チョンハ Chung Ha アルバム"Querencia" DJ Soulscapeによるレビュー~韓国の60年代以降のディーヴァ史と接続、日本語訳
韓国の人気シンガー、チョンハが初のフル・アルバム"Querencia"を発表しました。
各ストリーム・サイトには必ず公式の紹介文が掲載されていますが、本作はなんと、そこでAlbum ReviewをベテランDJ/プロデューサー、DJ Soulscapeが書きました。DJ Soulscapeはソウルのクラブシーンでは欠かせない人物でもあり、2000年に発表したアルバム"180g Beats"は韓国大衆音楽100大名盤でも39位にランクインしていて、韓国のDJ、ヒップホップ、ダンス・ミュージック、そういうジャンルでは影響力のある人です。そんなDJ Soulscapeが書いた文章は、韓国の過去60年代以降の女性ディーヴァ・シンガーとチョンハを並べてもいて、面白い内容だったので、日本語にしてみました。
"Querencia"という宝石箱で発見するK-POPの新しいディーヴァ。
韓国の歌謡界の歴史でディーヴァたちの存在はとても特別だ。
60年代後半サイケデリック・ロックとソウルの新世界を開いたシン・ジュンヒョン師団の代表歌手だったキム・チュジャはジャニス・ジョップリン、ベティ・デイヴィスのような急進的で官能的なカリスマを披露して、80年代ニューウェーブK-POPの時代を率いたキム・ワンソンはニューウェーヴ・ロックとシンセポップを主流にさせながら、それ以前には見られなかったダンス・ミュージックの時代を開いた張本人だった。
(キム・チュジャ "늦기 전에 遅くなる前に" 1969年。韓国ロックのゴッドファザーとも呼ばれるシン・ジュンヒョンが作詞作曲。)
(キム・ワンソン "Dancing To Rhythm")
(キム・ワンソン "Pierrot Smiles at Us 삐에로는 우릴 보고 웃지 ピエロは私たちを見て笑う" 1989年。IUがこの曲をリメイクしているので、若者にも親しまれている大名曲。)
90年代、よりトレンディなビジュアルと感覚的な音楽を披露したオム・ジョンハやヒップホップ、R&Bの正統サウンドを主流K-POPに持ち混んだイ・ヒョリ、グローバル・ポップ・スタートして跳躍を披露し、K-POPのパラダイムを変えたBoAの登場は一つの時代の変曲点を作り出した一大事件として記憶されて当然だ。
(オム・ジョンハ "Poison" 1998年。)
(イ・ヒョリ "10 Minutes"。2003年。イ・ヒョリは歌手としてより、芸能人としてのイメージが私的には大きい。昨年夏韓国を席巻したバラエティ番組"遊ぶなら何する?"発のプロジェクトSSAK3(サクスリー)のメンバーでもあります。)
(BoA "No.1" 2002年)
今日のK-POPシーンでその系譜を継ぐディーヴァは誰だろうか。最近数年間、グループ単位に見直されたアイドル市場で珍しくもチョンハは爆発的なエネルギーで大衆の心を掴んでいるパフォーマーとして、魅惑的である声のボーカリストとして、ソロ歌手として自分の立場を固めてその潜在力をキャリアで証明してきた。アイドルからR&B、ヒップホップ・アーティストたち、88risingのRich Brianまで、多様なシーンのジャンルに所属したアーティストたちとのコラボを通して、その境界を広げて、進化してきたチョンハが披露する初のフル・アルバムはより果敢な方向性と豊かなディテールの音楽的挑戦を見せてくれる。
ハウス、ラテン、アフロビーツとベースを行き来する多彩なコンテンポラリー・ポップ、ダンス・ミュージックのスタイルを併せ持つ21曲のフル・アルバムはNoble, Savage, Unknown, Pleasuresというテーマを盛り込んだコンセプチュアルなトラックを起点に4つのチャプターに分かれている。各チャプターが象徴する、相反して強烈なコンセプトの備えはジャンルを行き来する中で、複雑で多様な感情の叙事を経て、自分の世界を完成していくチョンハのアーティスト的世界観を構成していく。
執筆 : パク・ミンジュン 박민준 (DJ Soulscape)
Chung Ha "Stay Tonight" 本アルバム収録。
Chung Ha "Play feat. CHANGMO" 本アルバム収録
(Chang Ha "X" 本アルバム収録)
(この後にDJ Soulscapeによる各楽曲のレビューもあるのですが、後日付け足します...)
SIDE A {Noble}
A1 Bicycle
強烈なファズ・ギターの導入部と共に展開されるR&Bポップ、トラップ・サウンドと共にペダルを踏んで、前に進んでいく瞬のワクワクさ、溢れるエネルギーを表現した曲。"Get out of my way-ah! / 보여줄게 (見せてあげる) how I like it"と続くコーラス・パートの直線的な歌詞と臆することないアティチュードは独立的でエネルギー溢れるソロ・アーティストとしての自信感とその誰も取って代われない存在感を浮き彫りにする。