社会システム原論 ―概念集―
アロウの4条件
・順位評点方式は条件Iを満たすか?
満たさない。何故なら、順位評点方式で点を割り振る場合、他の選択肢も含めた全体を吟味した上で点を割り振らなければならない。すると、無関連選択肢からの独立性(他の情報を考慮しない)という条件Iの原則に反してしまう。従って、順位評点方式は条件Iを満たさない。
・伝統による決定はアロウの4条件を満たすか?
満たさない。何故なら、伝統という一言で片づけてしまうと、他の人が望まない、かつ現代の流れにも合わない「悪しき伝統」が押しつけられる可能性がある。それは、条件Pのパレート性(全員一致性)に反する結果を生む。従って、伝統による決定はアロウの4条件を満たさない。
・多数決はアロウの4条件を満たすか?
満たさない。何故なら、多数決は多数派に勝利をもたらしてしまう。すると、少数派の意見は無視に等しい扱いを受け、少数派の反対にもかかわらず、多数派の意見がまかり通るという事態が発生する。それは、どのような思考、好みをも含め、民意を決定しなければならないという条件Uの、選好の無制約性を侵すことになる。従って、多数決はアロウの4条件を満たさない。
予定調和説による最小国家論を批判せよ
古典派経済学者達は、予定調和説に基づく最小国家論、つまり神の見えざる手を根拠とした夜警国家を主張している。これは、きわめて自由主義的な考えである。しかし、自由であることが、激しい競争を生み、同時に貧富の差を生み出す。そこで、国家は夜警国家から福祉国家へと変わらざるを得なくなる。予定調和説に基づく最小国家論は、システムに問題があり、長く続くものではなく、いつかは破綻を期してしまうのである。
囚人のジレンマ Prisoner's Dilemma
非協力ゲームを表す基本的な概念。この概念は、決定が個別に行われるときの行動が協力して行われる場合のそれと異なることを示している。つまり、パレート非効率的な均衡点が生じるのである。例えば、ミクロレベルでの合理的な行動が、マクロレベルでは非合理的な結果をもたらすことがその例である。
外部効果
ある人の経済活動が市場を経由せず、別の人に利益もしくは損失を与えること。正の効果に道路建設などの公共事業、負の効果に公害などがある。
他者危害原則
倫理的に悪であることは、法的不正とみなされるための必要条件であるが、十分条件ではない。クローン人間を作ることが倫理的に悪いことだとしても、それは法的に規制する十分な根拠とはならない。規制の根拠として、十分に合意が成立しているのは、「刑事処罰の対象とできるのは他者危害を含む行為である」という他者危害原則である。この原則のもとに安全性の確立されていない医療技術は規制することができるという原則が成立している。