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「春夏秋冬代行者 上」感想

僕の好きなアニメ、小説の「ヴァイオレット・エヴァーガーデン」の作者の暁佳奈先生の最新作「春夏秋冬代行者」が最近書店に置かれたため買ってきました。

「上下」あるため下を読み終えてから感想を書こうと思ったが上を読み終えた瞬間に書きたくなってしまったので書いちゃいます。

まず引き込まれたところは世界観で、春夏秋冬をモチーフにされている。この世界では当初冬しか存在していなく、その後春を作り出し、夏、秋と四季が完成されていく。四季ごとに一人、季節特有の能力を持った「代行者」と呼ばれる人間が存在し、その下に「従者」がおり、主従関係がある。そこから物語が展開されていくのだが、冒頭で冬の先代は春を愛し、また春の先代は冬を愛しており、夏と秋はその愛を応援しているといったニュアンスのものが書かれており、ここからこの小説は冬と春のラブコメディ作品だと思えた。

冬の代行者は狼星(ろうせい)という19歳の男性で春の代行者は雛菊(ひなぎく)という16歳の女の子である。この二人は両想いの関係かと思っていたがどうやらそうではないらしく、10年ほど前に二人とそれぞれの従者はある事件に巻き込まれてしまう。その結果で雛菊は誘拐されてしまい、その後年月が経った後の話から始まる。

この代行者というのはそれぞれ特有の能力を持っており、春夏秋冬の四人にしか能力は宿っておらず、またそれぞれに役割がある。雛菊は従者のさくら(19歳)の女性と共に自分の役割を果たすべく旅をしている。しかし雛菊は、誘拐されたときに精神的に大きなダメージを受けており、次第に回復していったが言葉をうまく話せない状態にある。自分のことは後回しに物事を考える性格なため非常に優しいものの見方をする女の子である。さくらは雛菊とは対照的に割と強めな性格をしているが、それは雛菊を守るためにそういった立ち振る舞いをする。それゆえに雛菊のことは溺愛しておりお互いに好友関係にある。

この作者の小説のいいところは、非常に繊細で緻密な言葉で感情を表現しているため、一つ一つの会話にそのキャラの内情がどいういったもので、その発言に至っているかを丁寧に書かれるため、キャラ同士の掛け合いや、キャラの考えなどがより心に響いてくる。


先ほど、僕はこの小説は男女のラブコメディかと思っていたが、これは究極の百合小説だと読み進めて感じた。

というのもあまりにもこの春の主従関係が相思相愛で互いを一番だと思っていることに強い愛を感じる。それゆえに心が大変温かくなるのだが、上記でも書いたように雛菊という少女は言語能力が低いため、一言一言がとても心に刺さるというかどこか悲しくなってしまう。10年近く知らない場所に監禁され、誰も助けに来てくれない状態で生きていたら、それは感情もなくなり人間不信にもなってしまう。一方さくらはというと誘拐され襲われた現場に居合わせており、目の前で最愛の友人が目の前からいなくなってしまったとなればそれは再開するまでさくら側にも大きな悩みや後悔で押しつぶされながら生活することになる。

こういった互いに悲惨な過去があることでお互いの愛情が育まれ、そのやり取りを想像するだけで、この物語は二人の会話だけで事足りてしまうと思ってしまう。

もちろんそんなことは当然なく、他にも冬(男性)、夏(女の子)、秋(女の子)と登場キャラはいるわけなのだが、上では秋はあまり登場していないため描写は少ない(とんでもない展開にはなるのだが)。夏は上だと特に春組と関わっており、いい女友達のような関係を持つ。同じ立場の者同士に女子トークに花が咲くみたいな感じ。

だが、誘拐されたときには男性陣(冬の代行者と従者)もおり、そのときからどうやら互いに意識し合っていたと後に判明してしまうため、なんとなく最後は春と冬で恋人関係になって物語が終わりそうな展開になりつつあるが、それでも僕はこの小説は百合小説として推したいし読みたい。

まだ上しか読めていないため下も楽しみに読みたいが、正直どんな結末でも胸に突き刺さる終わり方を期待しているため男女の恋愛で終わってもそれはそれで受け入れられると思う。

少し乱暴な書き方になってしまったが「春夏秋冬代行者」を読んでない人、気になっている人には是非とも読んでほしい。

もうすでに読んでいる人で一人一人感想は違うと思うのだが、僕は究極の百合小説だと思っているので、同士がいたら嬉しく思います。

ではまた、次は「春夏秋冬代行者 下」のときに。

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