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【Catcher In The Relay】この恋を漕ぎだせタイムトラベラー【メカトル時空探検隊】

○はじめに


こちらの企画への参加で記事を書かせていただきました。ありがとうございます。

 Catcher In The Relay 推理編 トレイラー


Catcher In The Relay 解決編 トレイラー


すべての記事をまとめていただきました、ありがたいですねぇ。



○「メカトル時空探検隊」はどんな曲?


「メカトル時空探検隊」は、UNISON SQUARE GARDENの5枚目のアルバム『Catcher In The Spy』の折り返し地点となる6曲目に位置する曲である。

『Catcher In The Spy』は1枚目のアルバムに近い雰囲気で原点回帰と言えるかもしれない。3人の楽器だけでできるところまでやろうという心意気を感じる。3枚目、4枚目のアルバムで培ったポップさと1枚目、2枚目から感じるロックの融合したハイブリッドなアルバムになっている。

「メカトル時空探検隊」は、全体的にロックな印象の強いアルバムにおいて、最も楽しくて可愛い曲だと思う。気負わずに聴けるというか、30分枠のドラマなら観てみようかなと思える感じで聴くことができる。

軽快なギター、よくわからないけれど楽しい歌詞、綺麗なコーラス、すべてにおいてハッピーな一曲となっている。ライブで聴くと歌詞の〈OK OK〉のところで伸ばした手をOKのかたちにして踊らされてしまう。

2番のAメロは1番とは異なる工夫があったり、長めの間奏ではタイムマシンで時空を超えているかのような浮遊感がある。3分26秒の短い曲だが、展開が詰め込まれていて何度聴いても満足できる。



○意味がないを極める


4枚目のアルバム『CIDER ROAD』は名曲揃いでメッセージ性の強い曲が多かった。言葉と向き合ったアルバムだったのだと思う。語彙の一字「彙」はハリネズミと読むことができるらしい。

4枚目である程度伝えたいことは言えたのかもしれない。『Catcher In The Spy』では、意図的にすべてを意味のある曲、わかりやすい曲にはしていない気がする。

「メカトル時空探検隊」はリード曲ではない。タイアップ曲、シングル曲でもない。重圧のない6曲目だからこそ自由度が高くてもOKなのである。


明確に何かを伝えようとするタイプの曲ではない。けれど、とにかく楽しい雰囲気は伝わってくる。漫才師で言うとフースーヤみたいな曲である。

先日放送された『ABCお笑いグランプリ』で、フースーヤのネタ終わりに司会の南海キャンディーズの山ちゃんは、声が出せないくらいヒィヒィに笑いながら「なんて内容がないんだ」と言った。

あんなに笑ってくれるなら「内容がない」も褒め言葉だと受け取った。かつては同期に嫉妬したり、悔しさをバネに試行錯誤し続けた、あの山ちゃんが今フースーヤで笑っていることがとても嬉しい。

審査員の志らく師匠は、フースーヤの漫才を「言葉のマジックが天才的、芸術」と褒め「ハマっちゃうと大ファンになる」と続けた。「意味のある笑い、意味のない笑い、どっちが優れているか、意味がないが来ちゃうと意味があるは勝てなくなる」と持論を語った。

フースーヤの漫才はギャグ漫才と呼ばれるもので、本題の間にギャグが挟み込まれるのが特徴である。

めちゃくちゃにみえるけれどネタの構成がしっかりしている。ワードセンスだけじゃなくて漫才の技術もレベルアップしている。その技術の高さを感じさせず純粋に楽しめるところもすごい。ギャグ漫画家が画力が高いのをひけらかさないみたいな感じ。

ずっと同じ芸風でブレずに自分たちが面白いと思うことをやり続け、年々進化して賞レースで結果を残せるようになってきている。

「杏仁豆腐のモコモコパジャマ」「僕の好きな子いっつもグリフィンドール」などの言葉の意味はようわからんけど、とても面白い。なんでもいいわけではなくて語呂が良くて声に出したくなる言葉を選んでいる。

