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『追憶の余韻』【第一章・前】~ひとりかくれんぼ大作戦~【Tの憂鬱】

2014年05月28日

『追憶の余韻』
『ひとりかくれんぼ大作戦』

第1章
『Tの憂鬱』
~捲き込まれた惨事~

前編




ある夜、いつものようにmixiを開けると
マイミクのYさんからメッセージが届いていた。

『ひとりかくれんぼって知ってる?』と

Yさんはmixiの『ジョジョ立ちオフ』で知り合った歳上の気さくな人なんだけど

僕が怖い話やオカルト系、特に『稲川淳二の怪談』が大好きで、自分で夜中に似てない『稲川淳二の物真似』動画を撮影して
ニコニコ動画等でアップしたりしていたのを知ると

同じくオカルト好きなYさんは、特によく絡んでくるようになっていた。

『ひとりかくれんぼ』
もちろん僕もオカルト好きのはしくれだ、名前くらいは聞いたことある、映画にもなっていたし
人形を使った交霊術?
でも、そんな都市伝説がある事は知っていたが、ちゃんと読んだことはなかったし、詳しくはよくわからない。

Yさんからのメッセージは
『今度Kさんっていう人の発案で廃墟でひとりかくれんぼをやるんだけど、そのスタッフを募集中なんで、Tくんやってみない?』

そんなお誘いのメッセージだった。
僕は正直ちょっと迷った

ひとりかくれんぼと言えばオカルト好きの間でも『やってはいけない』とタブー視されている危険な儀式だ。
そんなことをやれる人の気が知れない、とちょっと引いていたくらいだった

しかし、実際にどんなもの何だろう?とゆう興味はあった。

話を聞くと『Kさんが現場でひとりかくれんぼをやっている間、俺と外の車で待機して、何かあった時に助けに行く』とゆうことらしい。

『何かあった時』って…

何があるのか全くもって想像すらつかないが
少なくてもこの人達は
何かある事を本気で危惧し、心配しているのだろう?
そして、本当に怖くて危険だからこそ
みんな怖がって誰も協力者がいないのだ
でなければ無関係な僕の所にまでこんな話は回ってこないはずだ。

とりあえず僕自身がひとりかくれんぼをやるとゆうわけでもないらしいので

有名な都市伝説『ひとりかくれんぼ』を最前列で見ることができる機会なんてめったにないだろうし

なにより
只でさえ危険、やってはいけないと噂されるひとりかくれんぼを、心霊スポットや廃墟なんかでやろう、と言い出したイカれた思考を持つ『Kさん』とゆう人に単純に興味があり会ってみたかった。

そうしたいろんな葛藤の末

僕は
『わかりました、やってみます』
と返事をした。

結果
僕はかなり後悔する羽目になることになったのだが…


8月15日

夜の9時頃、僕はYさん達と待ち合わせした京都のファミレスに到着した

YさんとKさんは既になにかしら軽い夕食を食べていた

『はじめまして♪今日はよろしくな?』
と顔見知りのYさん以外の男性が声をかけてきた
Kさんだ
Kさんはちょっと小柄だが、全身迷彩服の坊主頭にキャップをかぶり、ネックレスや指輪などのアクセをしていてちょっとイカツイ感じの人だった。
が、まぁ、思ったより気さくに話しかけてきてくれるので、そんなに気まずい感じはしなかった。

『稲川淳二の物真似動画見たで♪めっちゃ面白かった♪君エンターテイナーやな?今日は面白いもんができそうやわ♪』

僕もあまり面識のない人達との作業が始まるので、それなりに緊張していたが、それでも最悪部外者、傍観者としての立ち位置だと自覚していたので、不安もそこそこだった
しかし
これからその噂の現場で危険な交霊を行うKさん達はそれどころではないはずだ。

なのに『面白いもの』と言ったこの人は
やはり少し頭の回路がずれているのかも知れない。

『それじゃ、今日の段取りを最終確認するで?』
とスパゲッティを食べ終わった僕の顔を見ながら話すKさんの目付きは
さっきまでとは雰囲気が違っていた
真剣さとイヤらしい悪意のこもった怪しい目で
今日の段取りを説明しだした。

