷神図屏風」のユーモア感/出光美術館「物、ものを呼ぶ」展感想
2つの鶴作品の横には酒井抱一の「風神雷神図屏風」。
抱一の風神雷神は、なんだか笑ってしまうようなテイストと力強さがある。
神様なんだか鬼なんだかわからない風神雷神。
無邪気なんだか残酷なんだかというようなとはいえ瑣末なことには拘らず数少ない本質に心赴くま素直に風を吹かせ雷を落とす存在のパワーがみなぎる。
実物はこの動画とは比べ物にならないほどカラフルで明るい印象。
この先には同じく酒井抱一の「十二カ月花鳥図」と「十二カ月花鳥図貼付屏風」が向い合せにあって、こちらも同じ絵師から繰り出された超絶繊細な花鳥図と、豪快な風神雷神の取り合わせににやっとする。
天才絵師たちにも波があり、両極端な挑戦をしたくなるのはものすごく人間らしいし、全力で生きている感じがした。
私たちにもわかりやすい作品の前半戦。
後半には出光美術館の2つの国宝が待ち受けていた。
2つの国宝「見努世友」と「伴大納言絵巻」/出光美術館「物、ものを呼ぶ」展感想
1つは、「見努世友」(みぬよのとも)。名前が素敵だ。名筆を集めた見本帳。これはよくわからなかったけれど、伝聖武天皇筆「大聖武(大和切)」という文字も見られ。。。東大寺を作ったあの聖武天皇? そんなことある? と思いながら見た。
もう一つは「伴大納言絵巻」。こちらは、、、言葉もでないぐらいの作品だった。どうやったらこんな細い筆でこんなにイキイキとおはなしの世界を描けるの!
前半の大物作品がここまで来ると大味に感じられるぐらいのこの世のものとは思えない様子で、この国宝は国立の美術館ではなくなぜ出光美術館にあるんだ? ともう素直に思わなかったと言ったら嘘になる。
40点弱のこじんまりとした展示だけれど、その分約2時間、ギャラリー解説と合わせて気になったものを何度もみたりする余裕もできて堪能した。
出光美術館収蔵品の自然愛とユーモア/出光美術館「物、ものを呼ぶ」展感想
出光佐三という人物の収集品と大切に守られてきた収集品たちがゆかりのあるものを「呼び寄せる」ように集まってきた様子を、よりすぐりの収蔵品で見せてくれる「物、ものを呼ぶ」展。
肩のチカラを抜いて素の自分で作品の前に立ちたいと思う作品が多かった。
また、思わず目を細めてしまうどこかで見たような記憶のなかにある自然の美しさが天才絵師や画家たちによって写し取られたような作品も多くて、絵の中から記憶の中の香りを感じたり、音が聞こえるようで、自分の記憶の中の自然を散歩しているような幸せな気持ちが湧いてくる展覧会だった。
会期2024年9月7日(土)〜10月20日(日)
会場出光美術館https://idemitsu-museum.or.jp/千代田区丸の内3-1-1 帝劇ビル9F
観覧料金一般1,200円詳細は公式サイトへ
休館日月曜日(9月16日、9月23日、10月14日は開館)、9月17日、9月24日、10月15日
出光美術館前後にGO! 有楽町駅からすぐの天空のマロンシャンテリー@交通会館 東京會館スカイラウンジ
娘たちと出光美術館に行く前に、同じく有楽町駅の交通会館の最上階にある東京會館のスカイラウンジで「マロンシャンテリー」を食べる。
▼マロンシャンテリーを子供と食べた様子
秋になるとマロンのケーキが食べたくなるし、作りたてが一番おいしいケーキだから、おでかけついでに食べられて大満足!
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