『ABCお笑いグランプリ』では、令和ロマンに負けてしまったが、大健闘だった。快進撃は始まっている。

 
音楽でも意味のわかる曲のほうが共感され評価されやすいが、意味のない歌詞、一聴ではわかりにくい歌詞が劣っているということはないはず。

意味がわかる曲と同じくらい素晴らしい。いや、それ以上かも。人それぞれの意見はあるだろうけれど、わからないから駄目なんじゃなくて、わからないを面白がっていたい。

そのひとにしか書けない言葉をもっと評価されてもいいのになと思っている。勝ち負けじゃないけれど。


「harmonized finale」には〈立派にキレイに見えるように 飾ったら 立派にキレイな答えが 出るけれど 大層な虚栄心に満たされるほうが怖い〉という歌詞がある。

これは、綺麗な曲を書くこともできるけれど、ユニゾンではあえてそうしない、という意味に捉えることもできる。綺麗な曲で評価されて満足したくない、ユニゾンの曲は綺麗なだけじゃないほうが、ずっと面白い。意味がない、わからないも極めれば強い。



○歌詞について


歌詞はよくわからないと書いてしまったが、まったくわからないということではなく、ストーリー仕立てになっている。

内容としては、タイムマシンに乗って未来から過去へ行く恋の物語だと思っている。タイトルのメカトル時空探検隊とは、主人公が所属する部隊の名前だろうか。

それでは行ってみようε=┌(;・∀・)┘イッテミヨ!!

アメリカの生活は逞しい 傍若にフレンチをフライする
ものさしはとっくに壊れてる everything is gonna beam hard!

ここらへんは意味ではなく語感を重視している。おそらく未来の話であるため現代人には理解が追いつかない。〈逞しい〉とサビに出てくる〈タイムマシン〉の音を揃えている。そのあとの〈かぐわしい〉も韻を踏んでいる。

〈傍若にフレンチ〉は傍若無人から来ていたり、言葉選びが楽しい。未来はいろんな国の文化が混ざっているのかもしれない。

また、フライドポテトのことをアメリカやカナダでは、フレンチフライと言うらしい。これは知らんかった。元々ある言葉を分解して組み立てると新しい言葉が生まれるみたいで面白い。

『Catcher In The Spy』のジャケットは初回盤と通常版で手のかたちが違う。初回盤では握った手の親指と小指を立てたかたちになっていて、ハワイの挨拶にもみえるので歌詞の〈ハワイアン〉とのつながりも感じさせる。また、ものさしがないときに手で長さを計る手尺もこのかたちである。僕らの音楽は簡単には計れない、ということだろうか。


バスケットシューズを履き潰してピッチャーのマウンドへと旅立ち
華麗に倒立を決めても 主審判断には逆らえない

ここも未来の話。いろんなスポーツが混ざってしまっている。もしかしたら〈フレンチをフライ〉の〈フライ〉も食べ物だけじゃなく野球の要素なのかな。〈ピッチャー〉はアルバムタイトルの『Catcher』とも呼応しているのだろうか。


ハリクマハリタ ずっと彼女に憧れたい
なら「いざ」って 思い立ったなら 止められない!

物語が動き出すのはここから。未来の生活は今よりも便利だけど、主人公にとっては窮屈でつまらなくて逃げ出したかったのかもしれない。

主人公には憧れの女性がいた。彼女とは生きている時代が違い、タイムマシンを使わないと会うことができない。いつかは会いたいと思っていたが、今だ!と思い会いにゆくことにした。


だからタイムマシンでふらっと行く 君の街までふらっと行く
ポンコツでも 無様でも 操縦ができればOK OK

タイムマシンの運転は苦手だけれど、ふらっと行けるくらい安全性は保たれているらしい。ここの歌詞が好きなひとは多いはず。歌詞の〈行く〉は、“ゆく”と歌っていて、“いく”と歌うよりも気持ちがこもっている気がする。

ポンコツ、無様などの言葉をプラスに変えられるのは魔法みたいだと思う。〈君の街までふらっと行く〉という歌詞は、みんなが住んでいる街をまわってライブをするユニゾンらしい言葉でもある。


正論すぎるパラドクス 面倒くさいから見ないフリ
道理摂理蹴っ飛ばしちゃう 異論はない、はてさてどうしようか?