僕の役割は、まず冒頭
僕の持ちネタである『稲川淳二の物真似パロディ』をしながら現場付近の紹介動画を撮る

その後、現場内の探索は全員で行う

その中から『隠れ場所』や『人形の部屋』を決めて
夜中の三時から『ひとりかくれんぼ』スタートだ。

始まったら僕は一人で廃屋の外に停めてある車でトランシーバーを持ち待機

中で作業中のKさん達と連絡を取り、その詳細を、『実況中継トピ』に書き込んでいく

もちろん、何かあった際は救助に飛び込む必要があるのだが、

正直その勇気があるかどうかは
まだ不安が残っていた。

そして時刻は24:00を回り
そのイベントはスタートした。

スタート地点はG病院近くの駅前
時間が時間だけに人通りは少なかったが、それでも時々車や帰宅サラリーマンなどが通る

人通りが収まるのを待って
Yさんが回すビデオカメラの前でKさんが最初のあいさつをするとさっそく
『それでは今日のスペシャルゲスト、稲川淳二さんです(笑』
と振ってきた
僕は準備した『稲川淳二コス』を身に纏い、少し奥の階段を降りながらキャラに入り込んだ。

『いや~なんだかねぇ…冷たい女の声ってゆうのかなぁ、男の気配みたいのがこのあたりにだんだん…だんだんと…』

などと相変わらず思い付きのアドリブで適当な事を喋った。
YさんとKさんは半笑いで対応しながらこの稲川パロを楽しんでいる。

なんだこの和やかな雰囲気は?

全力でやってる僕がいうのもなんだが
とても今から『凄惨な事件現場』で『呪いの儀式』を行うとは思えない緊張感のなさだ

しかしこれもKさん曰く
『恐怖感てのは緊張と緩和のギャップが生む演出力の産物なんだよ』とゆうことらしい

つまりはより恐怖感を高めるために最初はふざけ倒すのだそうだ。
そのツカミの為には、僕の稲川パロは絶好のネタなのだと言う。

そんな感じでふざけていると
撮影しているYさん達の後ろから
髪の長い白いワンピースを着た女性が近づいてくるのが見えた

多分帰宅途中であろう女性はうつむいたまま、僕らと目も会わせずに、僕らの脇を抜けて
階段を登っていった
付けひげとカツラを被っていた僕は『うわぁ、ちょっと恥ずかしいな…』と思い顔を背け知らん顔をしていた。

彼女が通り過ぎて
振り替えるとKさんが彼女を後ろを食い入るように見ていた

?と思っていたら
Kさんが真剣な表情でちょっとゾッとすることを言い出した

『誰か今のやつの顔を見たか?

僕は恥ずかしさのあまり、目をそらして、顔を見ることも出来なかったのだが、Yさんも被りを振って『後ろ姿しか…』と言う

Kさんは『俺もチラッと見ただけで…よく顔が見えなかったんだけど…てゆうか…目が無い様に見えたんだよ』

続けてKさんはこう言った

『この上って、確かG病院裏の墓地しかなかったはずだよな?なんでこんな時間にあんなとこ行くんだ?』

僕らはスタート地点から、いきなり冷や水を頭から被せられた様な気分になった。


気を取り直して撮影を再開する

G病院、呪いの踏み切りとホンとに近くに並ぶ心霊スポットの先に問題の現場である廃屋があった。
その雰囲気は想像していた以上の不気味さで
霊感なんて洒落たものの無い僕でも、ここが普通の建物じゃない事は一見して分かった。

現場に到着し、ある程度周辺の説明を終えると

『それじゃ、いこうか?』とKさんが先陣をきって廃屋内に乗り込んでいった

こうみえて僕は簡単に行けるトンネルや峠等の心霊スポットは時々行ったことはあるが『廃墟探索』とゆうのははじめての体験だ。
しかも、こんな夜中に、
初体験にしてはかなりレベルの高い廃屋探索だったと思う

しかも、ここが殺人事件の現場だったのかと思うと
多分僕一人なら絶対に入ることはおろか近付く事も出来なかったかもしれない。
生活感の残る、荒れ果てた見た目も雰囲気も不気味過ぎた廃屋

幸いなのはこんな場所に慣れている事がハッキリ分かるKさん達のズカズカと立ち入っていく淀み無い動きに、置いていかれないように必死で、怖いと思う暇もなかった事だろう。

息が苦しくなるような緊張感と共に、不気味で真っ暗な屋内を探索していく

僕は、慣れない僕を気遣って側に居てくれるYさんに付いて、ゆっくりと廃屋を回っていたが
Kさんは一人で勝手にどんどんとあちこち探り回っている
その目は爛々と輝いていて、なんかもう僕らの事など眼中に無いみたいだった。

