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『追憶の余韻』~導きの黒猫~

『追憶の余韻』~導きの黒猫~

2014年05月13日

ちょっと不思議な話

二年前の夏の話

その夏はホラーホリックの活動全盛期で週一でメンバー集めては夜な夜なホラースポットを求めて足を伸ばしていた時期で

丁度その夏に企画していた一大イベント『ガチなホラースポットで行う怪談百物語朗読会』を行うのに相応しいイベント会場を探すべく
大阪の高槻から最後は和歌山の和歌浦くんだりまで各自お薦めの廃墟や心霊スポットを巡ってロケーションハンティングを行った日だった。

メンバーは俺の他、ホラーホリック常連のヤギくん、Tくん、
後一人たーぼうとゆう俺の同級生が途中参加する予定だったのだが、予定時間に迎えにいったら居眠りして電話に出なかったので、そのままほってきたwww

ま、その日は、曰く付きの呪われた空き家だとか、心霊スポットの近くの廃地下豪だとか、廃モーテルだとか、無気味な神社だとか、廃旅館だとか、一晩で色々な会場候補のホラースポットを巡ったのだが、

その辺の詳しい話はまたいつかやるとして、

その途中で立ち寄った
『新W観光ホテル』とゆう最近廃墟化したと噂の割りと新しい廃ホテルがありまして。

それは海岸沿いの断崖に建っていて、崖下の海辺には露天風呂みたいなものもあった

車でホテルの駐車場に乗り付けた俺達は照明もない真っ暗な敷地内で車を降りた
結構大きな建物で、玄関はもちろん窓や勝手口なども、当然締め切られていた

何処か入れる場所はないかな?
と俺達は手分けをして侵入口を探索することになった。

しかしいくら巡れども、どの窓も扉も施錠されて一向に侵入出来そうな場所は見つからない

う~ん…とこのホテルの侵入を諦めかけた時

一人でホテルの裏側を探索していた俺の前に

『ナ~ォ…』と

ホテル裏の石垣から
黄色い目をした大きな黒猫が音もたてずにスッと現れた

暗闇の中、黄色い目だけがギョロリとこっちを向いて現れたので、
ちょっとドキッとしたが、何故かあまり怖いと思わなかった。

するとこっちを向いていた黒猫が、ふいと俺の前を歩き出し

トコトコとホテル裏の非常階段に向かって歩き、
立ち止まって俺の方にまた振り向いて、その黄色い目で俺を見つめてまた『ナ~ォ…』とか細く鳴いた

俺はその時何故か、
その黒猫が『こっちだよ?』と
言って俺を導いているような気がした。

半信半疑でフラフラと黒猫の後を追って非常階段まで歩くとまたその黒猫がふいと歩き出し

非常階段脇にある、窓下の少し出張った壁の燦(サン)の上を歩いて行った

そのホテルは海辺の断崖脇に建っていて俺達が車を止めたロビーフロアが丁度二階部分にあたる構造になっていた。

つまり猫は一階部分にあたる窓の燦の上を歩いて行ったのだ

その壁側はまさに海辺を向いた壁面で、壁に張り付いてやっと人一人通れるような、細い足場だった

その足場の下は断崖で、万一足を滑らせ落ちてしまったら
海まで一直線だった。

マジか?とさすがに一瞬躊躇したが、
猫は燦を渡りきり反対側の壁面でまたも振り替えって俺を待っている。

俺も頭がおかしくなってたんだろうな?

今考えるとそんなはずないんだが
もう、完全に『俺を猫が導いてくれている』としか思えなくなっていた

俺は壁に張り付いて細い足場を確認しながら断崖絶壁の壁面をゆっくり渡りだした。

完全に落ちたら大ケガじゃすまない高さだったが、

何とか猫の後を追って壁面を渡りきった

そして猫はふたたび歩き出すと
今度はホテルの角を曲がってさらに裏側に行ってしまった。

俺も慌てて角を曲がると

そこには足場のある駐車場側から完全に死角になった断崖側の角にある
壁面に設置された屋上へ繋がっているであろう非常階段用の鉄板でできた細い通路があった

その狭い通路はホンとに幅30センチ長さ三メートル位の細い足場だけで非常階段は垂直に伸びた錆びた鉄梯子だった。

梯子は足場を貫通して上下に延びている

違う階への移動は梯子付近の床が扉になっていてカパっと開いて降りたり、登ったりできる。



そこで俺がゾクッとしたのは

あの俺を導いてくれた黒猫が何処にもいなかったことだ

燦から来たらここが行き止まりで
上下に行くには床の鉄扉を開ける必要がある

猫にそんな力業が出きるはずがない。

じゃ、どこへ?

海に落ちた?

それともそんな黒猫は最初からいなかったのか?

俺は何に導かれてここにたどり着いたんだ?

かるくパニックになりつつある俺はとりあえず
その非常階段を降りてまだ探索出来てない一階部分の窓や扉を調べてみた

ここで扉が開いていたらまさに気味の悪い話だが

が、やはり窓は施錠はされていた…

そんな上手く行くはずないか…

と諦めかけたその時、とある小窓から

カリカリ…

と小さな爪で引っ掻くような音が聞こえた

ん?と気になった俺はその窓に手を掛けた…

すると

カラララ…

開いた…!!

大窓の下側にある小さな小窓が唯一鍵が空いていたのだ

俺はすぐさまメンバーに電話で場所を説明して呼び寄せ

見事三人での侵入を成功させた

偶然か、あの一連が夢だったのかはわからないが、

あの黒猫がいなければ絶対にたどり着かなかったであろうポイントにたどり着けた事だけは事実だ。



ちなみにホテルの中は思った以上に綺麗で
未だに警備員が定期的に見廻りに来ている痕跡があり

会場候補からは排除された


おしまい

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