パラドックスが起こってしまうから、過去の世界の彼女との関わりは本当は駄目なのだろう。しかし、恋をしてしまうと道理も摂理もどうでもよくなってしまう。どうするかはこれから考える。


マダガスカルにだって首都はあるよ 誰も彼も準備だけはある

ここもわからないので未来に流行っている言葉だと思うことにした。思い出すのは「徹頭徹尾夜な夜なドライブ」の2番の〈だっちゅーの ゲッツーの ルネッサンスの ですから残念〉の部分。

ここは、お笑い芸人のネタが元になっている。説明するまでもないかもしれないが〈だっちゅーの〉はパイレーツ、〈ゲッツー〉は(元はゲッツだが)ダンディ坂野さん、〈ルネッサンス〉は髭男爵、〈ですから残念〉は波田陽区さんのネタから来ている。

〈マダガスカルにだって首都はあるよ〉も未来のお笑いで、未来のゴー✩ジャスさんを思わせる。ゴー✩ジャスさんは宇宙海賊なので、未来に生き残っていても不思議はない。ちなみに、マダガスカルの首都はアンタナナリボである。


全人類に愛とチョコレートを! そんぐらいは先生、許してよね

〈全人類に愛とチョコレートを!〉と言ったら、下の句の〈そんぐらいは先生、許してよね〉と返すノリがあるのかもしれない、知らんけど。

吉本新喜劇で「邪魔するでー」と言われたら「邪魔するんやったら帰ってー」と返す感じかな。新喜劇が終わって劇場の幕が下りるときに「君の瞳に恋してない」が流れているのも面白い。

〈先生〉という歌詞が出てくると「デイライ協奏楽団」の〈先生、もう一回ってあいつが言う〉や「チャイルドフッド・スーパーノヴァ」の〈ほらミマワリせんせいが 僕をじっとみているのさ〉や「スロウカーヴは打てない(that made me crazy)」の〈先生、ネジはおやつに入りますかって ジャッジしてほしいぜ〉などを連想する。

曲調だけならこの3曲は「メカトル時空探検隊」と近い気がする。どの時代も先生はちょっと怖く、別に悪いことしてなくても怒られるんちゃうかと内心ビビっている。

 

時間の法則が乱されて 実感が捻じ曲げられちゃう
そんなのゲームの出来事じゃなかったっけ?

「チャイルドフッド・スーパーノヴァ」の〈ボス戦〉という歌詞もゲーム中を思わせるし、〈ちょっとだけチョコレイト〉という歌詞もあってつながりを感じる。

ボス戦の前はゲームのデータを保存しておいて、負けたら電源を切って勝てるまでやりなおせる。そんなゲームみたいなことが実際に起こっている。

この〈ゲームの出来事じゃなかったっけ?〉という戸惑いのある言葉は彼女の台詞だろう。一緒にタイムマシンに乗ってみて驚いたのだろう。〈時間〉と〈実感〉が歌い方によって同音異義語になっているのも楽しい。タイムマシンで時間が戻ったことを〈実感が捻じ曲げられちゃう〉と言語化したのも鮮やか。


問い合わせたって軽く撒かれちゃう 本能にはとっくに覚悟がある
やむをえんって 開き直ること この上ない!

過去の人間である彼女には疑問に思うことがたくさんあるけれど、彼に質問してもまあまあ(つ´∀`)つ、と濁される。けれど、覚悟を決めてタイムマシンの旅に彼女もついて行くことにした。

「スロウカーヴは打てない(that made me crazy)」の〈恋に短し愛に長し? って君の覚悟を聞いてんの!〉という歌詞ともつながっているのかな。

1番の〈ハリクマハリタ〉では、サリーちゃんの呪文のような言葉にわからんけど可愛いからいいかと通り過ぎたが〈軽く撒かれちゃう〉と音を重ねるためだったのか。うまいな〜、1本取られたな〜と思う。


速度規制も何にもないけれどトンネルの中は気をつけて
違う壁ぶつかれば 出口がずれるよdanger danger
見たこともないラブロマンス?もしかして稀代の大騒ぎ?
ひっくるんでBon Voyage!お大事に! はてさてどうしようか?