しかし
初の廃屋探索に、変にテンションが上がり騒いでいた僕達にKさんから小声で活が飛んだ
『おい!あんま騒ぐな?声がデケェよ?ライトを窓から外に射すなって?』

確かに…
僕達は今不法侵入の真っ最中だ

始まる前のミーティングで
『廃屋探索は違法行為だって事を自覚して、出来る限り隠密に行え』と注意を受けていたことを思い出した。

こんな異様な雰囲気のなかで、Kさんだけが冷静&客観的に自分達を観察していた事に
『この人スゲーな』と素直に感心した。

…のもつかの間

次の瞬間、Kさんはニヤ~とイヤらしい笑みを浮かべながら

『ちょ、お前らちょっと来い、スゲぇもん見付けたぞ?』

と僕らに手招きする。

ドキッとした僕らに、
Kさんは一冊のノートを手に持って差し出した

?とゆう顔をしていると

『…名前…』

とボソッといいながらノートの右下に書いてある持ち主であろう女性の名前を指差した

『新聞記事の…被害者の女の子…』


『あっ!ホンマや…』
Yさんが感づいた様に驚いた

僕も続いて気が付いた
それはここで例の惨殺事件が起きた事を確定する、証拠品だったのだ。

Yさんは『記事にはこの辺りって情報だけやったから、多分ここやろう、てだけやったんやけど…これで確定した…』と付け加えて説明してくれた。

その瞬間
それまでの半分怖いもの見たさのピクニック気分だった空気が一瞬で凍りついた。

暗闇の向こうから何かの気配がする気がする…

僕はこの日初めて本気でゾッとした…

別に嘘だと思っていた訳じゃないが
それまでどこか噂話の類いを出ないあやふやで、突拍子もない対岸の火事のように感じていたものが、いきなり現実味を帯びて自分の居る場所を自覚させたのだ。

ここで人間が殺された…

日常ではほとんど触れられない狂気がここにまだ残っている気がする

被害者の恐怖を想像する

怖い…

恐ろしい…

ココニイタクナイ…


そんな僕のビビりきった内心を見透かすように

Kさんは『よし、探索は済んだな?さっさと準備はじめるぞ?』

と段取り通り各スペースの選定や準備に入った

ホンとにこんなとこでやる気なのか?
と目を疑ったが、既にKさんの目の色は違っていた

Yさんも何だかんだわりとノリノリで自分の隠れ場所を決めたり、人形の準備をしたりしていた。
この人達は怖くないんだろうか?
もしくは想像力ってものが欠如してるのだろうか?
僕はもう何もする気になれず
ただただ彼らの後を無言で着いていくことしかできなかった。

すると、ここにきてKさんがまた異常な事を言い出した

恐らく被害者の女の子の机であろう勉強机の上に置いてある
ピーチ姫の人形を手に取ったかと思うと、暫く見つめたまま動かないのだ。

俺達が声をかけても

『あ?あぁ…うん…』と

反応もあいまいでなにかに集中している

するとKさんは突然、耳を疑うような、とんでもないことを言い出した

『俺…この人形遣うわ…』

そういったKさんの目は完全にイッテいた

この人形をつかう?

もちろんひとりかくれんぼで使用するとゆう意味だろう

『え?マジですか?凄いっすね…』
これにはYさんも少し引いていた

だってこれは遺品だぞ?

個人的にはオカルトの倫理観を越えてしまってる気がする…

しかしその意思は固いらしい

『絶対やる』『もう決めた』
と頑なに意思表示をする。

そしてさらにKさんは
『脳ミソ腐ってんじゃないか?』としか思えない事を言い出した

この日いちばんイヤらしい
悪意のこもった目でこう言ったのだ

『人形の名前…エ○リちゃん(被害者の女の子の名前)にするわ…』


なに考えてんだこの人…
僕は完全に引いた


流石のYさんも表情を変えて
『え?ちょっ…とさすがにそれは…不味くないですか?』と止めに入った

しかしKさんは反対される事を予測していたように
異常とも言える口調で人形を見つめながら『絶対にやる』と頑なに意思表示を続けていた。


その異様な目の色に僕は一瞬、この人もしかして執り憑かれちゃったんじゃ…?

と思った。





第一章『Tの憂鬱』
~捲き込まれた参事~

前編

後編に続く

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