怪談No.08 気にしたら負け
怪談No.04と怪談No.07で語った何かについての補足的な話。
これだけ何かに遭遇しているなら他の家族も遭遇しているはずだと誰だって思うかもしれない。
しかし僕は全く家族から家の中での怪奇現象を聞かない。
いや、そもそも家族は何が起きても気にしない。
そう確信した出来事を一つ。
小学生の頃、夕食のとき。
父・母・姉・僕・妹の家族5人で過ごしていた。
テレビを見ながら夕飯を食べていたとき、別の部屋からバァーン!っとドアがかなり大きな音を立てて閉まった。それは閉まる途中のドアが風を切る音が聞こえるほど。
ドアの音を聞いて騒いでいたのは僕だけだった。
他の家族はすごい音がしたと笑っていただけ。
僕は勝手にドアが強く閉まるのはおかしいとみんなに言ったが、
父は「風が吹いていたらよくあるやろ」と言って何も不思議に思っていなかった。
しかし当時は冬だった。窓を開いていて風が吹いていたら寒さで気づくはずだが、家は暖かいまま。
そもそも窓が開いていたといっても、ドアの閉まる音の強さは尋常ではなかった。とても風だの気圧だのだけが要因とは思えない。
僕はまだドアのことが気になっていたが、家族はまた団欒に戻っていた。
すると次は2階から人の足音が聞こえた。小走りしているくらいの足音。
僕はまた家族に足音がすると話したが、家族の反応は冷たく明らかに僕を鬱陶しがっていた。
「隣の家の人かもしれへんやろ!」と母が言ったが、「両隣の家の人全員子供いないやん、だから普通バタバタ音立てて走らんやろ?」と言い返した。
しかしそうとも言い切れないと言い返されて僕も黙ってしまった。
そもそも明らかに足音は2階から聞こえていた。
でも気にしているのは僕だけだったので、もう誰にも言うことをやめた。
こんな感じなので家族とは怪現象の話はしないようにしている。
家族は怪現象を信じているかどうかはわからない。
はなから信じていないのか。
そもそも僕を怖がらせないためにわざと怖くないふりをしたのか。
今となってはわからない。