時空を超えるトンネルを通るときの注意点を彼女に伝えているようだ。行きたい時代に行けるけれど、慣れないと目的とは違うところに行ってしまう危険性もある。

彼女との時空を超えた旅は、許されるものではないのかもしれない。それでも、フランス語で「よい旅を!」という意味の〈Bon Voyage!〉という言葉を選んだ。

ひっくるめて、だと説明っぽくなってしまうところを〈ひっくるんで〉と歌うところがこの曲のポップさに合っている。音的にもテッテテテテよりテッテテンテのほうがいいもんね。キュウの漫才「テテテンテ」がユニゾンのYouTubeチャンネルで観ることができるのも嬉しい。

斎藤さんはキュウのおふたりとの対談で『M-1グランプリ』について「やっぱり観ると泣いちゃいますもんね」と言われている。漫才師からシンパシーを感じて、音楽を続けるエネルギーに変えていたんじゃないかな。

ユニゾンの3人もいろんな物事から影響を受けてきたはず。そしてもちろん、ユニゾンから影響を受けて人生変わったひともいる。現にここにいる。
 

どうしようか?
どうしようか?
相談しよう。

前途多難の旅である。1番のサビの最後は〈はてさてどうしようか?〉で終わっていて、彼が一人で突っ走っていた印象を受ける。曲の最後では〈相談しよう。〉が来ることで、彼女と助け合って生きてゆくのだろうと想起させる。明るい未来を思わせて曲は終わる。


歌詞について考察してみて、

575では説明できない
理屈抜きでも意味を見出しても楽しい
ラブストーリーということがわかった。

 
・・・。

・・・・・・。

・・・ゴリラであいうえお作文しました・・・。



○「さよならサマータイムマシン」との比較でわかること


タイムマシンが出てくる曲として「さよならサマータイムマシン」がある。2019年に行われたカップリング曲の総選挙「B side 総選挙」では10位に選ばれている。

「B side 総選挙」では1位になった曲のMVが制作されることが約束されていた。すでにMVのある「さよならサマータイムマシン」が10位というのは相当な人気が伺える。

曲調が似ている曲ではないけれど、ここでは比較して考えてみたい。


まず季節感があるかどうか。「さよならサマータイムマシン」はタイトルの通り季節は夏である。「メカトル時空探検隊」は冒頭から〈アメリカの生活〉と言っていて、歌詞に季節の言葉が含まれていない。どの季節にもタイムマシンで行けるから設定しなくてもいいのかな。

「さよならサマータイムマシン」はタイトルにタイムマシンが入っているが、歌詞には入っていない。「メカトル時空探検隊」は逆にタイトルにタイムマシンが入っていないが、歌詞には入っている。

これは主人公がタイムマシンをどう捉えているかの違いだと思う。「さよならサマータイムマシン」の〈世界の仕組みが ほら壊れ始める〉という歌詞には、タイムマシンへの疑念も含まれる。「メカトル時空探検隊」では最初からこれはタイムマシンと認識している。彼女の暮らす街へふらっと行けるほど気軽に乗ることができる。

物語の時代設定の違いもあると思う。「さよならサマータイムマシン」のストーリーは、何らかの理由でいなくなってしまう彼女を時を超えて何度も救おうとしていると思う。彼女が生きている未来へたどり着くことが目的であるため、元いた場所からそう遠くない時代へ移動している。

「メカトル時空探検隊」ではタイムマシンに乗ってはじめて彼女に会うことができる。「さよならサマータイムマシン」には〈遠すぎた心 届かなくて霧隠れ 近すぎてアンバランス 立ち行かなくなってリプレイ〉という歌詞があり、彼女とは心は遠いが距離は近い関係であることがわかる。

「さよならサマータイムマシン」は曲調もあいまって緊迫感や切なさがある。〈君がこの世界から切り離されて 最後の旅に出る〉という歌詞では、彼女を救えなかったのかもしれないと思う。落ち込まず進んでゆく「メカトル時空探検隊」とは正反対である。

「さよならサマータイムマシン」と「メカトル時空探検隊」はタイムマシンを題材としていて、SF要素がある点は同じだが真逆に思うほど違っている。同じ題材で違う内容の曲が創れるユニゾンの引き出しの多さに改めて驚く。

他にも物語になっている曲はあると思う。こういった機会がないと気づかなかったことがたくさんある。これまでの曲もこれからの曲も立ち止まって考えてみることで新たな気づきが生まれる。



○上田誠(ヨーロッパ企画)脚本作品との親和性


「さよならサマータイムマシン」は、タイトルだけなら『サマータイムマシン・ブルース』に似ている。前述のストーリーとまるっきり同じではないが、内容も親和性が高いと思う。

