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『ブルーマウンテン』 第ニ週 《見えない糸》vol.7
【登場人物】
谷崎 涼真/25歳
カフェでバイトをしている。
いつか、自分で店をオープンするために修行中。
嶋田 樹(いつき)/20歳
大学生。両親は有名な俳優。
幼い頃から世話係に育てられ、親の愛情を知らない。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
涼真:
来月、働いてるこのカフェがリフォームするため、1週間休暇になったから、久しぶりに実家に帰ろうと思っていたところだった。
3年前に実家を出てから、ほとんど家に帰ってなかった。海沿いの小さな田舎町。
小さい頃、よく砂浜で遊んでたな…
(店のドアのチャイムの音)
『いらっしゃいませ…あ、君』
顔を上げると、そこには、あの青年が立っていた。
『大丈夫か?そろそろ退院した頃だと思っていたんだ』
樹:
『え。覚えててくれたの?僕のこと…』
涼真:
『あたりまえだろ、あれだけの出来事、忘れられるわけがない。…でも、良かったよ。もう一度、君に会えて。』
樹:
『…あ、あの』
涼真:
『ん?どうした』
樹:
『あ…』
涼真:
『…』
樹:
『あり…がと…』
涼真:
『あ、あぁ…あ、おい、どうした』
彼は、その大きな瞳一杯に、涙を溜めていた。
『大丈夫…か?』
樹:
『う…う…』
涼真:
『…泣きたいなら、泣いていいんだぞ』
樹:
『…』
涼真:
『男だって…泣きたいくらいしんどい時が…あるもんな』
樹:
『う、うあー(泣)』
涼真:
彼は、子どものように泣きじゃくった。
まるで、今までずっと、泣いたことがないんじゃないかってくらい…
その姿が、母さんが居なくなった時、泣き叫んで父さんと姉ちゃんを困らせた、俺自身の姿とダブった…
『辛かったな…』
肩を震わせて泣いている彼を、俺はそっと抱きしめた。