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イヌアレルギー:アレルギー体質でも犬を飼っても良い?イヌアレルギーになったらどうする?

アレルギー体質のお子さんから、たまに聞かれます。「犬を飼っても良いですか?」
あるいは、イヌアレルギーになってしまった、どうしたら良いか聞かれることもあります。

イヌを飼う、イヌと一緒に暮らすことにはたくさんのメリットがあり、また、飼いたいというお子さんの気持ちも尊重しないといけません。僕もワンちゃんは大好きです。ただ、アレルギーの側面から言うと、アレルギー体質のあるお子さんがイヌを新たに飼い始めることにあたっては、その後にイヌアレルギーになってしまう可能性があることを考えた上で、よく相談しなければなりません

*ネコアレルギーについても、多くの部分では同様ですので、参考にしてください。


イヌアレルギーの発症

イヌアレルギーも他のアレルギーと同様に、湿疹や荒れた皮膚からイヌタンパク(アレルゲン)が侵入→イヌタンパクを敵だと思って抗体を作る、ことによる発症がメインと考えられます。

そもそも、お子さんが抗体を多く作るかどうかは、抗体を作りやすいかどうかのアレルギー体質、お子さんの皮ふの状態、周囲のアレルゲンの量(イヌアレルゲンの量)、によって変わります。つまり、アレルギー体質が強いほど、皮ふの状態が悪いほど、アレルゲンが周囲に多いほど、抗体を多く作る(感作)可能性があります

アトピー性皮膚炎やダニなどのアレルゲンに感作されているお子さんがイヌを飼い始めると、イヌアレルゲンと頻繁に接触することにより、最初は大丈夫でも次第にイヌに感作され、後に症状が出るようになる危険性があります。また、特に室内で飼うことにより、イヌアレルゲンのみでなく、ダニなどの他のアレルゲンも増加しやすくなります。お勧めはしにくいというのは、そのためです。

もちろん、全てのアレルギー体質のお子さんが、イヌを飼いだしたらイヌアレルギーを発症するわけではありませんので、強く希望される場合には、もしもの時にはイヌを手放す必要すらあることを十分に理解した上で判断してもらいます。

ちなみに、気管支喘息のお子さんでの調査では、イヌ飼育家庭の感作率は4-22%でした。

イヌアレルゲン、毛が原因?

イヌの主要アレルゲンは、「舌下腺や耳下腺で産生」され、ネコアレルゲンとは異なり、皮膚での産生は確認されておらず、皮屑や毛に存在するアレルゲンは「唾液由来」と考えられております。

つまり、「毛自体が悪いわけではなく、毛に付いた唾液が悪さをしている」ということになります。毛が長いと、より唾液が付きやすく、よりアレルゲンを運べる・飛散させることになりますので、アレルギーに関しては、毛が長い方が不利にはなります。

イヌアレルゲンは、ネコアレルゲンと同様に、ダニアレルゲンより小さいものです。ダニアレルゲンを含む粒子のサイズは10-20μmであるため、空中に浮遊し続けることはなく、舞い上がっても次第に寝具や床の表面に沈降してきますが、イヌアレルゲンを含有する粒子は10μm以下と小さく、空中に長く浮遊したり、衣服に付着し他の場所に運ばれます。実際、ネコアレルゲンでの報告が多いのですが、ネコを飼育していない殆どの家庭の室内塵にもネコアレルゲンが検出されるようです。

イヌを洗えば大丈夫?

イヌを洗ってもイヌアレルゲンの空中浮遊量は、3-4日後には元の量に戻ります(ネコアレルゲンは翌日に戻る)。そうなると、週に2回はシャンプーあるいは水洗いすることが勧められますが、イヌ自身のことを考えると、週2回の洗浄はイヌ自身が皮膚炎を起こす可能性があり、決して好ましいことではありません。特に、イヌアレルゲンとなるタンパク自体がイヌの皮膚保護作用を有することが示唆されております。

イヌアレルギーの症状

他の吸入性アレルゲンと同様にアレルゲンの曝露部位に一致して、気管支喘息、アレルギー性鼻炎、結膜炎、アトピー性皮膚炎の症状が誘発されます。前述したように、イヌアレルゲンは微粒子として長時間空中に浮遊するため、イヌアレルギーのお子さんがイヌを飼っている家に入るだけで、即座に症状が出てしまうことがあります。

つまり、軽いと舐められたところが赤くなる、舐められた手で目を触ると目が腫れる、などで、悪化するにつれ、「触ると症状」→「近づくと症状」→「イヌが居る空間に行くと症状」→「イヌを飼っている方に近づくと症状(衣類などの影響)」などとなります。

イヌアレルギーの治療

イヌとの接触、イヌの近くに行くことにより症状が出る場合には、もちろん、アレルゲンから遠ざかること、イヌの飼育場所からの避難やイヌの飼育を中止することが重要となります。ただ、イヌを手放すことは現実的には難しいことが多いかとは思います。イヌを手放せられずに共存せざるを得ない場合は、室内で飼わない、特に寝室には入れない、抗ヒスタミン剤を定期内服しながら共存する、などによる対症療法となりますが、症状の強さによりその効果には限界もあります

イヌアレルゲンを減少させる方法

① イヌの飼育中止、飼育数を減らす、外で飼育する

イヌ自体のアレルゲンの減少:イヌを洗う(理想的には週2回、イヌのためには好ましくない)、飼育場所の制限や隔離(効果は低いとされている)

既に飛散したアレルゲンの減少:埃の溜まりやすい家具を置かない、掃除(アレルゲンをまき散らさないように配慮)、壁の拭き掃除(壁に付着したアレルゲンの掃除)

お子さんや家族の対応:イヌを触ったら早めに手洗い、イヌの唾液に注意する、毛がたくさん付いたら服を着替える、普段から皮ふの状態を良くしておく、など

これらを充分に検討して頂き、飼い始めるかどうか、ご相談頂くと良いかと思います。


参照:
・動物アレルギーの臨床:小児科臨床 62(4),2009
・動物アレルギー:チャイルドヘルス 13(8)
・動物アレルギーの原因となりやすい動物とその抗原の特徴:小児科臨床 62(4),2009
・アレルゲンとその修飾因子:アレルギー 65(3),2016

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