映画『サマータイムマシン・ブルース』を観終わったとき、天才かと思った。「さよならサマータイムマシン」の〈未来にかくれんぼ〉や〈明日へ行く 夏の魔法は、もう無い〉の意味がやっとわかって感動した。


「メカトル時空探検隊」にも相性のいい作品がある。2023年にフジテレビ系列で放送されていた『時をかけるな、恋人たち』というテレビドラマである。

23世紀のタイムパトロール隊員の井浦翔(永山瑛太さん)が令和の時代を生きる常磐廻(吉岡里帆さん)へ会いに来るところから始まるSFラブコメディとなっている。

実のところ、このドラマを観ているときに「メカトル時空探検隊」をよく聴くようになり、考察する際の影響を受けている。〈見たこともないラブロマンス?もしかして稀代の大騒ぎ?〉という歌詞や明るい曲調もすごく合うと思っている。


『サマータイムマシン・ブルース』も『時をかけるな、恋人たち』も、脚本は同じヨーロッパ企画の上田誠さんというつながりがある。どちらも永山瑛太さんがメインで出演していたり、クーラーのリモコンが出てきたり、時空を超えたSFコメディ要素がある。

 
時系列は結構ばらばらで

2005年9月 『サマータイムマシン・ブルース』 公開(※初出は2001年の舞台公演)

2012年7月 「さよならサマータイムマシン」 「流星のスコール」のカップリング曲として発売

2014年8月 「メカトル時空探検隊」 アルバム曲として発売

2023年10月~12月 『時をかけるな、恋人たち』 テレビ放送

となっている。

 
タイトルやモチーフが近いだけで映像作品と曲は直接関係ないかもしれない。けれど、解像度が上がってもともと好きな作品と音楽がさらに好きになれて、楽しみ方のひとつとしては有りかも。


今妄想しているのは「流星のスコール」が『M-1グランプリ』の公式のPVとして起用されたらぴったりだろうな、ということ。

今年のM-1のロゴの右上には、20th ANNIVERSARYの文字がある。ユニゾンも20周年なので、ちょうどいいんじゃないかな。歌詞にある焦り、諦めたくないという想いは漫才師ともリンクする。

〈限られた時間が 少しずつ無くなってく〉はM-1の出場資格の結成15年以内を連想する。〈一瞬 目に映ったら 絶対 届く自信もある〉も漫才に通ずる。

〈どうか朝日に間に合うように 今は願い続ける〉とテレビ局の名前も入っている。あのスタジオで漫才したいもんね。〈想い続けて想い続けてさ ここまで来たんだよ〉のところで決勝に進む9組を発表するシーンを入れよう。

「流星のスコール」というタイトルも優勝したときに舞い散る紙吹雪みたいに思えてくる。タイアップ先の作品がない曲なので、この機会にどうでしょうか。いい曲なのでもっと知られてほしい。

キュウのおふたりとの対談で
斎藤さん「また何かで交われたら嬉しいので」
ぴろさん「PVとかでも」
清水さん「最高じゃないですか」
(※一部省略しています)
と話していたのが本当になったら嬉しいよね。

ユニゾンはクリスマスに大阪でライブをするけれど、もしかしてM-1とかぶらないように平日にしたのかな。それはさすがにないか…?けれど、実際M-1と同じ日だと、大阪だと特に、集客に影響すると思うんです。


横道にそれてしまった気もするが、ロックバンドも漫才師も脚本家も諦めずに続けたひとたちだと思う。創り続けること、発表し続けることは楽しいことばかりではない。

できあがった作品を観ることしかできないけれど、その裏には様々な感情があることを想像していたい。



○おわりに


「メカトル時空探検隊」を聴いて、タイムマシンなどの要素から、ドラえもんを連想した方が多いのではないだろうか。今回は別の視点から考察したが、最初はドラえもん要素のある曲かと思っていた。

サビの〈ポンコツでも 無様でも 操縦ができればOK OK〉という歌詞では、初めてタケコプターを使うのび太くんを思い出す。タケコプターが頭ではなくお尻にくっついてしまって、それでも空を飛ぶことができた。

そう思うとなんだか「メカトル時空探検隊」のひとつ前の「君が大人になってしまう前に」もドラえもんと解釈できるかもしれない。他の作品とも合いそうだが、のび太くんの友人であり保護者の要素もあるドラえもん視点がしっくり来た。

ドラえもんはのび太くんの子どもの頃の友だちで、大人になったのび太くんの隣にはいない。のび太くんが大人になるにつれて別れが近づくことに気づいているドラえもんを想う。

〈あれでもこれでもない〉という歌詞は、四次元ポケットからひみつ道具を選んでいる様子が浮かぶ。ドラえもんがのび太くんを笑顔で見守りながらも〈いつか段々君にとって必要なくなっちゃうけれど それこそが未来への許可証なんだね〉と思っているのだとしたら切ない。〈溜め込んだ涙は持ち帰るからね〉と思いながら、未来に帰ってしまうのだろう。

ユニゾンの曲は不器用で生きるのが下手なひとにとってのドラえもんだったのかも。音楽は目にみえないけれど、ずっと味方で近くにいてくれる。

「センチメンタルピリオド」の〈そして不格好で不器用でもかまわねぇ、それもいいだろう〉という歌詞も忘れてはならない。〈それもいいだろう〉まで言えるところがすごい。

「桜のあと (all quartets lead to the?)」でも〈不器用でも混ぜ合わせるよ この街に響いていけ ミュージック、歪なるミュージック 大丈夫 僕らが試金石〉と歌う。

試金石とは、金の品質を計るために用いられる主に黒色の石英質の鉱石の別称。用例として、実験的・試験的な要素がうまく行くかどうかを見極めるために行う事柄のことを「試金石」と呼ぶ。また、物事を判断する基準(指標)の意味で用いられることもある。

Wikipedia

ユニゾンはロックバンドでありながら、面白いこと、ワクワクすることを実験できる場所でもある。ロックとポップを融合し新しいジャンルの音楽を創ってゆくことができる。

歌詞の〈不器用〉はもしかしたら、当時のユニゾン自身が感じていたことかもしれない。曲にすることで自分たちのことも鼓舞していたのかな。

ユニゾンに似たバンドはいない。「桜のあと (all quartets lead to the?)」の〈僕らが試金石〉も「メカトル時空探検隊」の〈ものさしはとっくに壊れてる〉も指標となるものがないなかで歩きつづけてきた唯一無二のバンドをあらわしているようだ。


ユニゾンの曲はタイアップ曲であっても、ユニゾン自身のことを歌っている。今改めて20周年のベストアルバム『SUB MACHINE,BEST MACHINE』で発売順にシングル曲を聴くとバンドの軌跡がみえてくる。

どんなときも自分たちの音楽が味方であり続けた。巡り巡ってユニゾンの曲がユニゾン自身のタイアップ曲だったかのように聴こえる。昔の曲もライブで繰り返し歌うことで曲が成長するというか、新しく意味が増えてゆく。

ベストアルバムには過去を振り返ったり、未来を感じさせる曲が並ぶ。音楽がタイムマシンだったのかも。これまでよく頑張ってきたねって曲たちが言ってくれている。

 
『Catcher In The Spy』のCDの帯に書かれた言葉は「事件ならとっくに起きてる。」である。その10年前から事件は起きていた。2004年7月24日にユニゾンが結成されたことが事件だった。

ユニゾンがポケモンのジムリーダーだったら、斎藤さんが水タイプ、田淵さんが炎タイプ、鈴木さんが草タイプくらいばらばらだけど、この3人でよかった。この3人じゃないとユニゾンじゃないじゃない?

そもそも箱庭だから、いろんな要素があっていいんです!ムムッ。

7年くらい前に、神戸どうぶつ王国を吟行したとき〈うさぎ寄りあえばうさぎをゆるしあう〉という俳句を創ったことがある。

うさぎだけじゃなくて人間関係にも言えることだったなと今になって思う。ゆずれないところもあるだろうけれど、折り合いをつけていけたらいい。


昔からアルバムに1曲は入っているヘンテコな曲(デイライ枠)が好きだった。音楽は命を救わないかもしれないけれど、こんな曲があることで、もっと気楽に生きてもいいんじゃないかと思える。
 
ユニゾンの音楽はいつも特別で昔の曲も色あせない。10年前にわからなかった歌詞の意味がやっとわかったりもする。

ひとによって響く言葉が違って、捉え方も様々で俳句みたいに楽しい。同じひとでも聴くタイミングによってすでに知っていた曲の印象が変わることもある。宝探しみたいに、そのとき必要な言葉を自分でみつけられる。


たくさん書いてきたこの解釈は意図したものとは違うかもしれない。けれど、どんな解釈をしても、ユニゾンは正解と言ってくれる。

どの曲にもこの曲はこういう意味だから、という押し付けがましさは一切なくて、自由に受け取れる余白があるところも好き。


ロックバンドから受け取ったことをできるだけ言葉にして返していきたいけど、ちゃんと説明できてるかな。

言葉にできていないこともたぶんたくさんあって、どうやったら伝わるだろうと思って書いている。けれど、音楽は全部言葉で説明できちゃったらつまらないから、このままでもいいのかも。

「きみのもとへ」には〈諦めない勇気をくれた 君に 追いつきたくてさ〉という言葉がある。諦めない勇気をもらっていたのはこっちのほうで、諦めないでいてくれてありがとう、と私はずっと伝えたかった。

 
そして、これだけは言わなくちゃ。
\20周年おめでとう、UNISON SQUARE GARDEN!/

ロックバンドはやっぱり楽しかった!


これからも三位一斉のユニゾンをみられるのが楽しみです。

なるべく会いにゆくから、ふらっと来てね。



○出典、参考文献


「メカトル時空探検隊」(作詞・作曲:田淵智也,編曲:UNISON SQUARE GARDEN,2014,TOY'S FACTORY)

Mekator Jikuu Tankentai


『Catcher In The Spy』(全作詞・作曲:田淵智也,全編曲:UNISON SQUARE GARDEN,2014,TOY'S FACTORY)

「harmonized finale」(作詞・作曲:田淵智也,編曲:UNISON SQUARE GARDEN,2013,TOY'S FACTORY)

「徹頭徹尾夜な夜なドライブ」(作詞・作曲:田淵智也,編曲:UNISON SQUARE GARDEN,2015,TOY'S FACTORY)

「デイライ協奏楽団」(作詞・作曲:田淵智也,編曲:UNISON SQUARE GARDEN,2009,TOY'S FACTORY)

「チャイルドフッド・スーパーノヴァ」(作詞・作曲:田淵智也,編曲:UNISON SQUARE GARDEN,2010,TOY'S FACTORY)

「スロウカーヴは打てない(that made me crazy)」(作詞・作曲:田淵智也,編曲:UNISON SQUARE GARDEN,2020,TOY'S FACTORY)

「さよならサマータイムマシン」(作詞・作曲:田淵智也,編曲:UNISON SQUARE GARDEN,2012,TOY'S FACTORY)

「さよならサマータイムマシン」MV


「流星のスコール」(作詞・作曲:田淵智也,編曲:UNISON SQUARE GARDEN,2012,TOY'S FACTORY)

「君が大人になってしまう前に」(作詞・作曲:田淵智也,編曲:UNISON SQUARE GARDEN,2014,TOY'S FACTORY)

「センチメンタルピリオド」(作詞・作曲:田淵智也,編曲:UNISON SQUARE GARDEN,2008,TOY'S FACTORY)

「桜のあと (all quartets lead to the?)」(作詞・作曲:田淵智也,編曲:UNISON SQUARE GARDEN,2013,TOY'S FACTORY)

『SUB MACHINE,BEST MACHINE』(UNISON SQUARE GARDEN,2024,TOY'S FACTORY)

 「きみのもとへ」(作詞・作曲:田淵智也,編曲:UNISON SQUARE GARDEN,2011,TOY'S FACTORY)

『ABCお笑いグランプリ』(朝日放送テレビ(ABCテレビ)2012〜,第45回は2024/7/7放送)

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キュウ 漫才『ヨーグルトの話』


『サマータイムマシン・ブルース』(2005,監督:本広克行,脚本:上田誠)

『時をかけるな、恋人たち』(脚本:上田誠(ヨーロッパ企画),監督:山岸聖太、山口淳太,プロデューサー:岡光寛子(カンテレ)、白石裕菜(ホリプロ),制作:ホリプロ(協力),製作:関西テレビ放送,2023, フジテレビ系列)

『時をかけるな、恋人たち』予告


『M-1グランプリ』(朝日放送テレビ(ABCテレビ)2001〜2010,2015〜)

試金石 Wikipedia
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E8%A9%A6%E9%87%91%E7%9F%B3

『ドラえもん』(作者:藤子・F・不二雄,小学館,1969〜1997)

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